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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第四章 過去から呼ぶ声
88/245

19 ボス部屋調査2 sideルーシー


「けっこういるな」


 スレインがつぶやく。

 目的の広場には、大量の魔獣がたむろしていた。

 まあ多いと言えば多いわね。

 今は広場から少し離れたところにある、戦闘予定地の外側から広場をながめている。


 たたかいというのは詰まるところ、命の削り合いだ。

 だから闘いにけるためにする事は、


・相手の命をけずうばい取る能力、攻撃力こうげきりょく命中力めいちゅうりょくやしなう。

・こちらの命を削られないようために、防御力ぼうぎょりょく回避力かいひりょく索敵力さくてきりょくなどをやしなう。

 索敵力は、攻防こうぼうの両方に役立つけどね。

・そして一匹目に勝てても二匹目に負けてはしょうがないので、闘いをを継続けいぞくできる力、継戦能力けいせんのうりょくを高める。


 これらについて熟達じゅくたつすることを目指めざす。

 そしてそこに至るまで生き延びられた者が“Cランク冒険者”と呼ばれるようになる。

 “怒濤の山津波”は今まさにここに居るわけだ。

 彼らのような冒険者が、組合ギルド中核ちゅうかくになっている。



「問題ないでしょう。タツヤさん、場所はあの壁で間違いないのね?」



 では“Cランク”から“Bランク”へ昇級ランクアップするにはなにが必要なのか?

 それは体格の不利や数の不利をくつがえすことのできる、突破力とっぱりょくだ。

 具体的には、自分と同じ大きさや重さ、パーティーであれば総員分の合計重量を越えた段階ステージの魔獣を討伐することなどで、道が開ける。

 戦闘力に限らず、わなり方や指揮力しきりょく情報収集力じょうほうしゅうしゅうりょく支援力しえんりょくなどでも評価される。

 つまり、自分(たち)に相応(ふさわ)しい体格サイズ越えた(●●●)魔獣を倒したり、連鎖リンクする同格以上の群れから相当数を倒して生還することで、昇格ランクアップに必要な得点ポイントたままっていくのだ。


 これは一般には公表されていない。

 実力をかえりみず格上にいどむおバカを出さないための措置そちで、目眩めくらましのために昇級ランクアップ試験を行なうこともある。

 私もギルド職員として働くようになってから、このことを知った。

 私が“Bランク”に上がったときも、確かにそんな状況だった。



「間違いありません。あの平らになった岩壁の中央が目標です」

「そうか。それじゃあずは掃除そうじだな。俺たちで一匹倒してみるんですこし下がってください。警戒を忘れずに」

「そうね。大丈夫とは思うけど、前に連鎖リンク報告があった場所だから気をつけて」


 タツヤさんの“地図作成マッピング技能スキルが、この場所で間違いないと示しているらしい。

 なら行動を次の段階ステップへ進める。

 第五層で連鎖リンクするのは洞窟蝙蝠ケイブバットだけというのが常識だけど、ここはそもそも報告例の少ない区域エリアだ。

 それに過去に一例だけ、地上型魔獣の連鎖リンクが報告されていた。


 以前の私なら(ひと)りであの数を殲滅せんめつしていたけど、空白ブランクはさんだ直後で無理をするつもりはない。

 訓練こそ欠かしていなかったけど、実戦は五年ぶりなのだ。

 それにもともとここへは戦闘を目的に来たわけじゃない。今回はそういう立場ではないのよね。

 まずは戦闘役をになう“怒濤の山津波”に対応してもらい、問題なさそうなら“タツヤ”さん“シルィー”さんにも回し、私の出番はそのあとだ。


 周囲を囲われた場所に陣取じんどり、スレインが猫型で中くらいの魔獣をってくる。


「リンクはない」


 連鎖リンク報告をして、連れてきた魔獣をリカルドになすり付ける。

 リカルドがそれをさばき、


「ノルド」

おう!」


 ノルドがとどめを刺した。

 まったく危なげがない。

 予定通りね。


「問題ないな。次を連れてくる」


 そう言ってスレインが再び出て行く。

 それを三度繰り返しても変化イレギュラーが出ないので、


「良さそうね、少しペースを上げましょう。スレイン、こっちへも頂戴ちょうだい


 タツヤさんシルィーさんへも魔獣を回してもらう。

 私は二人の後詰め(サポート)だ。

 一応ね。


 予想はしていたけど、タツヤさんとシルィーさんは、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)で魔獣を処理していく。

 そう、処理しょりなのだ。


 スレインの連れてきた魔獣二匹が一方の側へ集まろうとすると、シルィーさんが風属性魔術で二つに分ける。

 上手うまい。

 別れた魔獣は再び合流することなく、それぞれの組へと向かう。

 リカルドが「オラオラ」やっているのは分かるんだけど、静かに待ち受けているタツヤさんのところへ、ちゃんと魔獣が素直に向かっていくのが不思議ね。


 タツヤさんは魔獣の初撃しょげきたてなして、頭と前肢ぜんしをおよがせた魔獣がさらした腹に、剣を突き立てる。

 盾こそ激しく動いているものの、立ち位置は変わっていない。

 剣も斬りかかるというより、こしあたりに置いた剣に勢いを殺しきれない魔獣がおなかから刺さりに来る感じで、さり始めてからし込むという手順だ。


 盾職というと相手の攻撃を受けるので、ガンガンと騒々(そうぞう)しいのが普通なのに、それがない。

 攻撃のほとんどをなしているので、かなり静かだ。

 あ、盾で殴った。

 それにタツヤさんはたて前腕ぜんわんに固定していない、にぎり手だけで盾を保持ほじしているので、盾の自由度が高い。

 それほど筋肉が多いようには見えないから、身体強化を使っている?

 男の人にしては珍しいわね。

 激しく動くのは、足元を狙われたときくらいで、固定してない盾をばして魔獣の頭を地面ではさみ、グリッと転がし腹を上に向けさせ、剣で刺している。


 こういう盾使い(シールダー)は見たことがない。

 それ以前に、ルナさんと模擬戦をしたときはこれほどじゃなかったはずだ。

 “西の森”とダンジョントラップ”の経験で腕を上げた!?

 上手うまくなりすぎでしょう!

 “アカツキ”のレピドさんはAランクですごかったけど、あの人は巨大な いわおだった。

 この人は何だろう?

 “たき”かな……?

 そんな風に、広場の魔獣掃除(そうじ)は、波乱はらんもなく順調に進んでいった。


 二組がそれぞれ二十匹ほどの魔獣を狩ったところで、小休止にはいる。

 いいペースね。


「私もそろそろ体を暖めるわ。こっちは大丈夫よ。スレイン、よろしくね」


 シルィーさんはもとより、タツヤさんもまったく問題ないのが確認できたため、私も体をあたためることにする。

 前座はさっさと片付けよう。


「人使いが荒いなぁ…」

「ぼやかないぼやかない。

 連鎖リンクしないにしても、三匹目を()るまでに一匹目が近づいてくるから大変なのは分かるわよ。そこは二匹づつ頻度ひんどを上げるなりして調整してね。こちらは何とでもなるから」


 さて、準備運動といきますか。

 背中の剣を抜いて、むかし師匠に教わった型をなぞり始める。

 いまも欠かさず練習している、いちばん始めの振り出しだ。

 それが一巡いちじゅんしたところで歩法ステップまじえていると。


 ────!?


 何かあったみたいね。





お知らせ


来週(7月最後の週)のどこかで、ルーシー視点の話を一部、一章~三章へ移動させます。

具体的には、下記の通り。

話の並びと副題サブタイトルの調整だけで、内容は変わりません。


【変更後】

     1‐1 プロローグ 転移?

        :

     1‐7 冒険者登録(前)

        :

     1‐23 パーティー 後

4‐18→1‐24 記憶5 冒険者登録 sideルーシー

------------------

     2‐1 パーティー登録

        :

     2‐5 魔石買取り(前)

        :

     2‐11 事情聴取

        :

     2‐16 訓練 月那 vs 達弥

4‐19→2‐17 記憶6 魔石買取り sideルーシー

4‐20→2‐18 記憶7 事情聴取  sideルーシー

4‐21→2‐19 記憶8 月那vs達弥 sideルーシー

------------------

     3‐1 地力向上計画 前

        :

     3‐19 帰還

     3‐20 ギルド依頼

        :

     3‐23 騎乗講習 3

4‐22→3‐24 呼び出し  sideルーシー

4‐23→3‐25 帰還    sideルーシー

4‐24→3‐26 ギルド依頼 sideルーシー

4‐25→3‐27 調査隊1  sideルーシー

4‐26→3‐28 調査隊2  sideルーシー

4‐27→3‐29 調査隊3  sideルーシー

4‐28→3‐30 調査隊4  sideルーシー

------------------

4‐1 ボス部屋調査 1

        :

4‐17 記憶4 ルーシー・リュー 5年前

(4‐18 記憶5 ルーシー・リュー 今月初頭)→移動

(4‐19 記憶6 ルーシー・リュー 今月初頭)→ 〃

(4‐20 記憶7 ルーシー・リュー 今月初頭)→ 〃

(4‐21 記憶8 ルーシー・リュー 今月初頭)→ 〃

(4‐22 呼び出し  ルーシー・リュー)   → 〃

(4‐23 帰還    ルーシー・リュー)   → 〃

(4‐24 ギルド依頼 ルーシー・リュー)   → 〃

(4‐25 調査隊1  ルーシー・リュー)   → 〃

(4‐26 調査隊2  ルーシー・リュー)   → 〃

(4‐27 調査隊3  ルーシー・リュー)   → 〃

(4‐28 調査隊4  ルーシー・リュー)   → 〃

4‐29 ボス部屋調査1 sideルーシー

4‐30 ボス部屋調査2 sideルーシー


こんな予定です。



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