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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第四章 過去から呼ぶ声
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13 ボス戦ふたたび 3     


「くそっ、大盾に亀裂ひびが入ったぞ」


 どうやら人はっても盾が危ないらしい。

 俺もルーシーさんを守ってばかりいないで攻撃に参加したほうがいいだろう。

 戦力を逐次ちくじ投入していては、勝てる戦いも勝てなくなる。

 ノルドが防御に回り、攻撃力が目減りしている今なら尚更なおさらだ。

 “厄猪ミスフォートボア”は、出し惜しみをして勝てる相手ではないのだろう。

 リカルドの大盾が崩壊すれば、連動して戦線まで崩壊ほうかいする。


 俺はいつも前衛に立っているので、後方支援というのはやったことがないのだが、今回は出来ることがあるかもしれない。

 まずは実験を兼ねて、間接的に戦闘に参加してみよう。


 俺の“見えない盾”だが、ご多分に漏れず制約がある。

 まず、どういう理由わけか盾なしでは発動できない。

 そのためだろう、発動の中心として使用した盾から手を離すと、“見えない盾”の効果が消える。

 そして関係のない離れた場所にポツンと単独で発現させることができない。

 離れた場所で発動したければ、“見えない壁”などを延ばしてその場所へ辿り着かせ、その上で“壁”として発現させる必要があるようなのだ。

 まあ延ばすと言っても高さのある壁である必要はなく、地面に描いた画か線のようなもので充分だ。

 要するに“有線”での繋がりを必要とする。と言うことじゃないかと思う。

 線の材料は何だろね?


 そこで床に展開した“錨床アンカーフロア”の、横から見た断面で十字型の横棒部分。つまり床に沿って広がっている面を、四方に四倍まで広げる。

 害猪イビルボアへの対応で、一辺四メートル四方に展開していた錨床アンカーフロアを、十六メートル四方まで広げたわけだ。

 面積で言えば十六倍に広がったわけだが、これで“怒濤の山津波”(プラス)シルィーがいる場所までカバーできた。


 あれ? アンカーの“床”を広げたつもりだったが、壁に沿わせていた…感応壁、───いやもう全方向通過で壁じゃなかったな。感応環かんのうかんでいいか、なのは間違いない。───感応環レスポンスリングまで一緒に四倍に広がってしまった。

 一部が中央岩塊からはみ出す所まで広がってしまったが、設定を探っている時間が惜しいので、とりあえずこのままで行く。

 感知の範囲が広がったので、そのぶん精細度を上げておこう。

 四分割して使っていた“感応環レスポンスリング”を、こちらも四倍の十六分割にする。

 これで水平の輪が縦に十六個積み重なっている状態になった。

 数を増やした分受け取る情報の精細度が上がり、情報の総量も上がったが、とくに負担が増えた感じはしないので問題はないだろう。


 本題はこちらだ。

 “錨床アンカーフロア”を広げたことで、俺からリカルドたちへの繋がり(パス)ができた。

 俺の盾を強化している……というか最近は、パーティー防御のほとんどをまかなっている“見えない盾”。

 どうやら最初の発現は月那るなとの立ち合いの時ではなく、冒険者ギルドでDランク昇格試験を受けたときに、そこにいるノルドと対戦したり無自覚に発現させて、模擬戦闘用の盾を意識せずに強化していたふしがある。

 そう言うことなら、これまで使ってきた俺の“盾”も無意識に強化していた可能性があるわけだ。

 なら同じようにリカルドの大盾を強化することはできないか? と思い付いたので、まずはやる。


 自分の盾をどうやって強化していたのか? 自覚はまるきりないため、ゼロからイメージをつくり出す。


 “感応環レスポンスリング”と同じく、両方向……全方向通過の“見えない盾”を作り、リカルドの大盾と重ね合わせる。

 大きさ(サイズ)はリカルドの大盾と同じだ。

 せっかくなので、トゲトゲ(スパイク)も再現しておく。

 この“見えない盾”をリカルドの大盾を起点にして動きを追随トレースさせる。

 大盾が持ち上げられて接続が切れたらことなので、そのときは盾の下端から地面に張ってある“錨床アンカーフロア”まで自動で“壁”が延び、繋がり(パス)が維持されるよう想定イメージしておく。

 接続用の“壁”は、“錨床アンカーフロア”から大盾の下端まで垂直だ。

 そして“全方向通過”を“全方向遮断(●●)”へ切り替える。

 どうだ?


「なんだ!? 盾がいきなり安定したぞ!!」


 毎回少しずつ角度を変えてくる“厄猪ミスフォートボア”の小刻(ジャブ)みな突進チャージを、大盾下端の右端と左端の突起スパイクピボットにして、器用に角度を合わせながら受け続けていたリカルドから、驚きの声があがった。


「例の“壁”で大盾を補強してみた」

「そんなことが出来たのかよ!」

「初めてやったんで不具合あるかもしれない。何か気付いたら教えてくれ」

「いひひ、危なっかしいな。だが、がてえ!」


 リカルドの機嫌よく吠えた。

 初手はどうやら上手うまく行ったようだ。

 もう一手行く。



 “錨床アンカーフロア”を目立めだてする。

 パスを繋げば済む大盾の強化で、わざわざ“錨床アンカーフロア”を展開したのはこのためだ。

 目立ての向きは、リカルドの大盾と平行に。

 こちらもリカルドの大盾を起点にして、大盾の前面へ扇状に展開する。

 効果は、リカルドたちの方へ進む場合は接地力が逃げる。離れる場合は接地力が強くなるのに加えて、あしの接地面に傷害ダメージを負う弱体化デバフだ。

 何のことはない、錨床アンカーフロアの断面を鋸の(のこぎり )刃状にした地形効果グラウンドエフェクトだ。


 着想アイデアは、先日この第五層の外で、月那るな魔猪ダンガーボアを地属性魔術の“落し穴(ピット)”で捕まえ倒した時に得た。


 俺が“捕獲キャプチャー”の初期版で魔猪ダンガーボアを捕まえたのは、“見えない盾”を折り曲げられるようになった直後で、それによって出来ることを模索している時だった。

 じっさい初めて使ってうまく捕えられたし討伐もできたのだが、それを見た月那るなが、自分の技能スキルでできる“捕獲キャプチャー”をその場で考え、実際にやってのけたのだ。


 俺の使った“捕獲キャプチャー”を、彼女が自分の技能スキルで再現しただけなのは分かっている。

 だがその同じ事を、あの「地面を動かす」という単純シンプル極まる一工程(プロセス)で実現したことは衝撃だった。


 俺のような工学エンジニアリング畑の人間は、目の前の出来事を構成要素に分解し、要素ごとの対応を考え、それらを正しく並べてひとつの成果にすることに馴れている。

 それが多様な事案への対応力になることを知っているからだ。

 だがそれは「手間」と「時間」と「費用」、つまり“コスト”と呼ばれるものを膨らませがちになる。

 月那るな版“捕獲キャプチャー”は、衝撃しょうげきをもってその負の側(マイナス)面を思い出させてくれた。


 コストが低く抑えられれば良い…というものではなく、「継続コンティニュー性を持つものか否か」という視点を外すことは出来ない。

 だがそこまで含めた同じ条件下で、同じ成果を得るために必要とする経費コストは、少なく済む方が優れている。


 月那るなの地属性版“捕獲キャプチャー”に刺激され、逆に地属性でできることを俺の“遮断”技能スキルでできないか? と考えた結果が、この“錨床アンカーフロア”であり、その目立てだ。

七国ななこく」に出てくる地属性魔術は他にも数多くあるが、俺が技能スキルを使って行なう遠隔攻撃は狙いが甘々なので、こんな地形効果グラウンドエフェクトを使った弱体化デバフという形になった。


 単純化については継続課題と言うことで………。


「シルィー、俺が動いたら厄猪ミスフォートボアあし空気槌エアハンマーで払ってくれ! お前の右手側からだ!」

「わか、った…」

「こらっ、タツヤ! ちゃんとあねさんを守ってろって!」


 ちゃんとルーシーさんの周りに壁を張っておきますから。と言い返そうとしたとき、後ろから肩をつかまれた。

 ルーシーさんだ。


「あなたも行ってしまうの?」




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