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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第四章 過去から呼ぶ声
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12 ボス戦ふたたび 2     


「あれ? あねさん、タツヤ。二人ともまだいるのか?」


 そう言って緊張をなかば解きながら、前室から出てくる“怒濤の山津波”の面々。


「警戒して! 様子がおかしいのよ!」


 ルーシーさんが警戒を呼びかける。

 彼らが後にした前室の内扉が閉まり、「カチャ」っと施錠の音がする。

 そして部屋の中央にある“円陣サークル”に魔力が注がれ、やがて形を取り始める。



 ボスがまた(●●)出た────。



 現れたのは害猪イビルボアと同じ“猪”なのだが、害猪の体色が灰色グレーだったのに対し、コイツは焦げ茶(ダークブラウン)の部分が増えたまだら二色ツートンだ。

 しかも害猪イビルボアよりも体が一回り大きい。

 そして俺を一番警戒させているのが、その身にまとう魔力だ。


「“厄猪ミスフォートボア”よ。第十八層からの魔獣。アレの正面には立たないで!」


 あれは“厄猪ミスフォートボア”と言うらしい。

 そんな魔獣、ギルドの資料に載ってたっけ?

 名前からして“害猪イビルボア”の上位種かな?


「身体強化でも使ってくるんですか? ってどうしました? 大丈夫ですか?」


 そう思ってルーシーさんの方を見ると、ルーシーさんが蒼白そうはくになっていた。


「そうよ……」


 厄猪ミスフォートボアが魔力をまとっているため、当てずっぽうに言ってみたんだが、肯定されてしまった。

 だがそれよりも、ルーシーさんの声が震えているのが気にかかる。


「筋力もそうだけど、体毛や体表を硬化してくるから、かすっただけでも大きな痛手ダメージがあるの」

「つまり、トゲトゲの付いた大岩が地面の上を飛んでくる感じですか」

「そう。だから……」


 うーん、盾職は止めてナンボなので、接触禁止はいただけないな。

 それに、それきり言葉を途切れさせてしまったルーシーさんだ。本当にどうしてしまったのだろう。


 そうしている間に、リカルドが盾を換えているのに気がついた。

 先ほど俺の収納ストレージからシルィーの収納ストレージへ移した荷物のひとつだ。

 大振りの丸盾ラウンドシールドからわったのは、面積が畳一枚近くある四角い大盾だった。

 表面と上下のふちには、トゲトゲの突起スパイクがいくつも飛び出している凶暴な外観だ。これも挑発行動の一環かね。

 ノルドも、一回り幅と厚みが増えた大剣に換装かんそうしている。


 物資の運搬に収納ストレージが使えるということで、本来の装備を害猪イビルボア用として温存してきたと言うことか。

 ここまで浅い層で活動するために、取り回しと移動速度重視で丸盾を使っていたが、こちらがリカルドやノルドの本気装備ということなのだろう。


 その大盾を片手剣で叩きながら、いつもと同じように「うらうらうら!」と叫ぶ。

 いつもと違うのは、リカルドの後ろにノルド、ルクス、シルィー、スレインが、一列縦隊で並んでいることだ。


「タツヤ! ルーシーは“厄猪ミスフォートボア”とは戦えない。そこで守ってやってくれ!」


 最後尾にいるスレインが俺にそう言ってくる。

 なにかわけありのようだが、ゆっくり事情を聞いている時間はなさそうだ。

 ともかく今は、事情を知っているらしい相手に言われたとおり動いておくか。



 実体化を完了した“厄猪ミスフォートボア”が、リカルドへ向かって走り出す。

 加速が速い。

 最大速度トップスピード害猪イビルボアとそれほど違わなく見えるが、その速度にいたるまでの時間が短い。

 より大きな質量が、短い距離で十分な勢いを付けられると言うことだ。


 これは厄介やっかいだな。

 体格が大きくて最大速度トップスピードが変わらないということは、増えた質量分だけ運動エネルギーが増したということだ。

 それなのに、より短時間で最大速度トップスピードまで至る。

 つまり、より攻撃力が高くなり、そのくせより手数が増え、より小回りがくようになったと言うことになる。


 リカルドが大盾の突起スパイクを地面に突き刺して固定する。どこでも考えることは同じだ。

 相手の突進を迎え撃つために、大地の力を借りる。

 だが、俺の“防壁プロテクションウォール”と異なり、盾の下以外を固定しているのはあくまで人だ。

 そこへ“厄猪ミスフォートボア”が近づく。



 衝突コリジョン



 バシャッ!! という車同士の交通事故のような音がするが、交通事故と違うのは、生き物の方が無生物の盾に向かって攻撃しに行くところだ。

 その盾の後ろでは、リカルドの後ろをノルドが支えていた。

 なるほど、巨漢兄弟の二重連結で突進チャージを受け止めるわけか。

 長身のノルドが後ろから盾の上端を押さえれば、梃子てこの原理もあってさらに制止力が上がる。

 それでも一メートル近く押し込まれているのは、“厄猪ミスフォートボア”の突進力を恐れるべきか、それとも崩されることなくそれを受け切ってしまった、リカルドとノルド兄弟の技量をめるべきなのか?

 いやそれ以前にあの二人、本当に人間なのか??(失礼)


 “厄猪ミスフォートボア”の動きが止まった一瞬、一列になった後ろの三人、シルィーが左に飛び出し“風の魔術剣”を突き出し、ルクスが右へ飛び出して槍を突き出し、最後尾のスレインが矢を射る。

 シルィーの魔術剣は損傷ダメージを与えたようだが、突きの点攻撃なので、あの巨躯に対しては効果が限定的だ。

 ルクスの槍とスレインの矢は、硬い表皮に弾かれた。


 Biiizzzzzz───。


 突進チャージを止められ攻撃された瞬間、“厄猪ミスフォートボア”は鳴き声を上げて後ろ走りで二メートルほど後退し、そのまま前進して追撃をかけてきた。

 ジャブのような小刻みな攻撃だが、加速の良さで相当な威力を持った打撃ブロウが、少しずつ角度を変えて打ち込まれる。


「くそっ、盾に亀裂ひびが入ったぞ」


 どうやら人はっても盾が危ないようだ。

 俺もルーシーさんを守ってばかりいないで攻撃に参加したほうがいいだろう。

 だがその前に、リカルドの大盾が崩壊すれば戦線が崩壊する。


 いつも前衛に立っているため、後方支援というのはやったことがないのだが、今回は出来ることがあるかもしれない。


 まずはそこからだ。




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