8 登録 中編
ルーシーさんは語る。
冒険者ギルドは、魔獣の脅威に対抗する、人類の防壁であると。
国や市などの行政はもちろん騎士団を持ち、国内領内の魔獣撲滅に力を尽くすのだが、広い土地のすべてや、領地と領地の間に存在する空隙にまで満遍なく力を注ぐことはできない。
そこで人や物が滞りなく流れるよう、また地域の魔獣の密度を下げるために討伐する。あるいは街道を行く隊商を護衛するための戦力をとりまとめ、依頼者に対しては護衛戦力のランク付けをして効果を明瞭化し、現場で戦力として働く冒険者たちに対してはランクに応じた報酬設定をして、不適切な契約を結ばされないようにするための、互助組織として冒険者ギルドは存在しているのだと。
冒険者の等級は、下はFからはじまり最高位のAランクまでと、別枠でSランクがあり、ランクごとに受注できる内容に差が存在するのだそうだ。
ランクの内訳は
Sランク:特級 プラチナ証
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Aランク:上級 ゴールド証(事実上の最上位)
Bランク:熟練 シルバー証
Cランク:中級 アイアン証
Dランク:初級 ブロンズ証
ダンジョンへの入場可能
騎乗を要する依頼が受注可能
Eランク:駆け出し カッパー証
十五歳以上 市壁外での依頼を受けられる
常設依頼(初級魔獣討伐・初級採取)が受注可能
Fランク:見習い ウッド証
十二歳以上 市中雑役依頼限定
冒険者は、年齢制限に引っ掛からなければ、まずEランクへ登録する。
そして常設討伐依頼を規定数以上こなし、ランクアップ試験を受けてDランクに昇級するのだそうだ。
俺たちもさっそくEランクに登録した
Dランクへ昇級するために必要な常設討伐依頼の内容を訊くと、ここタルサ市であれば、すぐ外のバルニエ大草原で、ゴブリン、角ウサギ、砂トカゲなど、所定の魔獣を狩って、冒険者ギルドへ買い取り納品すれば良いとのことだ。
討伐依頼は、通常なら討伐の証明に魔石だけを取ってきて、肉や毛皮は自家消費したり伝手のある店に売っても構わないのだが、ランクアップ審査の場合は丸ごと冒険者ギルドで買い取り納品する必要がある。
おもに食用として卸し、試験費用に充てるのだそうだ。
ゴブリンの肉だけは臭くて食用にならないが、肥料にするので無駄にはならないらしい。売値はお察しだが…。
収納の中に、今日バルニエ大草原で倒した魔獣が入っていると伝えると、それを買い取りに出してくれれば、討伐実績に数えられるとルーシーさんが言うので、買い取りカウンターへ移動した。
「それではここへ討伐した魔獣を出してください」と言われて、常時討伐依頼にあたる成果を積み上げた。
どさどさどさっと作業台の上にちょっとした山ができた。
収納の計数表示によると、ゴブリン×十一匹、角ウサギ×七匹、砂トカゲ×八匹、大蜂×四匹で、計三十匹だ。
「えっと、これをきょう一日で?」
とルーシーさんが、どこかあきれたような目で訊いてくる。
「そうです。実戦そのものが今日初めてですから、正真正銘今日一日の成果です」
「すごい魔獣との遭遇率ですね」
草原で一日使って三十匹の魔獣と遭遇するのは、珍しいほど多い数らしい。
俺たちの戦闘経験や知識が足らないのは明らかなので、見栄を張っても仕方ないとぶっちゃけたのだが、今日の遭遇数は大分多かったようだ。
困ったな。
「ああ、ゴブリンだけは魔石を分離してたので──はい、こっちがゴブリンの分の魔石です」
と言って、ゴブリンの魔石を横へ出した。
「中で分離作業ができるストレージ! あらでも、今日一日で二人をレベル5にするには、すこし数が足らないような…」
「ああそれは」と、ここまで話の殆どを俺にまかせていた月那さんが口を挟んだ。
「わたしのストレージの中にも魔獣の死体がありますから。だいたいこの四倍くらい?」
「四倍!?」
月那さんが止めを刺す事が多かったからね。
ルーシーさんがあわてて他の職員に、いま出した魔獣を数えるように伝えると、さらに別の作業台に移った。
「ここへ残りの魔獣を出していただけますか。できれば種類ごとに分けて」
こんどは月那さんが魔獣の死体を出していく。ゴブリン×五十一匹、角ウサギ十八匹、砂トカゲ×二匹、大蜂×十七匹で、合計八十八匹だった。
月那さんのところに砂トカゲが少ないのは「動きが気持ち悪くて触りたくないっ!」のだそうだ。
苦手か…。
やっぱりゴブリン率がやたらと高いな。
「ゴ」
「ゴ?」
「ゴブリンが六十匹超えってなんですかーっ!?」
ルーシーさんが叫んでいた。
この後しばらくは、月曜、金曜投稿で行こうと思います




