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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第四章 過去から呼ぶ声
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4 ボス部屋調査 4       


「…集団ごとに相手をするなら何とでもなるけど、一気にまとまって来られたらちょっとまずいかしらね」


 隊長ルーシーさんが思案を始めた。



 冒険者が軍隊のように大人数で行動することはほとんどない。大型や超大型、あるいは多数の魔獣を討伐するために、複数パーティーをたばねて同盟アライアンスを結ぶことがあるくらいだと聞いている。

 ダンジョン内では狭い領域エリアも多いため、その傾向がさらに強くなるわけだが、だからこそ手に余る強さや、手に余る数の魔獣に相対あいたいしたときには手詰てづまりになりがちになる。

 今回の場合、広場に集まった魔獣の数が、連鎖リンクした場合に危機な状況シチュエーションに至る可能性に出会でくわしてしまったわけだ。


 都合の良くないことに、今回は同規模の第二班が同時に六層へ潜り、未踏領域みとうりょういきで合流する予定になっている。

 だがあちらの世界のように、一班と二班の間で連絡が取れるわけではないので、一班が撤退を決めたとしても、二班にそうと伝えるすべはない。

 一班を欠いた状態で二班になにかあったりしたら、俺たちが自分の行動を悔いることになるのは目に見えている。

 ましてや犠牲者の中に月那るな、ハンナ、リディアといった仲間が居たとなれば、一生ものの傷になるだろう。


 不幸中のさいわいで、今回の問題点は魔獣の数だ。

 それなら俺の技能スキル制御コントロールできる。

 技能スキルを一部さらす事になるが、どのみちルーシーさんには見られているわけだし、命を預けあっている状況で隠蔽いんぺいしたまま依頼が未達に終わるのも心苦しい。

 これも実績になると考えることにしよう。


「ルーシーさん。問題なのが敵の数なら、俺のスキルで何とかなると思いますよ」

「そうなの?」

「はい」


 シルィーが「いいの?」といった顔をしているが、お前だって“風の魔術剣”や“風の探知ウィスパーディテクション”を披露ひろうしてるだろ。


「具体的には?」

「ここを指でさわってみてください」


 そう言って俺は、かかげた盾の下の空間(●●)を指差したまま待った。


 頭に「?」マークを浮かべながらも、俺の指先に向けて伸ばしてきたルーシーさんの指が、盾の下で停まる。

 俺がそこから指を引いても、ルーシーさんの指が進むことはない。

 何か見えないものによって手が停まり、そこから先へ進めないでいる。

 だがガラスのような透明な障害物がある様子はない。

 叩いてみても音もしない。


 例えば魔獣の注意を引くために、剣で盾を叩けば、叩いた剣と叩かれた盾が響いて音が鳴るわけだが、この“見えない盾”の場合、叩いた剣が鳴る音はしても、叩かれた“見えない盾”から発せられる音はない。

 スケートパークの分厚いコンクリートを手で叩くような感じだ。ぺちぺち。

 なのにその障壁は、盾の動きに合わせて軽々とついてくる。


「これが……、タツヤさんの“遮断インターセプト”スキルなの?」


 少し下から小首をかしげて、見上げながら訊いてくるルーシーさん。可愛かわいらしい。


「たぶんそうじゃないかと。

 ルーシーさんも見た、月那るなの“魔術剣”を止めたときが最初の発動でした。あれから出来ることが増えて、いまは壁を作れます。

 あ、縁の方を触るときは慎重に。

 ふちつかんでよじ登っても大丈夫でしたが、突進してきた害猪イビルボアは切り裂きましたから」


 ぴくっとして手を離すルーシーさん。

 たぶん害猪イビルボアの勢いのせいだと思うけどね。


「このスキルでこの空間全体に“腰高の壁”を作りますから、各通路の前に人を置けば個別に撃破ができるでしょう」

「強度はどれくらいなの?」

「ゴブリン五十匹の襲撃しゅうげきに耐え、害猪イビルボア突進チャージを止めました」

「持続時間は?」

「戦闘中に限界が来たことはありませんね。俺が盾から手を離したときは壁が消えます」

「シルィーさんは、このことを知ってましたか?」


 と、なぜか突然Dランクのシルィーに尋ねるBランクのルーシーさん。


「それは、まあ、日頃、から、一緒、に、行動、してる、から…」


 おい、それはさっきの俺の台詞せりふだろ。

 あと後ろから、「あのエルフ、話せるんだ」なんて聞こえてくる。

 シルィーは俺たちしかいない場所ですら、滅多に自分からは話し出さないからな。


「シルィーさんはコレ(●●)が何か知っていますか?」

「知ら、ない。はじ、めて、見る。けど、それは、いま、必要、な、情報?」


 初めて見るというのは、シルィーのすでに百年を超えているこれまでの人生の中で、という意味だろう。

 “遮断”のスキル自体はシルィーの目の前で何度も使っているからね。

 それにしてもルーシーさんだ。

 このひと聞けば大抵のことに答を持っている印象なんだが、たまには知らないこともあるらしい。

 そんなルーシーさんがものをたずねる先になるシルィー。

 亀のこうより年のこうという状況かね。

 分からないことを知ったかぶりせずに、他人にたずねられるというのは美徳だと思う。


「…そうですね。いまは入り口を塞いでいる魔獣をどうにかできるかが重要です………。やりましょう。広場の魔獣を片付けて、未踏領域を調査します!」



    †



 魔獣の駆除くじょが再開された。

 次の魔獣も案の定連鎖(リンク)して、このときは四匹やって来た。

 本命を相手にする前に、壁を使った陣形フォーメーションを試すことができて、丁度いい予行演習になる。


 陣形フォーメーションはすこし変更されている。


 前列には左から、     ノルド(大剣)、ルーシー(刀)、俺(盾)。

 中列に遊撃として、    スレイン(弓)、ルクス(槍)、シルィー(術)、

 そして奥側通路の担当に、         リカルド(盾)。


といった配置だ。


 配置は前のままに、奥側通路をウォールふさいで、前方通路三カ所に集中しようという案を出したのだが、そちらは殲滅速度が落ちるという理由で却下された。

 自分の出した案も含めて、完璧な計画というものはあり得ないので、それも良いと俺も受け入れた。


 そして次の魔獣が複数。


連鎖リンクした! 全部だ!」


 全部一斉に来るようだ。

 全員に緊張が走る。

 スレインが飛び込んだところでウォールを張り巡らせて、魔獣の襲来に備えた。




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