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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第四章 過去から呼ぶ声
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1 ボス部屋調査 1       


「タツヤさん、あなたたちわかれてくれない?」


 ルーシーさんのそんな一言から、俺は月那るなと別れることになった。




 騎乗免許講習の無事終了を報告をした俺たちは、さっそく翌日から行われる“ダンジョン・ヤグト第五層第六層未踏領域探索”の予定スケジュールを聞かされた。

 今回の探索では、五層へ向かう第一班と、六層へ向かう第二班の二組が出されることになる。

 他にもバルニエ大草原の岩棚への調査を再度実施するし、Dランク冒険者向け依頼としてダンジョン・ヤグト第一層で魔獣の屍骸と全身板金鎧フルプレートアーマーを探す依頼も出ているそうだ。


 第一班の顔ぶれは、Bランク冒険者で冒険者ギルド職員のルーシーさんを隊長リーダーに、Cランクパーティー“怒濤の山津波”のスレイン、ルクス、リカルド、ノルド、そして案内役のタツヤとシルィーの七名。


 第二班は、Bランクパーティー“緑の旋風(グリーンゲイル)”スルハとナティア、Cランクパーティー“紅牙こうが”のリンディ、サハティ、ミルスの三姉妹、そして案内役にハンナ、リディア、月那るなの計八名だ。



 “またり”も“白き朝露”もそれぞれ二班にわかれることになった。

 通常なら俺たち“またり”とハンナたち“白き朝露”で二つに分けるところらしいが、今回は個々の持つ技能スキルが分割の要件になったので仕方がない。


 一、「地図作成マッピングスキル」

 俺たちが未踏領域から脱出するのに最も役立ったこの技能スキルは、一班二班の両方にぜひ欲しい。ということで、俺と月那るなのおわかれが決まった。

 これがなければ、飛ばされた先で現在位置を見失い、俺たちは帰らぬ人となっただろうからね。


 二、「収納ストレージスキル」

 探索に必要な物資を余裕を持って運搬しつつ、突発事態に対処するための身軽さを確保できるこの技能スキルも、一班二班の両方にぜひ欲しい。ということで、俺と月那るなのおわかれが確定になった。

 運搬費は別途でもらえるそうだ。ほくほく。


 三、「風の探知ウィスパーディテクション

 シルィーが冒険者ギルドに落とした爆弾、風の探知ウィスパーディテクションは、ギルドに知らせてからまだ日が浅く、当然ながら一般の冒険者には広がってはいないし、使い手もいない。

 その使い手がここに二人いる。

 一人は勿論もちろんシルィーでもう一人は月那るなだ。

 そして風の探知ウィスパーディテクションは、第六層では洞窟蝙蝠ケイブバットが集まり過ぎてかえって危険なため、探知範囲の広いシルィーが第五層担当になった。

 どの程度使える探知魔術なのかこの機会に見ておきたいという、ギルドの事情もあるだろう。


 こうして俺たちDランク冒険者パーティー、“またり”と“白き朝露”は、しばらくのあいだ組み合わせを替えて行動することになった。



    †



 騎乗ギルドで騎獣たちとたわむれた翌日、俺たちは再びダンジョン・ヤグト第五層へと向かう。

 第二班は移動距離が長いため、少し先行して出立した。

 ルーシーさんが業務の引き継ぎとローテーションの調整をギリギリまでしていたということもある。

 だがそれも予定通りに終わらせ、北門近くにある冒険者ギルド出張所から獣車に乗って、時間通りにダンジョン・ヤグトへ向け出発した。


「ルーシーさんは、冒険者を引退してなかったんですか?」

「冒険者登録は抹消していないわよ。休止しているだけね。それに今日はギルド職員としての参加だからね。

 私が貴方たちの報告を確認する。貴方たちは私を案内する。スレインたちはその護衛ね。

 これまで聞いた事のない案件だから、王都支部への一報は入れてあるけど、専門家が来る前にこちらでもいちど現場を直接見ておきたいのよ」


 そういうことか。

 本調査前の前調査プレサーチのさらに前、現場げんじょう確認と言ったところか。

 そりゃ報告はしたけど、現地ギルドが何も知らないままでは立つ瀬がないものな。


「年寄りの冷や水は……」

「誰が年寄りって? ルクス、私の歳は貴方あなたのお兄さんより貴方に近いんですからね」

あねさん、ギルド職員なんて辞めて冒険者に復……」

あねさん言わない! だいたい貴方、同い年でしょうが。それも私の方が一カ月若い」

「えっ!?」


 ルーシーさんをあねさん呼びしたのは、俺と同じく片手剣と盾を使うリカルドで、えっ!? は俺だ。


「“怒濤の山津波”の皆さんって三十台くらいなのでは?」

「いやいやタツヤよ、オレ達は二十六歳のオレを筆頭に、一番若いノルドが十九歳だ」


 訂正を入れてくれたのは、“怒濤の山津波”のリーダーで斥候スカウト職を務めるスレインさんだ。


「えっ!? あれ? 俺がいちばん年上? ぜんぜん気がつかなかった……」


 タツヤは衝撃ダメージを受けた───。

 ノルドたちも地味に痛手ダメージを負っていた──。

 いや、シルィーが居たな。さすがに三桁はいないだろう。

 えーと、なんの話だっけ。


 そんな風に、第一班は和気藹藹(わきあいあい)(?)と進んでいった。


 今回も御者はルーシーさんだ。

 騎獣に乗るのは自由だが、獣車を引くには“牽引けんいん免許”が要るそうなのだ。少なくともギルド加入者には。

 そしてこの獣車に乗っている中で、牽引免許を持っているのはルーシーさんだけだ。

 大手や長距離移動が当り前なパーティーでなければ、冒険者が牽引免許まで持つことはないらしい。


 ダンジョン砦へ到着すると、先に二班を乗せていったラピスさんが出迎えてくれた。

 これから俺たち二つの班が戻るまで、砦の中の冒険者ギルド事務所へ詰めてくれて、常駐の職員では対応しきれない事態に備えるのだという。

 手厚いね。

 獣車を厩舎きゅうしゃへ入れると、ラピスさんに見送られて早速さっそくダンジョンへともぐる。


 この面子メンバーでは、第三層でも襲われることがほとんどない。第四層ではさすがに襲撃を受けたが、反撃も一瞬で終わるので足も止まらない。


 先日第五層から戻るときには十番径路(ルート)を使って四層へ上がってきたが、今回は五層から六層への正規径路(ルート)の反対側にある“ボス部屋入り口”を目指すので、手近の一番径路(ルート)(地図の1時方向にある斜路トンネル)を使って第五層を目指す。


 そして第五層。

 真っ直ぐにボス部屋を目指す。

 俺たちもまだ確認していないボス部屋の入り口を、今回(はじ)めて目にすることになる。


 第五層というのは、Bランクのルーシーさんはもちろん、Cランクの“怒濤の山津波”にとっても戦闘面で余裕をもって活動出来る階層に過ぎない。そのため戦闘を避けて大回りするなどという事はしなかった。

 自然と会敵は多目になるが、見つけしだい壊滅(サーチ&デストロイ)させていく。

 シルィーの風属性魔術“吸引サクション”が、魔石の回収に活躍していた。


 いまは先頭を行く“怒濤の山津波”リーダーで斥候スカウトのスレインと、弟で槍使いのルクスが先行、二列目に俺とシルィー、三列目にルーシーさん、最後尾に俺と同じく片手剣と盾を使うリカルドと、その弟でDランク昇級試験のとき俺の相手をした大剣使いのノルドという編成で動いている。

 本来なら“怒濤の山津波”の四人はスレイン(斥)、リカルド(盾)、ルクス(槍)、ノルド(大剣)の順で動くことが多いのだが、今回は道案内の俺が盾使いなので、リカルドを下げてルクスを前に出すことにしたそうだ。

 うちなら俺(盾)と月那るな(両手剣)が入れ替わる場面だが、ノルドが前に出てしまうと、その巨体で前方視界が大幅に制限されるので、それはしないのだとか。

 やはりパーティーごとに特徴が出るもんだな。


「そろそろ転進しないと行き過ぎませんか」

「おおそうか。こっち方面は久しぶりなんでかんが狂ったかな。すまんすまん」


 俺の指摘にそう応じて進路を修正するスレインさん。

 もちろん勘が狂ったなんてことはない。そんな凡ミスはDランクパーティーの俺たちですらしないのだ。

 “地図作成マッピング”スキルのことを抜きにしてもだ。


 では何か。

 俺たちが“案内役”足りうるのかを見ているのだ。

 面倒な話だが、このあとの予定を考えれば、向こうとしても今のうちに出せる評価は出しておかないといけない。


 日帰りが難しいダンジョン第五層というのは、ふつうDランクの冒険者が来る場所ではない。

 そしてDランク冒険者というのは、ダンジョン初心者ビギナーなのだ。

 その第五層にあって、このDランクたちは戦力足りうるのか、戦力と数えるには足らないとしても自分の身くらいは守れるのか、それとも自分たちが守らなければ生き残ることもできない戦闘弱者か。

 もっと細かく言えば、進路のズレを指摘をするタイミングや指摘の仕方しかたも評価されているだろう。

 その良し悪しをではなく、傾向けいこう確度かくじつさのていどをだ。

 なにしろ命がかかっているからね。


 そんな三文さんもん芝居をはさみながら、俺たちは第五層の目的地、ボス部屋前に到着した。




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