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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第三章 遭難しましょう?
73/246

30 調査隊4  sideルーシー   


「タツヤさん、あなたたちわかれてくれないかしら?」

「は? まあ構わないとおもいますよ。どんな風にかれましょうか」


 魔石や素材の買い取りと、明日からの組合依頼ギルドミッションについて、どちらから話を始めましょうか? とたずねたところ、どちらからでも良いという事だったので、先ほどから頭を悩ませていた人員の割り振りを決めてしまうことにした。

 すると間髪かんぱつ入れずに答えるタツヤさん。

 ずいぶんと決断が早いのね。

 ちゃんと考えた?


「いいの? メンバーを組み替えることになってしまうけど」

「大丈夫だと思いますよ。みんなどうだろう?」

「「いいよ」」「問題ありません」「いい」

「だそうです」

「わ、分かったわ。じゃあね……」


 どうせならと、考えていた最良の配置を提案してみたところ、あっさりと承諾オーケイされてしまった。


承諾しょうだくの理由ですか? 俺たちの特徴とくちょう把握はあくしているルーシーさんが、これが最良ベストと考えた割り振りですからね」


 そ、そう。

 信頼してもらっているようで、ちょっと嬉しいわね。


「パーティー名のことでふたつに分かれていますが、中身は実質ひとつですし、その中で一時的な入れ替わりがあったくらいでは騒ぎませんよ。じっさい西の森では俺とシルィー、月那るなとハンナとリディアと、今回と同じ分かれ方をしての探索もやっていましたからね」


 何をしてるんだろう、この人たちは。

 二度目のダンジョン・ヤグト入りの時に、役割を入れ替えて魔獣を狩ってきたと聞いたときも思ったけど、そう言うのって意外と役に立ったりするのかしら?


「前にダンジョンへもぐったときにも、そんなことをしてたわよね? それって何処どこのパーティーでもやった方がいい事?」

「どうでしょうか。今回はちょっと気になる事があったのでやってみましたけど、今後も続けるかどうかは微妙びみょうなところですね。自分以外のメンバーが普段なにをしているのか、実体験として知っておくのは悪いことじゃないと思いますが、危険な場所や余裕のない場面でえてするまでもないと思いますよ」


 ダンジョンの第三層は、この人達にとっては危険も少なく、余裕のある場所なわけね……。

 それで役割を入れ替えた上で、大銀貨四百枚以上をかせぐんだから、Dランクパーティーとしては破格はかくよね。

 だからこそ今回みたいな突発事故にっても、全員無事で戻ってこられたのだろうけど。


「分かったわ。答えてくれてありがとう。それじゃあ私と一緒に五層へ行く第一(はん)には、タツヤさんとシルィーさんを。Bランクパーティー“緑の旋風(グリーンゲイル)”、Cランクパーティー“紅牙こうが”と一緒に六層へ行く第二班に、ハンナさん、リディアさん、ルナさんでお願いしたいわ。どちらの班も収納ストレージを一つずつ使わせてもらうわね。この依頼料は別途で支払われます」

「分かりました」

「第二班組と、一班の収納ストレージ提供者は、朝1しょう(6時頃)に組合(ここ)へ集合して物資の積み込み。その後第二班はラピスの案内で北門から獣車でダンジョンへ向かいます。第一班の出発は朝2鐘(9時頃)を予定していますので、ここで私の用が済むのを待っていてもらっても構いませんし、一旦いったん解散して2鐘前に北門近くの冒険者組合(ギルド)出張所へ集まり、そこで“私”とCランクパーティー“怒濤どとう山津波やまつなみ”に合流してもらっても構いませんよ」

「いい機会なんで、ギルド支部の中をゆっくり見せてもらいますよ。売店とか打合せスペースって使ったことがないですから。それで終わったら一緒に行きましょう」


 タツヤさんとシルィーさんが相談して、そんな返事をしてきた。


「今回の探索では水、食糧、野営用品などの消耗品は組合ギルドから提供します。ですからわざわざ用意してもらう必要はないのですが、決して豪華なものではありません。好みのものを持ち込んでもらうのは構いませんが、収納ストレージの容量が一杯になってしまった場合の取捨選択しゅしゃせんたくはこちらに一任いちにんしていただくことになります。収納ストレージを使うことにしたのは、いざという時の機動力を確保するのが目的ですので、収納からはみ出した物を自分で持ったら移動が遅くなった。というのは認めませんから、承知しておいてください。

 明日のことはこれくらいなんですが、ルナさん」

「はい?」

「以前、ゴブリンの大量討伐をした岩棚いわだなの場所を教えてもらったじゃないですか」

「はい、達弥たつやさんが地図に印を付けていましたよね」

「ええ、その岩棚いわだなの形って紙にけませんか? とりでで、中央岩塊(がんかい)の中を地図に書き出したように。現場を確認する依頼リクエストを再度出すにしても、前と同じ条件ではまた不達ふたつになりかねませんから」

「できると思いますよ」

「もう一つ。転移部屋から転移させたという、“全身板金鎧フルプレートアーマー”? の姿図スケッチも、描けるようならお願いしたいのよ」


 タツヤさんは“騎士鎧”だと言っていたけど、国の騎士団でも“全身板金鎧フルプレートアーマー”なんてけていないから、想像がつきにくいのよね。


「そちらは生憎あいにくと、ロープを引くのを手伝っただけなので、人の形をした金属製のものくらいにしかおぼえてないんですよ。ごめんなさい」

「いえ、いいのよ。他の人も描けたりしない?」

「描きましょうか? 俺でよければ」

「タツヤさんも描けるんですか?」

月那るなのように手だけで(フリーハンド)と言う訳にはいきませんが、そこの雲形定規カーブドルーラーを貸してもらえばまあ」


 この人も描けるんだ。

 文章が書けて計算ができるだけで職には困らないというのに、二人(そろ)って多才たさいよね。


「お願いします。これで依頼の達成率が上がります」


 依頼は出せば終わりじゃなくて、受けてもらって、なおかつ達成してもらわないと意味がないからね。

 依頼じゃないからお金は出せないけど、二人には、ギルドの功績ギルド得点ポイントの積み増しを申請しておこう。


 こうして出来あがった“岩棚”と“全身鎧”の姿図を付けて探索依頼を出し、明日のための打合せは終わった。



    †



「じゃあ次は“西の森”の素材買い取りね。こっちへ来て」


 頭に(ハテナ)を浮かべながら付いてくる五人を引率いんそつして、買い取りカウンターの奥にある壁を越える。


「“またり”さんも“白き朝露あさつゆ”さんも冒険者登録と同時にDランク昇級審査へ参加申込エントリーしたから、利用するのは初めてだろうけど、ここが“解体場”よ。採取したものや依頼で狩ってきたものは表でも受け取るけど、魔獣の場合は魔石を取り出すし、他にも解体かいたいの必要がある素材の買い取りは、基本こちらで行っています。外から荷車カート獣車キャリーで直接運び込むこともできるわよ」

「Dランク昇級審査のときは、なんで表の買い取りカウンターで良かったんだろ?」


 ハンナさんが首をかしげていた。


「それはDランク昇級審査が組合依頼ギルドリクエストに準じているのと、日々(ひび)目標に近づいているのが実感できれば、やる気(モチベーション)起きる(あがる)ってものでしょう?」

「なるほど…確かに…」

「それにね」

「ん?」

「Eランクの冒険者が持ち込むものって、多くても小型の魔獣が日に数匹なのよ。ゴブリンを一度に何十匹も持ち込むなんてことは、普通はないの」


 誰とは言わないけどね。


「たはは……」「てへっ」


 タツヤさんとルナさんが照れていた……。


親父おやじさーん」

「おう、どうしたルーシーちゃん」


 分厚ぶあつ前掛け(エプロン)をした作業着姿のおじさんに声をかけた。


「ちゃんはやめてよ。Dランクパーティーの“またり”さんと“白き朝露あさつゆ”さんよ。彼らが“西の森”の素材を持ってきたの。こっちは初めてだから説明してもらえます? 収納ストレージがあるから、量は期待できるわよ」

「おう、そうか。オレは解体場の責任者をしている“シゲー”だ。収納ストレージ持ちの新人か、期待してるぜ」

「それじゃ、私は戻るわね。後はよろしく」

「任せとけ」「「「「「ありがとうございました」」」」」




 表のカウンターへ戻り、通常業務を始めてすぐのこと、


「「「ぎゃー!」」」「「「なんじゃこりゃー!」」」


 解体場の方向から、悲鳴ひめい絶叫ぜっきょうが聞こえてきた!

 十中じっちゅう八か九くらいの割合で、“またり”“白き朝露”案件よね!


「見てくる!」


 そう言い置いて解体場に向かうと、───山ができていた。

 宿うちで彼らが使っている部屋の二倍を超えるかさがある、素材の山だ。

 家一軒(いっけん)分くらいあるんじゃない? とんでもない容量の収納ストレージね。

 はっ、さっき照れていたのはこっちかっ!


「ルーシーちゃん、あいつらすげーな。これから納品が最高潮ピークだろ。職員だけじゃさばききれねえ。何回かに分けて納品してもらえねえかな。おい! その花は走野老ハシリドコロだ。素手でさわるなよ。()だ。薬師くすし組合ギルドへ人をやれ、走野老ハシリドコロ芥子菜カラシナ加密列カミツレが大量に入ったってな。料理組合(ギルド)へもだ。香草ハーブと食材が沢山たくさんあるぞ!」

「「はいっ!」」


 分割納品か。駄目ね。明日からその収納ストレージを使うから、中はけておかないと。

 しまったなあ。こんな事ならきのう別れる前に、買い取りだけでもしておくんだった。


「ごめん親父おやじさん、明日からの探索で彼らの収納ストレージを使うのよ。行政依頼と組合依頼で」

「そうか、じゃあ人を増やせないか? 解体かいたいのできる奴」

「そんな人材、急に言われても…」


「手伝おうか?」


 声をかけられて振り向くと、そこにいたのはハンナさんたち女性陣だった。


「自分のった獲物えものは自分で解体してたからさ」

「山の村でのたしな程度ていどに」

「森、で、暮らす、の、に、必須ひっす、の、ぎじゅ、つ」

「ハンナさんに教えてもらった程度ですが……」

「ちょっと全員、角ウサギ(ボーンラビット)を解体してみてもらえるか?」


 作業台を囲んで四人が解体を始めると、あら上手じょうず


「よし、四人とも合格だ。臨時依頼(アルバイト)で手伝ってくれ。にいさんは駄目だめかい?」

「ええ、覚えた方が良いとは思っていましたが、手を付ける時間がなくてやっていません」

「そうか。兄さん収納ストレージ使いだったよな。それじゃあ収納それを使ってみんなの助手アシスタントをしてくれ」

「はい」

「まずは場所を作る。そこの草の山を収納ストレージして、こっちのすみに種類ごとに分けた山にしてくれ。それから……」


 全員採用になったので、受付にもどって日々の業務をこなし、窓口を閉めた後で解体場をのぞいてみると、タツヤさんも含めた全員が解体作業をしていた。


「おうルーシーちゃん。今日は助かったぜ。あとはこちらの人員で間に合うから、あいつらも終わってもらうわ。支払い伝票でんぴょうはこれだ。よろしくな」


 彼らの仕事ぶりには満足したようで、すこし色がつけられた金額が決済けっさいされていた。

 親父シゲーさんが「あいつらうちに就職しないかな」と言っていたほどだ。

 取っちゃ駄目よ。


 ルナさんがみんなに何かすると、全員が綺麗きれいになった。何をした?!


 めずらしく、いかつい装備を着けていないみんなと一緒に帰る。

 こういう時は、帰ってすぐ食事ができる環境がありがたいわね。


 明日は五年ぶりのダンジョンだ。





固定電話の回線が、すべて I(インターネッ)P (トプロトコル)化される。というお知らせが、回線事業者から来ました。

これによりいくつかの通信サービスが終了するのだとか。

ただし利用者側で何か機材を変えたり増やしたりする必要はありません(●●●●●)

10/1投稿分の後書きに書いた「ADSL終了」の件は、その前振りだったらしいです。

「申す申す」で始まった、ひとつの時代が終わるのを目にしているんですね。

ミステリーやサスペンスを書く人は、逆探知や盗聴の描写が変わるから、大変そう。



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