表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第三章 遭難しましょう?
71/245

28 調査隊2  sideルーシー   


 早朝に呼び出しを受け、“またり”さんと“白き朝露”さんの五名をとりでから受け出し、組合長ギルドマスターに報告し、朝の戦場うけつけを乗り切ったあと、早速さっそく各種の手配に取りかかる。

 最初に、受付を統轄とうかつしているレヌアに、ラピスを交えて話をする。


「タルサ市行政府からの依頼リクエストと、関連した組合依頼ギルドミッションを出すことになったのよ。内容は、ダンジョン・ヤグト第六層の探索、担当は“緑の旋風(グリーンゲイル)”と“紅牙こうが”の予定。彼らがネタを拾ってきたの。

 日程は明後日あさって明明後日しあさってくらいから、期間は四~五日。本日中に行政府から正式依頼が来るから、内容確定はその後になるわね。組合依頼ギルドミッションの方は同じ日程で第五層の探索たんさく。どちらのチームにもDランク冒険者パーティーの“またり”か“白き朝露”が案内役ガイドとして同行します」

「第六層の探索にBランクをり出すのね。組合依頼ギルドミッションの編成は、六層組と同じ?」


 レヌアがたずねてくる。


「そうね」

「Cランクパーティーはいくつか声をかけられそうな所が思い当たるけど、Bランクは何処どこも予定が詰まってないかな? Aランクって訳には行かないんでしょう?」

「Bランクの方は、私が行くわ」

「は?」

「Bランクの方は、私が行くと言ったのよ」

「冒険者に戻るの?!」

「違うわよ。今回は組合長ギルマスの要請で、組合ギルド職員スタッフとして参加するの。戦闘は同行する(シー)(シー)(プラス)ランクたちに任せるわ」


 C(マイナス)ランクは除外する。

 さすがに第十層に届いてない人たちに、この依頼は出せない。

 できればC(プラス)ランクが望ましい。

 このランクの(プラス)(マイナス)というのは、組合ギルド内部での隠語いんごだけどね。


「そんなこと言って体がうずくんじゃないの? むふ」

「変な笑い方をしないでよ。どこの戦闘凶バトルジャンキー?」

「お祝いしてるのよ。あなた組合ギルドへ来てからすっかり一般人だったじゃない。元が冒険者であの変わり様は普通じゃないわ。それがともかくもダンジョンへ入ろうって気になったんだから、おめでたい話よ」

「そ、そう? ……ずっと訓練は続けてたのよ」

「そうなの? その間、ラピスはどうするの? それにいくつか外部の案件を抱えてたわよね、ルーシーは」


 さすがレヌア、話が早くて助かる。


「ラピス、あなたこれから一週間ほどの間、外せない用はある?」

「いえ、特にありません」

「じゃあ私たちがダンジョン入りするのに合わせて、ダンジョンとりでの分室で後衛バックスを担当してちょうだい。基本日勤で、日に一度の定時連絡と、騎獣の運動を名目にしてタルサへ戻ることはできるけど、夜はとりでにある組合ギルド分室の宿舎しゅくしゃに寝泊まりすることになる。詳細は後でね」

「はい」


 ラピスは兎族ラビットピープルの元Cランク冒険者で、獣車で移動しながら仕事を受けていたパーティーの斥候スカウト職をつとめていたが、タルサ(ここ)でいきなりダンジョン第十層へいどみ、パーティーが大きな損害をこうむって、解散した。

 此処ここは此処、他所よそは他所なんだけど、ダンジョン入りの条件は満たしているため、入場するのに問題はなかったのだ。

 ちょっと慎重しんちょうさをいていたみたいね。

 ラピスはそのときの圧力プレッシャー心に傷(トラウマ)を負い、宿屋に引きこもっていたところを、組合長ギルマス拾わ(スカウトさ)れたそうだ。

 特殊技能スペシャルスキルのこともあって、優秀な斥候スカウトだったらしいけど、この時ばかりは聞こえ過ぎるのがあだになったらしい。



「外部案件だけど、四件あるうち商業ギルドが絡む二件は組合うちの売店を窓口にするので、こちらの手を離れます。残りの二件、冒険者組合(ギルド)王都支部からと、森精族エルフのセル部族レースから来る私()ての用件は、組合長ギルマスが直接対応するのでそちらへお願い」

「わかった」


 さて、まずは報告書レポートの作成か。

 ……だれか報告書レポートを書いてくれる“術具”を作ってくれないかしら……。




 書き上げた今回の“またり”さんと“白き朝露”さんについての報告書レポートと、“目録カタログ化”“魔石と収納ストレージ”、“風の探知ウィスパーディテクション”の経過資料を、まとめて組合長ギルドマスター決裁けっさい箱へと放り込み、ラピスに、この先一週間ほど予定がいていて、二~三日中に動き出せる、ダンジョンで討伐とうばつ護衛ごえい探索たんさくが出来そうなCランクパーティーを選び出(リストアップ)しておくように頼む。

 “緑の旋風(グリーンゲイル)”と“紅牙こうが”へ、「進展あり、以前打診(だしん)していた“紅牙こうが”への調査依頼は、“緑の旋風(グリーンゲイル)”を加えてのものになる見込み。本日中に確定。明日組合(ギルド)へ来られたし」という書き付け(でんごん)を作り、いつも組合ギルドに数人待機しているFランクの子に、親展しんてんで届けてもらうよう手配する。

 “武具防具の目録カタログ化”の複製資料と“石鹸せっけん”についての経過資料を持って売店を訪ね、話を通して席へ戻ると、見知った顔が待っていた。



あねさん、お疲れさまです」



 何度言ってもやめない「あねさん」呼びをするのは、“怒濤の山津波”の槍士そうしで、代表者リーダーの弟のルクスだった。


 “怒濤どとう山津波やまつなみ


 タツヤさん達“またり”とハンナさん達“白き朝露あさつゆ”のDランク昇級審査で試験監督(かんとく)講師こうしを務めた、四人組Cランク冒険者パーティーの一人だ。


あねさん言うんじゃないってば。……何やってるのよここで。あんた達、護衛に出てたんじゃなかった?」


 こめかみを押さえながら、私も答える。


「先ほど戻って依頼達成報告をしたところですよ。それよりあねさんが組合ギルド依頼クエストでCランクパーティーを探していると聞きまして」


 あら?

 なんで知ってるのよ? って思って横を見る。

 まあ他にないわよね、ラピス。


「すみませ~ん先輩。この先一週間の予定を聞いたらバレちゃいました~」


 そりゃあ目の前に、依頼から戻ったばかりの、条件にかなうCランクパーティーがいれば、くわよね。

 恐縮きょうしゅくしているのか、背側に流れている耳が頭にぺたんとせている。

 仕方ないわね。


「探しているけど、あんた達はこの間Dランク昇級審査の監督かんとくをしたばかりじゃないの。(選び出し(リストアップ)の結果はどうなった?)」


 と、普通の台詞に続けて、くちびるを動かさずに小声でつぶやくと、あ、耳がピクンとした。聞こえたようね。

 ラピスが黙ったまま覚書(メモ)を、私から見えるところへすべらせてくる。

 素速すばやく目を走らせると、あらら、C(プラス)パーティーが一つも無いじゃないの、普通のCランクなら三組いるのに。


「あれは地元のCランク冒険者が、輪番もちまわりで引き受けている組合依頼ギルドリクエストじゃないですか。外へ出る訳でもなし、数に入りません(ノーカウントです)よ、ノーカン」


 “Dランクパーティー”が、もはやDランク魔獣では相手にならないというほど強くなると、パーティー限定でCランク向けの依頼が受けられるようになる。

 その状態で、構成員メンバーの誰か一人が、個人としてCランクと認められたとき、そのパーティーは“Cランクパーティー”となる。

 組合ギルド内部で“C(マイナス)”と呼ばれる状態だ。


 順調に実力を付け、構成員メンバー複数ふくすうが個人でCランクと認められたとき、そのパーティーのランクから“(マイナス)”が外れる。

 名実ともに“Cランク冒険者パーティー”というわけだ。

 さらに力を付け、構成員メンバー全員が個人でCランクと認められるまであと一人(●●●●)となったとき、そのパーティーのランクに“(プラス)”が付いて、全員参加フルメンバーのパーティー限定で、一つ上のランクの依頼を受けられるようになる。


 “怒濤どとう山津波やまつなみ”は、四人全員が“個人として”Cランク冒険者を名乗っている、現在C(プラス)ランク。

 次のステップ、Bランクパーティーを目指せる位置にいるわけだ。


「まだ本決まりじゃないのよ。暫定ざんてい登録しておくから、明日の昼ごろ顔を出してくれる?」

「分かりました、あねさん」

あねさん言うんじゃないってば……」


 私と“怒濤の山津波”は、どちらも地元タルサで生まれ育っていて、おたがいを子供の頃からよく知っている。

 ぶっちゃけ幼馴染おさななじみだ。

 まわりの者もそれを承知しているから、余計よけい勘繰かんぐりをされないよう、仕事では極力事務的(ビジネスライク)に接してきたけど、個人的なこだわりで“C+パーティー”をはずして、ただの“Cランクパーティー”を選ぶようでは、本末転倒ほんまつてんとうだものね。



 午後になり、ダンジョン砦のレナド氏は、約束をたがえることなく使いを寄越してきた。


 これで調査に向けて動き出せる。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ