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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第三章 遭難しましょう?
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26 ギルド依頼 sideルーシー   


 ダンジョン砦からしばらく走ると、遠くにタルサ市北門が見えてくる。

 すでに朝1鐘が鳴り終えていて、朝日を背景に獣車の集団が旅立っていく景色が美しい。

 市壁の外からこんな風景がながめられるのは、市外の作業小屋へ泊まった農家か

冒険者くらいだろう。

 私も数年ぶりだ。

 そんな出発の風景も、私たちが北門へ着くころには落ち着き、往きの夜間通用門とは異なり開門済みの北門から入場した。


「お疲れさま。今日は一日ゆっくりと休みなさい。で貴方たち、騎獣きじゅう免許を取りなさいよ。明日の講習に出られるように手配しておくから。それで明後日からなんだけど、ダンジョン・ヤグトの調査に付き合ってもらいたいわ。これは組合依頼ギルドミッションよ」


 タツヤさんたちには休息が必要だ。

 あれだけの体験をしたのだ。頭ではもう安全と分かっていても、体の反応は遅れてやってくる。だから今日一日“肉体フィジカル”と“精神マインド”を休息きゅうそくさせ、明日の騎乗講習で“精神マインド”を休養きゅうようさせつつ“肉体フィジカル”を暖気状態へもっていく。

 いつもとは違う体の使い方をする、動物介在療法アニマルセラピーよ!

 ふふふ、楽しいからね。覚悟してらっしゃい。

 それで騎乗免許も取れれば一挙両得いっきょりょうとくと言うものよっ!


「えーと、ギルド依頼ミッションというのは、確かCランク以上で付いてくる義務だったのでは?」

「そう、義務になるのはCランク以上の場合。でもDランクでもギルドからの依頼はあるわよ。さっき話した、バルニエ大草原の岩場の調査にしてもDランクパーティーに頼んでいるでしょう?」


 もっともあちらは組合ギルド依頼元クライアントではあるものの、“組合依頼ギルドリクエスト”、つまり“任務ミッション”ではなくて、“一般依頼コモンリクエスト”の扱いだったけどね。


「もちろんDランクの貴方たちには組合依頼ギルドミッションを断る権利があるわ。いえ、Cランク以上でも冒険者組合(ギルド)と決別する覚悟があれば断れるわよ。戦いを生業なりわいとする兵士じゃないんだから、命を天秤はかりに乗せるわれはないわ。Dランク冒険者の貴方たちだと、ギルドの功績得点(ポイント)が引かれるだけで、ギルド依頼が断われるわね。でもこの組合依頼ギルドミッションを断る利点メリットって貴方たちにある?

 ギルド依頼は功績得点(ポイント)が通常より高い。それは依頼の引き受け義務があるCランク以上の冒険者に配慮はいりょしたもので、依頼リクエストを引き受けたDランク冒険者にも同じ比率が適用されるわ。逆に相応の理由もなくギルド依頼を断った場合は、同じ高い比率で功績得点が引かれる事になるから、すでに先約があるとか、特段とくだんの理由がない限り、組合依頼ギルドミッションは受けておいた方がお得よ。

 冒険者組合(ギルド)としては、話に聞いたほどの突発事故とっぱつじこから、一人も欠ける事なく生還せいかんした、貴方たちの実力を見込んでぜひ協力して欲しいのよ。少なくとも協力を要請ようせいしないという選択肢せんたくし組合ギルドにはないの。何しろ現場を知っている唯一ゆいいつの人たちなんだから。

 どうかしら?」


 実際の話、護衛付きで普段よりも深い階層にもぐれる機会チャンスと考えれば、これは悪くないのよね。

 その気と実力があれば戦闘にも参加できるから、依頼報酬いらいほうしゅうに加え魔石の代金まで手にはいり、収益は普段以上になる。

 初心者にとっては、先の階層を実際に見られるというのも大きい。

 この人たちなら五層くらいは余裕そうだけどね。


「分かりました。Dランクパーティー“またり”と“白き朝露”は、そのギルド依頼ミッションを引き受けます」

「よかったわ。ギルドとギルド員はお互いに良い関係で居たいものね。なんと言っても同業者組合なのだから」


 内々の相談がまとまったようで、引受けるとの返事が返ってきた。

 よし! 組合長ギルマス依頼達成リクエストクリア




「ねぇルーシー」


 おや?


「なに?」

騎乗きじゅう免許の事もギルド依頼ミッションなの?」

「まさか、違うわよ」

「違うの!?」


 違うわよ。


「タツヤさんとルナさんには説明したわよね。冒険者登録の時」

「輸送担当冒険者のことですか? そうですよ、レベル20くらい必要って言ってましたよね。確か」

「そう。輸送担当冒険者の話はさておき、貴方たちも今後は機動力きどうりょくが必要でしょう?」


 西の森へ行くようになったら、騎獣が使えた方がずっと便利だからね。


「それで何故レベル20が必要なんでしたっけ? おぼえてる?」

「えー、それくらいのレベルがないと騎獣きじゅうめられる。でしたね? 確か」

「そう。でタツヤさん今のレベルは幾つ?」

「12です。昨日までの訓練とダンジョンで上がっていました。ルナも同じです」

「それで先程さっき騎獣きじゅうめられた?」

「いや……なつかれましたね。おもいっきり」


 そうなのよね。そこが不思議なのだけど……。

 獣車で行ったのはこちらの都合つごうだったけど、いい目安になってくれたわ。

 まあ結果オーライよ。

 講習の費用は組合ギルドが持つから、お金もかからないしね。


「そう言う事よ。騎乗きじょう資格を取る上での最大の関門かんもんが、騎獣との気分の相互伝達なの。これがないと始まらないのよ。だからさっきの様子を見て“これなら大丈夫だいじょうぶ”って思ったの。ルナさんは動物は嫌い?」

「いえ、好きです。ただトカゲだけは苦手で」

「大丈夫よ。騎乗ギルドには、蜥蜴とかげの他に、とりとかうまなんかもいるから。明日はそこらの適性てきせいを見ることもするからね」


 うん、いい流れ。


 獣車を返却して、商業区へと戻る。



「それじゃ私はこのまま仕事に入るわ。今日きょう明日あすのうちにいろいろ手配をすませておくから、明日あしたの講習が終わったら帰りにギルドへ寄ってちょうだい。

 そこで明後日あさってからの予定を伝えるわね。魔石や素材の買取りもその時でいいでしょう?」

「はい。朝早くからありがとうございました」


 そしてタツヤさんたちは宿に向かい、私は「また今夜ね」と、手を振りながら組合ギルドの入口をくぐった。



    †



「ただいま戻りました」

「おお、ご苦労だったな。様子ようすはどうだった」

「はい、五名とも怪我けがはなく、そちらで大きな問題はありませんでした。ただ持久力スタミナ精神力マインドは消耗していましたので、今日は一日休ませ、あす騎乗ギルドの講習会に参加させたあと、明後日あさって以降彼らの予定を押さえてあります」

「そうか」

「それで、彼らがダンジョンにいた原因なのですが、バルニエ大草原との間に張られた転移罠てんいトラップに引っかかった疑いがあります。罠の先は第五層の未踏領域みとうりょういきに繋がり、そこで彼らが“ボス部屋”と呼ぶ場所で“害猪イビルボア”との戦闘になってこれを撃破。その後第六層から未踏領域を脱出し、正規径路(ルート)を通ってとりでへとたどり着きました。これが彼らが書いてくれた地図です」


害猪イビルボアを倒すのか、あいつら……」と、ギルド長がつぶやいている。

 経緯の概略がいりゃく口頭こうとうで説明しながら、ルナさんが書いた第五層、第六層の地図を渡すと、


「中央岩塊(がんかい)の中なのか…」

「はい。そこでの戦闘で集まったとされる、魔石を鑑定しながら話を進めましたので、信憑しんぴょう性は担保たんぽされていると考えます」

「分かった」

「それから、砦責任者のレナド氏から伝言です。『例の調査依頼ですが、未踏領域の件もからめてお願いします。正式な手続きは今日きょう中に進めます』とのお話でした」

「確かに聞いた。ありがとう」

「では私は通常(●●)業務に戻り、報告書レポートを作成します」

「いや、もう少し付き合ってくれ。レナド氏の言う『例の調査依頼』なんだが」


 ええ~。


「……はい」

「第六層の擬態宝箱ミミックから、複数のDランクEランク冒険者の冒険者(プレート)が見つかった」


 ええー!


「第六層でDランクとEランクですか? それは……」

「ああ、Dランクが迷い込んだにしては場所が深すぎる。Eランクにいたっては正規の方法ではダンジョンに入れない。“またり”と“白き朝露”は首尾しゅび良く脱出できたが、同じトラップにかかれば大抵のDランクEランクは戻ってこないだろう。そういう可能性がありそうだ…」

「そうですね……」

擬態宝箱ミミックを撃破したのは、さらに深いところから戻ってきたBランクCランクのパーティーだった」

「“緑の旋風(グリーンゲイル)”と“紅牙こうが”ですか」

「さすがに良く把握はあくしているな」

「それはまあ、地元の高ランク冒険者の動向くらいは押さえています。仲が良いですからね、あそこの五人は」

「そうか。比較的浅い場所なので“紅牙こうが”に追加調査を頼むつもりだったのだが、今の話だと“緑の旋風(グリーンゲイル)”にも組み合わせ(セット)で動いてもらった方がいいな。彼らの次の予定はどうなっている?」

「“緑の旋風(グリーンゲイル)”と“紅牙こうが”は、来週末に護衛依頼の予定が入っています。二~三日(にさんにち)中に取りかかれるなら頼んで問題ないかと」

「そうか。すると問題は“またり”と“白き朝露”が出ようとして出られなかった、第五層の入口専用と思われる扉か……」


 私は黙っていた。

 話の展開がなんとなく分かったからだ。



「君が調査隊をひきいてくれないか?」




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