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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第三章 遭難しましょう?
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24 呼び出し  sideルーシー   


 いそがしい日が続いている。

 おもにタツヤさんのせいで……。


 森精族エルフの探知魔術“風の探知ウィスパーディテクション”。

 現在、冒険者組合(ギルド)王都支部を経由けいゆして、セルレースの族長(あて)書簡しょかんを送ってある。

 “白き朝露あさつゆ”のシルィーさんの祖母そぼ殿だ。

 組合長ギルドマスターからは「君に事情説明に出向いてもらうかもしれん」と言われているが、いっそ本人たちに行ってもらった方が良いかもしれない。組合ギルド依頼クエストを出して……。

 ああ、でも誰も騎乗きじょう免許を持ってなかったわね。

 いまレベル二十前後にいる“白き朝露あさつゆ”はまだしも、“またり”の二人はレベル一桁ひとけただし!

 レベル詐欺さぎだ!

 勘弁かんべんしてほしいわー。

 早くレベルを上げてもらって、早いうちに騎乗きじょう免許を取ってもらおう。

 あれだけの強さなのだから、レベル二十になるのに然程さほど時間はかからないでしょう。



 ダンジョンでれる魔石を大きくする方法。

 これも王都支部へ送って検証準備中だ。

 とは言っても、検証の実施はこっちへやってくるんだけどね。

 魔石を使った“術具じゅつぐ”は、使う魔石の重さ、つまり大きさによって最大出力や稼働かどう時間が決まる。

 だから大きな魔石は国や領主たちから引っ張りだこだ。

 同じ総重量でも、小さな魔石が沢山たくさんより大きな魔石が少数の方が、はるかに価値が高くなる。

 それをまえると、タツヤさんの考案こうあんした方法は、収納ストレージ整理箱アイテムボックスの持ち主に限定になるものの、市場の要求ニーズ合致マッチしたものといえる。

 周囲の期待感がとても高い。



 石鹸せっけんの話は、商業ギルドに丸投げすることになった。

 冒険者ギルドの業務内容とはなれ過ぎて、うちが深く関わっても旨味うまみが少ない。それよりも商業ギルドに貸しを作っておこうということだ。

 ドレイク冒険者組合長(ギルドマスター)は、欲の皮を突っ張らせることなく、無難ぶなんな決断をした模様だ。

 タツヤさんたちは、自分が使える安価な石鹸が欲しいだけのようだし、この流れで文句もんくないらしい。

 私も稼業かぎょうの事があるので、これはぜひ実現して欲しい。

 商業ギルドとしては、薬師くすしギルドを巻き込むつもりのようだ。



 武具防具の価格帯かかくたい情報を共有する“目録カタログ化”については、関係する各組合(ギルド)折衝せっしょうを始めている。

 商業組合(ギルド)を通して、鍛冶かじ組合ギルド、木工組合(ギルド)などに、順位ランク付けのたたき台を作ってもらっているところだ。

 商業組合(ギルド)が乗り気なので、話は進むだろう。

 冒険者組合(ギルド)員を守るための仕組み作りとも言えるため、タルサ支部(うち)としてはここに一番注力(ちゅうりょく)しているというのが現状だ。



 気懸きがかりがあるとすれば、これらすべての件に関する冒険者組合(ギルド)の窓口が()だということだろう。

 おかげでここのところ、窓口対応していない時間はずっと書類仕事をしている有様ありさまよ。

 書き上がった書類は複製コピー可能だ(できる)けど、書類を作るのは手作業でするより他ない。

 誰か私に休みをちょうだい!


 繁忙はんぼう元凶げんきょうであるタツヤさんはと言えば、五日前に二度目のダンジョン・ヤグト攻略アタックをして、大銀貨四百枚をかせいだ上で、三日前さきおとといから西の森へ合宿へ出かけていった。

 最初の攻略よりかせぎが減っていた(それでも第十層近くまで潜ってきたCランクパーティー並みなのだけど)ので、なにか問題でもあったのかと思ったら、お互いの役割を入れ替えて攻略アタックをしていたのだそうだ。

 何をやっているんだか。


 その五人が今行っている「西の森」は、タルサ市から北北東へ半日ほど駆けたところにある───けたところから始まる(●●●)広大こうだいな森だ。

 北にも北西にも広がっているのだけど途中にがけがあって、タルサ市からだと北北東方向からか、王都へ向かう街道から脇道へ入る道程みちのりで大回りしないと辿たどり着けない。

 その「(王都の)西の森」で、採取さいしゅ討伐とうばつ、そしてダンジョンでまったさをらす“合宿”をするのだ。

 と、おもにハンナが楽しそうに話していた。


 いいな“野営キャンプ”!


 城壁の外は魔獣が跋扈ばっこする危険な世界だけど、森の外なら小型の魔獣が指をかじりに来るぐらいだし(そんなことはありません)、広々した場所でび伸びするのはいことよね。

 私も書類仕事なんてっぽって、森歩きしながらかせぎたい気分だ。

 最後に“西の森”歩きをしてから、もう五年()つのか。

 修行の旅から師匠と一緒に戻ってきた時だったよね。

 そういえば、私はなんで修行の旅に出たんだっけ……。


 予定通りなら、五人は明日あす帰ってくる。

 魔石と素材をいっぱい持ち帰ってねっ!



    †



 帰還きかん予定日を過ぎても五人は帰ってこなかった。

 一日遅れただけだし、冒険者が気儘きままなのは不思議でもなんでもないのだけど、有言実行ゆうげんじっこうのタツヤさんがいてなお予定が変わるのは、予定を変えてもえきのある事があったか、そうでなければ……予定通りに行動できない厄介事トラブル遭遇そうぐうしたか……。


 いずれにしても、いま出来ることは何もない。

 明日に備えて眠ろう。




 コンコンコンコン────。



 部屋の外窓を叩く音がした。

 まだ夜明け前だ。

 鎧戸よろいど隙間すきまから、外の光がれていない。


だれ──?」

「ザルクです。ダンジョンとりでから、うち所属の冒険者五名が保護されたと伝令でんれいがありました」

「分かった、すぐに行くわ」

「お願いします」


 急いで身支度みじたくととのえる。


 冒険者ギルドは、夜になれば受付けこそ閉まるが、組合ギルド自体は昼夜を問わず動いている。

 魔獣の脅威きょういは昼夜平日休日をわないからだ。

 このあたりの事情は、騎士団やダンジョン砦など行政でも同じだが、昼夜を問わず動いている組織だからこそ夜間対応要員というのはちゃんと居る。冒険者が保護されたというだけならそちらで対応するのが普通だ。

 つまり、普通じゃないことがあった?


 保冷庫の中から家族用に取り分けてある、お惣菜そうざいまんで頬張ほおばる。

 腹が減っては何とやらよね。

 うちが…、姉のミリアが宿屋(けん)食堂をやっているので、うちの保冷庫は闇属性化した魔石が使える業務用だ。

 義兄あにのクルトが作り置きのお惣菜を常備してくれているため、ちょっとしたとき摘まめるのが地味にありがたい。


 受付けの時計を見ると、朝の三(こく)

 姉に手紙を書いて外へ出る。

 伝言を持ってきたザルクはもういない。ギルドへ戻ったか他へ伝言に回ったのか。

 昼間は人目があるからやらないけど、今ならまだまだ日の出前。

 スカートだって大丈夫。



 商業区の高台を目指して、私は“んだ”。




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