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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第三章 遭難しましょう?
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22 騎乗講習 2         


 座学はわりと簡単だった。

 繰具そうぐの名称、くらとかあぶみとかくつわなどを、絵や現物を見ながら役割とともに覚えたあとは、騎獣ギルドの施設の種類と、近隣の施設の紹介がメインだ。


 いや商業主義とあなどってはいけない。

 実際これはかなり便利そうだ。


 例えば一昨日おとといまで行っていた西の森。俺たちは徒歩で片道に半日かけたが、騎獣きじゅうに乗って街道を王都方面へ走り、途中で向きを西へ転じれば、1じかんほどで西の森の東野営(キャンプ)場へ着くそうだ。

 森でどれだけ稼ぐかにもよるが、これなら日帰りで狩りが可能だし、狩りのあいだ乗っていった騎獣を騎獣ギルドの出張所へ預ける事もできる。乗り捨てさえ可能なようだし、距離がそれほど遠くないため途中の餌やりや休憩も不要だ。成果が大きいのに収納ストレージが無いなら、騎獣に荷車を繋いでもいい。

 ただし荷車には別途牽引(けんいん)免許が必要だそうだ(笑)

 さらに、出張所を繋いで騎獣を乗り継ぐことで、長距離を早馬のように使うことも可能だという。


 こういったネットワーク展開は正直意外だったが、考えてみれば冒険者ギルドも国を跨いで同業者組合ギルドを展開をしているのだ。

 運輸流通に関わる度合いは騎乗ギルドの方が遙かに直接的なのだから、こうした展開はあるだろう。


 たとえてみれば、全国展開しているレンタカー会社が、自分のところで運転講習と免許を出して、その所持者や契約者相手に途中のドライブインや道の駅まで提供するようなものだ。


 もちろん自分の騎獣を持つ事だってできるし、その騎獣きじゅう騎乗きじょうギルドのサービスを利用する事もできる。


 けっこう大したものだな。



    †



 座学が終われば騎獣たちとのご対面である。

 これが通らなければ、その先がないというのだから気合いが入る。


 最初は四足蜥蜴(はちゅうるい)だ。

 昨日の子が居れば俺は一発合格だな。

 そんなことを考えていたのだが、甘かった。

 柵の中に居る四足のトカゲたちが一斉に集まってきたのだ。

 シルィーと俺と月那るなまわりに!


「壮観だなおい。エルフ以外にもこれほど動物に好かれる奴が居るのか。あのエルフも別格だな」

「相変わらずだよね。シルィーはいつもの事だけど、タツヤとルナもやっぱりヘンだわ」

「誘引率三倍ね。珍しいからもうちょっと見ていたいかも」


 こら、そこのダナン講師とハンナとリディア。笑って見てないで助けてくれ! いや助けてください! お願いします!

 シルィーはどうしてる? あー、あれは何かを悟って諦めの境地に至っているな。今までも苦労してきたんだろうな。分かるよー。

 月那るな、月那。そんなに力一杯しがみ付いて。あ、身体強化まで使ったら鎧が変形する! この鎧はアダマンタイトじゃないんだから! 月那ー(るなー)


 それから暫くして、ダナン講師が四足蜥蜴(はちゅうるい)たちを引き剥がしてくれるまで、俺たち三人は騎獣たちにまれ続けた。

 やっと救出されて屋内へ待避出来たときの言い草が、「お前達が居ると他の受講生のお見合いができんから、しばらくそこに居てくれ」である。ひどい!


 だがまあ、こちらも月那るながパニくっているので、落ち着く時間が持てるのはありがたかった。

 まだ硬直している月那るな白湯さゆを飲ませて落ち着かせる。よしよし。

 シルィーの方を見ると、こちらは平常運転に復帰している。

 年期の差か?


「シルィー、いつもアレだったのなら、ずっと大変だったんだな」

「うん。…流石、に、馴れた。でも、ボクと、同じ、と、言う、事は、タツヤ、たち、って……」

「シルィー、ルナー、タツヤー、生きてる~?」


 リディアが現れた。生きてるよ!


「ダナンさんが三人を呼んで来いって」

「わかった。そっちはどうなったんだ?」

「四足蜥蜴(はちゅうるい)は全員クリアしたわよ。二足のには逃げられたけど、私とハンナは身体強化で追っかけてさわってやったわ」


 鬼ごっこか!


 すごいでしょう、と両腕で力こぶを作ってみせるリディア。さわるとプニプニなんだが。

 四足蜥蜴(はちゅうるい)たちの時は、彼らが俺たちの方を気にしているあいだに腰の横から触っ(タッチし)たらしい。

 それでいいのか。


「そうすると、次は俺たちってことか?」

「そうだって」


 そう言われて先ほどの混沌カオスが思い出される。

 月那るながなあ……。


「タツヤたち三人は、たぶん全種大丈夫だろうから、柵の外側からでいい事にするって、ルナも何とかならないかな」

「いき…ます……」


 固まっていた月那るなが、再起動したらしい。


「いや、トカゲのたぐいが苦手なのは知っているから。無理せず棄権きけんでもいいぞ」

「いえ、せっかくの…機会ですから、頑張り……ま…す」


 弱々しく答えながら歩き出そうとするので、俺としては支えてやるしかないか。

 外へ出てリディアの後を付いていくと、先ほどの四足蜥蜴(はちゅうるい)の柵を過ぎた先にある、別の柵の前に皆がいた。


「来たか。早速さっそくだが全員挑戦(チャレンジ)でいいのか?」


 ダナン講師がいてきた。

 俺の背中に張り付いている月那るなを見ると、顔色はすぐれないままだがうなずいているので、ダナン講師に肯定(オーケイ)の返事をしておく。


「それではそこの柵の前まで来て、寄ってきた(●●●●●)二足竜の身体の何処どこでもいいからさわれれば合格だ」


 二足()

 そう言って指差された柵の方へ三人で寄っていくと、寄ってきた。

 二足歩行の恐竜(ダイナソー)だ!

 映画で見たようなかたちで、全長三~四メートルほどの二足歩行竜が、ケージとりよろしく柵の向こう側で横一列に並んで、「でれ」とばかりに頭を擦り寄せてくる。

 黙って突っ立っていても仕方がないので、手近な竜の頭をでると、両隣の竜がわれも我もと騒ぎ出す。仕方がないのでシルィーと手分けして中央から分かれ、左右に順に頭を撫でていく。

 月那るなは俺の後ろに隠れたまま付いてきている。


 トカゲもそうだが竜も声を出さないので一種異様な光景ではあったが、彼らの熱気は伝わってくるし、懐かれればちょっと可愛いとも思う。

 そして最後の一頭。

 一番端にいた、他の竜よりも一回り小さな竜が最後に残った。

 月那るなの方を見ると、何かを決意したように俺の後ろからにじり出てきて、小柄な竜に恐る恐る手を伸ばして頭を撫でると、小柄な竜が「ニャ~」と鳴いた。


 ニャ~!?

 竜の鳴声ってニャ~なのか!?


「ほう、珍しいな。竜は恋の季節以外はほとんど鳴かないんだが、若い個体のせいかな」


 ダナン講師が言う。

 なにっ? 恋の季節!?


「何にせよ、三人とも合格だな。次に行こうか」


 二足竜の次は馬だった。

 良かった、見覚えのある動物だ。

 ひさびさに普通という言葉が戻ってきた気がする。

 もとの現実世界にも居て、“七国”のゲーム世界には居なかった馬が、この現実には居る。

 この世界が現実だというあかしのように見える馬だ。

 いや、囲まれイベントで思い出す暇がなかったが、四足蜥蜴(トカゲ)も居なかったな、ゲームには。

 ゲームの制作陣が、四足歩行の描画を嫌がったという…げふんげふん。


 俺たち三名は、移動の途中で待つ事になり、二足竜のときと同様に、残りの五名が先に挑戦する事になった。

 しばらく待っていると、今度はハンナが迎えに来た。


「首尾はどうだった?」

「あたしらは問題ないよ。村でも家畜に触れていたから馴れてるしね。他は女の子三人が合格、男の子はダメだった」

「そうなのか。そう言えば昨日もルーシーさんが連れてた四足トカゲ(はちゅうるい)に普通に触れてたな」

「乗せてもらうときの挨拶みたいなものかな、あれは。

 世話になるときはやってるよ、もう癖みたいなものだから。

 敵意や隔意がある人がやると逆効果だけどね」


 なるほど、挨拶か。

 すぐにダナン講師と受講生の面々が見えてくる。


「来たな。先ほどと同じ要領でやってくれ」

「分かりました」「「はい」」


 馬を相手に、先ほどと同じ光景が繰り広げられた。

 いや、同じじゃないな。月那るなが自分から触りに行っている。

 動物は好きだって言ってたからな。先ほどよりもずっと良い光景だ。

 今回は三人で(●●●)、一列に横並びをした馬たちをでて回った。



 次が最後の試験だそうだ。

 走鳥そうちょう

 “七国ゲーム”では巨大なひよこに乗って拠点間を移動したものだな。





終わらない(汗)


ハンナやリディアは実家で家畜の世話に馴れているのでさわれました

騎獣が逃げてくれればまだいですが、警戒して蹴ったりはね飛ばしたり噛みついたりすることもあります

馴れていない人は、迂闊うかつに知らない動物に近寄らない方が吉



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