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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第三章 遭難しましょう?
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10 ごめんなさい         


「みんな無事か?」


 全員いるのは分かっているが、生存確認をする。


「無事です」

「無事だよ」

「無事……」

「ぶ、じ」

何処どこなんだ? ここは……。倒したゴブリンが消えたってことは、ダンジョンか?」


 七国ゲームでは倒した魔獣はすべて消え、“収穫ハーベスト”としてドロップアイテムが手に入った。

 ウィア(この)世界では、地上で倒した魔獣は魔石を含んだ屍骸しがいを残し、ダンジョンで倒した魔獣は魔石だけを残して屍骸が消える。

 地上での“収穫”は元の世界の現実と変わらないが、ダンジョンの中はゲームの中のようだ。

 ハンナたちを始めとしたウィア(こちらの)世界の人々にとっては、それが昔からの自然な状態である。

 だから誰もその事に違和感を感じていない事が、俺と月那ルナにとって違和感の原因になっていた。


「ダンジョン・ヤグトの第五層……だそうです」


 地図作成マッピングスキルを見たらしい月那るなが、そう答えた。


「なんだって!? あ、本当だ…」


 開いていた自分の地図作成マッピングスキルでも、そう頁表題ページタイトルが付いているのが確認できた。

 たしかにダンジョン・ヤグトの第五層だ。

 がたいな。地図作成マッピングスキル様様さまさまだ。迷子知らずだよな。


「シルィー、第五層の地図を出してくれ」

「はい」


 間髪を入れずにシルィーが地図を取り出してくれる。

 それをみんなに見せながら、


「俺たちは今ここにいるらしい」

「岩の中なの!?」


 俺たちが今いるのは、環状の大空間の中心ににある太い岩の柱の中、つまりドーナツの中心に空いた、穴の部分に居ると言うことらしい。


「そう、岩壁いわかべの中だ。どうしてこうなったのか、理由は分からないが、方法はたぶん転移だろうな」

「転移って、空属性魔術上位の?」


 リディアが話に乗ってきた。


「そうだ。

 だがそうだとすると、ここで長々と話しているのは得策じゃない。どんな条件でまた転移が発動するのか、発動しないのかも分からないんだ。

 だからこの部屋の周囲を急いで調べて、まずは部屋から移動しよう」


 俺たちは横一列になって、ブーメランや矢やゴブリンの魔石を拾い集めた。

 これまでダンジョンに潜っても一度も遭遇することがなかったのに、こんなところで初遭遇とはね。



 落ちている魔石やブーメラン、矢を拾い集めながら、部屋の外周に沿って歩いて行く。

 大外周おおそとまわりなのは“地図作成マッピング”スキルの“踏破済み領域表示”で、なにか情報が取れることを期待しての行動だ。

 全員一緒なのは、とうぜん分断対策だ。

 個別に転移されてバラバラにされたら防ぎようがないが、一緒にいなかったために離れた場所へ飛ばされました。なんていう状況は、回避したい。


 調べた結果、ここが外で様子を探っていたあの岩棚の広場と同じ形をしていることが分かった。

 例の細道もあったので、後でその先を確認してみよう。


 俺たちがゴブリンと戦った広場の隅には奥へ通じる道があり、その先は床に“サークル”が描かれた小部屋があった。

 ゲーム的に言えば、ここが第一層へもどるための転移室に見える。


 その小部屋には、人工物としか見えない両開きの扉があったが、切り立った壁の三メートルほどの高さに付いていたので、そこを調べるのは後回しにした。


 “踏破済み領域表示”によると、扉の向こうも部屋になっているのが見て取れる。

 これはひょっとしてあの部屋かな?

 ホントに便利だな、“地図作成マッピング”スキル。


 地上の岩棚広場にはなかったこの場所は、五層広場の転移範囲外ではないだろうか。

 そんな気がしたので、ここで一旦休憩を取ることにした。

 人は緊張を保ったままいつまでも動き続けられるように出来ていないのだ。



    †



「ごめんなさい」


 小部屋で一息ついたところで、リディアがそう言ってきた。


 月那るなが、自作した保存食を配り始める。

 見た目は一般的なカロリーバーのようだが、軍用糧食レーションみたいなカロリーたっぷりの代物だ。

 味は結構いける。

 よく誤解されるが、民生品である本家のカロリーバーは、カロリーしかないような食事をったときのための補助食品だ。それ自体のカロリーは大したことはなく、繊維質以外は結構いろいろ補給できる。


「はい。リディアさんもどうぞ」

「そうだな。落ち込んでいるときに空腹だとロクな事を考えない。まずは食べよう。話はそれから聞くよ」


 そう言ってかじり始めると、リディアも口を付け、他のみんなも食べ始めた。



    †



「ごめんなさい」


 全員が軽く腹を満たして一息ついたところで、再びリディアがそう言った。

 だがその後が続かない。


 シーンとしたのでまわりを見回してみると、三人ともこっちを見ている。

 え? 俺が話すの?

 “白き朝露”のリーダーであるハンナを見ると、うん、と頷いてきた。

 おいおい、まあいいか。


「………少し違うんだが、リディアに言葉を贈ろう。


 ──『好奇心は猫をも殺す』──


 俺の故郷(の世界)のことわざで、『過ぎた好奇心は九つの命を持つ猫でさえ身を滅ぼす』っていう意味なんだが、もっと簡単に言えば、『相手をめていると痛い目を見る』ってところかな。

 全員生きてたからまあ良かったよ。

 魔獣も罠も、こっちの都合なんて考えてくれない。

 次はもう少し上手うまくやってくれ。少しだけな。

 少しだけ(●●●●)だぞ」


 大事なことなので二度言った。

 このくらいで良いか。


「わたし、ここにいていいの?」

「誰も追い出そうなんて思ってないよ」


 やっぱりそう簡単には納得しないか。


「というかそう言うのは“白き朝露”リーダーのハンナに訊いてくれ。

 だいたいここでする話しじゃないだろう?

『TPO』を考えろって。

 ああ、こっちの方が合ってるな」

「てぃーぴーおー?」

「“タイム(time)プレース(place)オケーション(occasion)”、“時”と“場所”と“場合”だ」


「……わかったタツヤ。それじゃあ続きは帰ってからね」

「ああ、ちゃんと帰るぞ」


 少し考え込んだ様子だったリディアがそう言った。

 他の三人を見ると、三人ともうんうんと頷いている。

 あれ? ひょっとして俺が面倒見るの?

 もしもし?



    †



 たしかに時間を無駄に出来る状況ではないので、俺も頭を切り替える。


「俺と月那るなが別の世界から流されてきたことは前に話したろう。その直前にやっていたのが、ウィア(ここ)とそっくりな世界の写しで、冒険者になってこのダンジョン・ヤグトでレベル上げする、という遊戯ゲームだったんだ。

 そこにはあったんだよ。“ボス部屋”と“転移門ワープポータル”が」

「ボス部屋? 転移門ワープポータル?」


 お、いつものリディアらしい食い付きだ。

 うまく気持ちを棚上げにできたかな。

 とは言え、ボス部屋も転移門ワープポータルも、見たことがなければ想像はつかないよな。


「実際のダンジョン・ヤグトだと、第五層の攻略が進むと歩いて第六層へ繋がる斜路トンネルを行くだろう?」

「そうね」

遊戯ゲームの場合は、五層ごとのその場所に門があって、そこを守っている“ボス”と呼ばれる上位個体を倒して門を越えるんだ。」

「それじゃあ帰りもそのボスを倒して通るの?」


 いい質問だな。


「いや、ボスを倒すと奥の部屋へ繋がる扉が開くんだが、そこにあるんだよ。

 次の層へ降りる通路と、入口近くへ“転移できるポータル”が」

「つまり、帰りは転移で一飛ひととびで帰れるって事!?」

「そうだ。しかも一度通れば次に来たときにはその場所まで転移ワープで行けるようになる」

「なによそれ! めちゃめちゃ便利じゃないの」

「そうなんだ。

 こっちの世界のダンジョンに入って何が難儀なんぎだったかって、転移門ワープポータルが無いんで、深い層へ行こうとするとダンジョン内で泊まらないといけないことだったんだ。

 食事は質素。風呂は論外。収納ストレージがある俺たちはまだいいが、無ければ水も食料も全部背負っていかなくてはいけない。ダンジョン内の魔獣は肉を残さないからね。

 だから目的地の手前で野営基地ベースキャンプを作るために、戦闘をしない運搬人ポーターまで必要になる。

 はっきり言って、中小パーティーではやってられん」


 みんなうんうんとうなづいている。

 女の子はとくに切実だよね。


「俺がダンジョン・ヤグトに潜った目的は、近場での効率的なレベル上げのためなんだが、もう一つ。その“ボス部屋”と“転移門ワープポータル”の確認をしたかったんだよ。だから第五層までは行きたかった。遊戯ゲームで有ったボス部屋や転移門ワープポータルが、隠れていないのか探索したかったんだ」

「それがどういうわけか、裏口からお邪魔することになってしまったという訳ね」

「そういうことだ」





 さようならADSL。

 そこそこ早くて、リーズナブルで、なにより停電でも電話が使えるのが気に入っていました。


 ADSLそのものが無くなるのに先んじて、プロバイダのADSL接続が、昨日で消えました。

 次のネット環境はまだ構築されておらず(申し込みは済んでいる)、本日(2021/10/01)は仮設環境から投稿しています。

 バタバタの一つですね。




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