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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第二章 冒険者パーティー始めました
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18 事情聴取     sideルーシー


 お昼が近づいた頃、訓練場の方から歓声かんせいやら拍手はくしゅやらが聞こえてきた。


「………、なんだかにぎやかね」

「立ち合いで、Dランクパーティーの“轟雷ごうらい”を三人抜きしそうな、両手剣の女の人がいるみたいですよ」


 隣で受付けをしている、ラピスがそう教えてくれた。

 新人の彼女は兎族ラビットピープルで、とても耳が良い。

 おまけに特技、つまり特殊技能スペシャルスキル持ちであるため、私に預けられている。


「立ち合いで三人抜き…?、両手剣の女の子…?」

「はい」


 なにか嫌な予感がした。


 今日、屋内訓練場では“白き朝露”と“またり”が訓練している筈だ。

 いつもおっとりしたふうのルナさんが、両手剣を抱えてふわふわ微笑ほほえんでいる姿が浮かんだけど……、気のせいであって欲しいわね。


「ちょっと様子を見てくるわね」


 そう言って屋内訓練場へやって来ると、“轟雷ごうらい”の両手剣使いが模擬剣でルナさんにりかかり、割って入ったタツヤさんが盾ではじき飛ばし、飛ばされた模擬剣が天井のはりに突き刺さった(!?)ところだった。

 なんで模擬剣が刺さるのよ!

 木造もくぞうの建物とはいえ、刺さるんじゃ模擬剣の意味無いじゃない!?


 この出来事イベントによって、周囲の喧噪けんそうは一段と大きくなった。


 あれどうやって取るんだろう?

 はりに突き刺さった両手剣を見上げながらそう思う。

 いえ、私の技能スキルを使えば取れるんだけど、今は騒ぎがさらに大きくなりそうでちょっと、スカートだしね…。

 人気ひとけがなくなってから私が取るかと思っていると、“白き朝露あさつゆ代表リーダーのハンナさんが、それを弓でねらいだした。

 刺さった模擬剣を弓で射落いおとそうとしているらしい。


 先端に柔らかいやじりが付いた模擬戦用の矢なので、この矢まで刺さって取れないものが増える! なんて心配はないけど…ないわよね? 打ち上げで天井てんじょうさった剣を射落いおとすのはむずかしいんじゃないかな? などと考えながら見ている。

 びゅん、と音をたてて飛んだ模擬矢は、刺さった両手模擬剣のつか見事みごと当たって、剣を動かした。


 上手うまいわねぇ。

 今でも一流と言える腕だから、もう少し体が出来できてくれば、射手しゃしゅとして超一流になりそうだ。


 それはともかくとして、この騒ぎの顛末てんまつを聞かせてもらいましょうか。




「つまり轟雷ごうらいの三人がルナさんの訓練に付き合ってくれて、ルナさんが三人抜きした上、めでたく両手剣の使い方をおぼえ、そのうえ魔術剣に開眼したに、鉄の盾を切り裂いた。と、こういう話ですか?」


 冒険者になって一週間もたたない人が“風の魔術剣”を使えるようになったですって!?

 冒険者登録した日が初の実戦(じっせんデビュー)と言っていたけど、剣の稽古けいこはずっと続けていたとかかしら……?

 違うわね、Dランク昇級試験のときの立ち回りは、速かったけど明らかに素人しろうとつたなさだった。それこそ立ち回りは、なり立てのEランク冒険者相応(そうおう)だったと思う。

 それでもルクスに勝っちゃったのよね。

 まったくなんの冗談じょうだんよ!?

 魔術剣についてはシルィーさんがいるから、教えてもらった可能性はあるけど、それにしても三日やそこらで覚えられるものじゃないはず。


 これでタツヤさん共々(ともども)レベル7なのよね。

 タツヤさんもノルドに勝っているし、レベルが目安になってない!

 レベル(イコール)強さとは限らないけど、目安として有効なのは長い歴史が証明している。

 ……その筈なのだけど、よく分からなくなってきたわ……。


 ああ、分からないっ!


「さすがルーシーさん。見事な状況把握ですね」

「おだてても何も出ないわよ」


 そう言って、タツヤさんにわった視線を向けると、


「いやいや本心ですよ。それで壊した盾を弁済するつもりなんですが、鉄の盾ってどれくらいが相場なんでしょうか。……」


 と返してきた。


達弥たつやさん、それはわたしが壊したのでわたしが出しますよ」

「いや、“またり”としての訓練中に起きた事だしね。今回はパーティー口座から出そう」


 こちらはこちらで、言い分が至極しごくとうだ。

 ハイランクパーティーか優良派閥エクセレントクラン代表リーダーみたいな鷹揚おうようさなのよね。

 育ちがいいのかしら?


「そんな事言ってると、ぼられるわよ」

「よくあるんですか?」

「たまに話は聞くわね。“轟雷ごうらい”は悪質な方じゃないと思うけど。それで相場だけど、ふつうの鉄の盾なら金貨2枚から5枚といったところね。だけどあそこのは鉄芯が入った特注品だから、金貨4枚から9枚くらいってことになるんじゃないかしら」

「鉄芯が伸びて杭になってましたからね。でもまあそれならあの盾が二~三枚買える金額が共有口座にあるわけですから、問題なさそうですね」

「そんなに鷹揚おうような事を言ってると、いつか根刮ねこそむしり取られちゃうわよ」

「心配してくれるんですか、ルーシーさん! それではそんなルーシーさんに耳寄りな情報を」

「なっ!」

「いま話していた損耗そんもう品の弁済でのぼったくりを防ぐ方法なんですが……」

「ちょっ!」



 タツヤさんが言ってきたのは、簡単に言えば“売られている武具防具を目録カタログ化して、その情報を共有(●●)する”ということだった。


 よほど大きな工房でなければ、武具の製作はしても販売は商会カンパニー経由になる。

 そこに集まる武具防具の“種別”“装備レベル”“素材”“出来”“製作者”“値付け”を一覧いちらんにまとめて、店舗てんぽや資料室で閲覧えつらんできるようにしておく。

 そしてそれらを“価格帯かかくたい”という、いくつかのわくにまとめる。

 粗悪な品に高い“値付け”をすれば客が離れるし、良品に安過ぎる“値付け”をすれば、買い手が集中して販売数がかせげる代わりに、生産が間に合わなくなったり材料が不足して、品薄でけっきょく売値うりねが上がる。

 結果、性能に見合った程好ほどよい価格に落ち着いていく。

 つまり、“価格帯かかくたい”の適度な位置づけに収まるということだ。


 材料価格の割合が高い“木製ウッド武器アームズ”から、“カッパー”“青銅ブロンズ”“アイアン”“スチール”と、製作難度が上がるとともに威力も大きくなる武装を、いくつかの範疇カテゴリーにまとめ、使用者の“レベル”と対応させておけば、“冒険者ランク相応そうおうの武具防具”というものが分かるようになる。

 これは大きい。


 何が大きと言って、若手の冒険者が普通の(●●●)武器の特徴とくちょう相場そうばが分かるようになる事が大きい。

 目端めはしく子なら、同じ価格帯の中からなるべく良いものを選ぶだろう。

 目の利かない子でも、同じ価格帯の中から選べば大きな外れ(ハズレ)はない。

 そして冒険者ランクが上ったときの、買い換え計画が立てやすくなる。

 一方、優秀な工房がさかえる反面、外れ品を多く出す工房は評判ランクを下げて、値段も下がる。

 淘汰とうたされていくわけだ。


 評価に過剰反応しない(させない)よう気をつける必要はあるけど、世に出回る製品を一つひとつすべて自分の目で見て判断するわけにいかない以上、この方法がもつ利点メリットは大きい。


 私の片刃剣の場合、素材は鉄/鋼混成(ハイブリッド)のBランク区分だけど、製作難度がやたらと高くて、このあたりでは作れる人も直せる人もいないため、希少性でAランクに分けられるそうだ。

 前に技能スキル持ちに“鑑定かんてい”してもらったところ、そんな結果が出た。


 このときの“鑑定”は、所有者登録のために行なった。

 精霊銀ミスリル金剛アダマントなどのさらに希少な素材を用いた武具の場合は、“鑑定”をしておくのが一般的だからだ。

 一度鑑定をかけておけば、そこここにある“身上鑑定器ステータスチェッカー”で鑑定内容を見られるし、所有者履歴(りれき)も残せるようになる。


 タツヤさんの提案は、その鑑定で得られるランク付けを、個々の品ではなく“価格帯”というわくにまとめてしまおうというもので、中級ミドルクラス以下の量産品であれば、似たような事はそれぞれの工房でやっているため、実現性は高いだろう。


 その上で、まだ揉め事(トラブル)が起こるようなら、どこかの組合ギルドが立ち合いで、個別に“鑑定かんてい”を依頼すればいい。

 技能スキルによる“鑑定”に支払しはらわれる報酬ほうしゅうは、“はがね”の武器が買えるほど高額なので、鑑定によって詐称さしょうが明らかになったときは、それも科料かりょうに上乗せする仕組みにしておけば、犯罪の抑止力にもなりそうだ。


 効果はありそうだし、既にある“鑑定”を骨組ベアボーンにできるから分かりやすいのだけど、この方法って巻き込む範囲が広いほど効果が上がるんじゃないの?

 タルサ市だけより王都圏全体、王都圏だけより国中、一国よりも多国間で………。



「またいそがしくなる!」




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