17 魔石買取り sideルーシー
「ただいま戻りました。ダンジョン・ヤグトの魔石買い取りをお願いします」
「お帰りなさい。ご無事の帰還をお喜び致します。で、どうだった? 初ダンジョンの感想は」
一日経ち日も沈みかける頃、ダンジョン・ヤグトの初攻略から戻って帰還報告をする“白き朝露”のハンナさん、リディアさん、シルィーさん。そして“またり”の
タツヤさんとルナさん。
五人とも怪我をした様子はない。
無事に戻れて何よりだ。
「第三層まで覗いてきましたけど、神経が磨り減りますね。戦闘そのものはさほどでもなかったんですが、周りの雰囲気とか気配りがね。ちょっと毎日行きたい場所じゃない」
「薄暗いし、風は吹かないし、魔獣はいっぱいいるし、まあそのおかげでいい稼ぎにはなったみたいだけどね」
タツヤさんが言い、ハンナさんが補足する。
浅域の第三層までとはいえ、ダンジョンの初攻略となれば、それなりの圧を感じたようだ。
初々しいわね。
「明日はゆっくり休むのね。休むのも冒険者の仕事のうちだから。それで収穫は?」
「これが第一層の分」
そう言って、収納持ちの三人が魔石を出してくる。
大きめのものが、結構な数混じっている。
「あら、だいぶ大きいのがあるわね。大収穫じゃないの」
「第二層分」
「……え……」
「第三層分」
出てきた魔石が全部で九十個。
その半数以上が特大で、残りのほとんども大玉の魔石だった。
この人たち、狩りをした層の割に魔石のサイズが大きいことを見せたくて、わざと一層分ずつ出したわね。
「……………ちょっと何よこれ。二層分も普通より大きなのが半数以上だし、三層に至ってはほとんど全部が特大じゃないの。それにこの数、たかだか2鐘ばかり潜ってきたパーティーが持ってくる数じゃないでしょう」
「そのことで報告があるんですよ」
聞いた報告は衝撃だった。
森精族の探知魔術、“風の探知”!?
ダンジョンで採れる魔石を大きく育てる方法!?
しかも後者は、昨日ギルドの資料室で見た文献から思い付いたので、試してみたのだという!
どちらも公開すれば、情報提供に対する褒賞が発生するわね。
どちらも使用条件が厳しめだけど、それでも有用性は高い。
森精族の探知魔術は、どこかに話を通しておかないと少し心配かな……。
いずれにしてもこの件は、ギルド長へ回して扱いを決めてもらいましょう。
五人は、魔石の買取り分を精算し、懐を温かくして帰って行った。
めでたしめでたし。
†
交代間近になって、王都支部から連絡が届いた。
“またり”の二人の【状態】“流され人”、【技能】“遮断”と“流体操作”について、それと森精族の探知魔術の扱いについて問い合わせてあった返答だ。
家に帰れば五人とも居るはずなので、持って帰ることにしよう。
彼らが公私をきっちり分ける人なら、明日以降ギルドに顔を出してもらったときに話をさせてもらえば良いわね…。
「ただいま。あら、やってるわね」
「お帰りなさい。お疲れさまでした、ルーシーさん」
空いていたタツヤさんの隣へ座って、さっそく話を始める。
「いくつか報告があるのだけど、ここで話して良い? それとも日を改めてギルドで話す?」
「短いものならここで。長くなるようなら明日は訓練場を使わせてもらいにギルドへ行くので、その時にでも、でどうですか?」
他のみんなも頷いているので、ここで食事をしながら話してしまおう。
「わかった。じゃあまずはシルィーさんの“風の探知”ね。この件を冒険者組合王都支部へ計ってみたら、広めるならセル族の族長へ話を通しておきたいという事だったの。もちろんシルィーさんの了承が得られたらという事になるけど。どうかしら?」
「おばあ、さまに? ……構わない」
よし、ひとつ片付いた。
「わかったわ。次はタツヤさんとルナさんの【技能】と【状態】の話なんだけど」
「構いませんよ。彼女たちにも話はしてありますから」
「ん。じゃあまずルナさんの“流体操作”技能ね。過去に一例あって、水の魔術と風の魔術を合わせたような技能だったようね。詳細は取り寄せ中よ」
身上鑑定器に表われる項目だけなら、王都支部ですぐ検索できるけど、その詳細な内容となると、実際の書類をやり取りする必要があるから時間かかる。
まあ仕方ないわね。
「タツヤさんの“遮断”には前例がなかったわ。独自技能ね。ただ印象だけど、盾職に関係しているんじゃないかって気はするのよ。その取り立てて逞しいという感じでもない体格で、盾職として一人前に働けているんでしょう? Dランク試験の時に壊れた盾も、ふつうはあんな風に壊れる寸前の状態で、ノルドの重い攻撃を受けたり、盾で攻撃なんてできるものじゃないの。じっさい試験場に出るときの盾には、壊れたところも壊れそうな様子もなかったわけだしね」
タツヤさんって、身長は私とさして変わらないし、線が細くて周囲の男達と比べると繊細な感じだものね。
それにしても、“独自技能”に“希少技能”か。
“収納”と“地図作成”も加えると、なんて恵まれた人たちだろう。
職業の選択肢はずいぶん多いわね。
「最後に“流され人”っていう状態だけど、これは前例があったわ。 転移で飛ばされた人に付くそうよ。しかも海を渡る必要があるみたい」
「海を渡る?」
「そう。転移で別の大陸から来たとか、すぐ隣の島へ飛ばされた場合でも。ともかく周囲から隔絶された場所へ“転移させられた人”に付く称号らしいのよ。心当たりはある?」
「あります。ありますけど、これはちょっと一言では説明ができませんね」
「そう。それじゃあこの話はまた明日ね」
そして翌日。
「まいったわね」
あ、三回目だ。
昨日の夕食刻に話が出た“流され人”の【状態】についての心当たり。それを今、タツヤさんから説明されたのだけど、正直どう受け取ったらいいのか判断しかねて頭を抱えていた。
この地とそっくりな遊戯世界? そこで遊んでいたタツヤさんとルナさん。魔獣に倒され気を失って、意識を取り戻したらバルニエ大草原の端っこだった?
確かに“流され人”の条件に叶っていそうだし、あの二人の異常さは際立っているのだけど。
これだけでも頭が痛いのに、石鹸の作り方ですって!?
そりゃあ石鹸が安く手に入ればありがたいけど、基本の材料だけ教えて自分で作った事はないって、酷くない?
商業ギルドに話を持っていって試させようか…。
う─────ん。
考えるの止め!
昼から出てくる組合長を焚きつけよう。
モノになれば利益は大きいわ。それで商業ギルドを釣る方向で、話を振ろう!
決めた!
お昼が近づいた頃、訓練場の方向から歓声やら拍手やらが聞こえてきた。
「………、何か騒がしいわね」
「立ち合いでDランクパーティーの“轟雷”を、三人抜きしそうな両手剣の女の子がいるみたいですよ」
隣で受付けをしている、新人のラピスがそう教えてくれた。
彼女は兎族で、とても耳が良い。
おまけに特技、つまり特殊技能持ちの元冒険者であるため、私に預けられている。
「立ち合いで三人抜き…?、両手剣の女の子…?」
「はい」
嫌な予感がした。
ルーシーさんが我が儘で (つД`)。
“レビュー”を頂きありがとうございました。
感想、メッセージ、評価、ブクマ登録も同じく、ありがとうございました。
感想まではひょっとしたら? と思っていましたが、レビューを書いていただけるとは考えてもいませんでしたので、素直に驚かされました。
うっかり交流など始めてしまうと、設定やら裏話をぺらぺら話してしまう自覚があるので、これまでお返事等はしていませんでしたが、どれも有りがたく拝見させていただいています。
この場を借りて、お礼申し上げます。
(真幸《みゆき》編 41 へ続きますw)




