表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第二章 冒険者パーティー始めました
37/245

13           魔術   


 冒険者ギルド、タルサ支部へ戻った俺たちは、予約していた射術訓練場へ入った。

 体を動かしたり模擬剣で訓練するだけなら、午前中使っていた大訓練場や屋外訓練場を区割りして使うのが一般的なのだが、どうしても実剣で訓練したい場合や、訓練を他者に見られたくない向きには小訓練場があり、弓術や魔術を訓練したい場合なら射術訓練場が使える。


 小訓練場と射術訓練場は有料だ。

 だが射術訓練場の場合、弓士か術士が使うなら無料だし予約もできる。それ以外の利用だと有料な上、その日空いていれば使える。つまり前もって予約はできないという制限が付くそうだ。

 施設の目的外使用には対価と制限が発生する、射術訓練場は射手しゃしゅ優先ということだね。


 前衛職が弓の練習をしたいと嘘をついて射術訓練場を小訓練場代わりに押さえる場合もあるのだが、ギルドの本館上階通路から丸見えなので、すぐにバレるという話しだし、追加の罰則ペナルティーも発生するという。

 俺たちの場合は、弓士も術士もいるので大手を振って使えるわけだ。

 月那るな石弓ボウガンも射撃武器だしね。



 射術訓練場は、射撃シューティグレーンが二つと、もう二つレーンを作れそうな空き地を、返しのついたへいで囲み、人の出入りは射場いば側の一箇所に限ったうえ、簡単な鍵が掛けられるように区画されていた。

 入場して顔を出した途端に矢が飛んできたなんてことにならないよう考えられているわけだ。

 細長い敷地の奥には身長よりも高い土盛りがあり、その手前にたわらのような形をした的が置かれ、両方を囲う簡単な小屋が築かれている。

 二つのレーンと空き地とを区切る部分にもへいがあり、その塀に二十メートルほどの間隔で三つの印が付けられていて、さらに伸びる塀は二十メートル手前まで伸びて終わっていた。

 つまり敷地の入口近くまで下がって使えば、百メートルほどの距離を射ることができるという、ずいぶんと立派な射場しゃじょうだった。



「じゃあ始めは予定通りに、俺と月那るなの魔術適性の確認から始めようか」

「えー、立ち会いはー?」


 最初の声をかけると、リディアがそんな事を言ってきた。

 なんかいつもより子供っぽくないか?


「立ち会いはするさ。適性確認が終わったらね。

 もともとそのためにこの訓練場を借りたんだから、本題は済ませないと。

 暖機運転の意味もあるしね」

暖機運転だんきうんてん?」

「前衛職なんかが言うと思うんだがな。

 冬の寒い朝とか、筋肉が冷えて硬くなっているときに、急に激しい運動をすると怪我の原因になるから、体操なんかでゆっくり体を動かして、体が温まってから訓練を始めたりしないか?」

「ああ、するよ。冬に近い時期の山で野宿したときなんか、朝ちゃんと動けるようになるまで1しょう(3時間)くらいかかるときがあるから。

 体が冷えたまま無理に動くと足や手首をひねったりしがちだよね」


 と、ハンナが狩りでの実体験をまじえて答えてきた。


「初めての時は優しくしてねってやつ? あたっ!」


 リディアが妙にニヤニヤした顔で混ぜっ返してくるので、デコピンして遮った。

 矯正きょうせいが必要なときに即時(●●)は大切だ。時間が経ってからやさしくさとしても、効果は限定的になる。

 もちろん暴力は駄目だし、デコピンにしたって繰り返し使うようでは駄目駄目だけどね。


「そういう下ネタに走るのは、自分の部屋か同性の気心の知れた相手しかいない時に限っておこうな」

「いいじゃないの、身内しかいないんだし」


 おでこを押さえながらそんな風に言い返してくる。


「身内でも俺は同性じゃないよ。それに、たぶん昇級していくと、どこかでそう言う品性みたいなものも昇級ランクアップの要件になってくるぞ」

「うそっ! 強くなっても駄目なの?」

「圧倒的に強くて、周りに危害を及ぼさない程度の分別ふんべつがあるなら、そういうのもありかも知れないけど、周りにいい顔はされないだろうな。それにリディアはそう言う方向性じゃないだろ?」

「うん」

「ランクが上がって護衛の依頼を受けたりすると、相手が大商人や貴族だったりする事も出てくるだろう? 直接話しをする事はないかもしれないが、ギルドもその辺りをわきまえない奴を、そういう仕事を受けられるランクに上げないんじゃないかな」

「かな? なんだよね」

「まあな。俺だって知っていることを解説してるって訳じゃないから確実じゃないさ。でも、俺ならそうするし、そう大きく外しちゃいないと思うぞ」


 ゲームや小説、および社会経験から来た知識だけど、まあそうは間違っていないだろう。


「気になるなら、身近に元Bランクの同性で業界に詳しい人が居るんだから、相談してみりゃいいじゃないか。品よりも楽しさが優先だっていうなら、昇級ランクアップはここまでって決める選択肢だってあるだろうし」

「ルーシーか。…うん、そうだね。いちど話しを聞いてみるよ」


 よし、ここまで来たら、あとはルーシーさんに任せよう。

 そのうちご馳走しますからよろしくお願いします。


「部屋でなら、いいんだよね?」

「は?」


 急になんだ?


「自分の部屋でなら少々はめを外して楽しんでもいいんだよね?」

「ま、まあ。周りにうるさくしないなら、いい、んじゃないか…な…」


 あ、しまった。

 いまリディアと月那るな寝台ベッドを交換していて、昨夜から俺の部屋でリディアも寝起きしてるんだった。

 朝から色々あったんですっかり忘れていた。

 そうすると、リディアが妙に下ネタ寄りなのは、甘えてるのか!? いろいろ知識がある割りに、男とは初めてだったようだし。


「よし。今夜はあれこれ準備して…」


 リディアが不穏な事を口走っている。


「さて、本当にそろそろ魔術の適性を調べないとな…」


「逃げたー」というリディアの声を背中に聞きながら、シルィーの方へ向かうと、月那るなとシルィーが体を密着させて抱き合っていた。


 魔術の訓練はどこへ行ったーっ!



    †



 いま俺は、シルィーに背中から抱きしめられている。

 よろいは除装しているので、背中に柔らかいものが当たってとても気持ちがよい。


 シルィーは性的に未分化という話だったので、長身ツルペタの幼児体型だとばかり思っていたんだが、あにはからんや、胸がすこし膨らみかけた、人で言えば十一~十二(じゅういちに)歳ころの女の子の体だった。

 なんでそんな微妙な事を知ってるのかというと、冬以外の時期、みゆきが風呂上がりに裸ん坊で涼んでいたせいだ。

 それはみゆきが、小学六年生になる直前に母親がめさせるまで続いた。

 俺が二十歳はたちぐらいの頃の話なので、微妙に気まずかったのを憶えている。

 いまにして思えばみゆきの奴、そんな俺の反応を面白がっていたんじゃ…


「タツヤ、集中、して」

「ハイ」


 なんでそんな事になっているかというと、これが魔力の操作訓練だったりする。


 シルィーが初級魔術“風の弾丸(ウィンドブレット)”を放つのに必要な魔力操作を行う。俺がその魔力を「感知」し、同じように「操作」し、体内で廻した魔力を短剣ダガーを投げるように掌先から「放つ」

「感知」も「操作」も問題なく出来ているのだが、なぜか「放つ」が出来ない。


 先ほど月那るなとシルィーが抱き合っていたのも、この訓練をしていたからだった。


 そちらの成果はというと、月那はあっさり“風の弾丸(ウィンドブリット)”を使えるようになった。そのうえ同じ要領だからと“水弾(ウォーターブリット)”と“石弾(ストーンブリット)”をもモノにしたうえ、“風の散弾(ウィンドショット)”まで使って見せた。

火弾ファイヤーブリット”は苦手なようで“着火ファイヤー”に留まっている。

 シルィーが火属性を扱えないせいかもしれないな。

 いずれにせよ、初日でこの成果は大したものだ。本気で術士に転向してもいいレベルだそうである。

 月那るなの場合はスキル併用でやってる訳なんだが。


 合同パーティーの前衛が俺一人になってしまうのでやや困りものだが、もともとの志望はあちらだったからな。

 まあそれも本人の意向を確認してからの話か。


 その月那るなは、リディアやハンナと“視覚強化”に挑戦している。

 そして月那と交代した俺は、進捗しんちょくが見られず苦労しているというわけだ。

 しおしお~。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ