6 買取り 後編
「あ、レベルが上がってる」
そう言ったのはリディアだった。口座作成の手続きで冒険者証を鑑定器に繋いだときに表示されたレベルが、一つ上がってレベル15になっていたそうだ。
ハンナも同様に一つ上がってレベル16になった。
「タツヤさんたちも確認しますか?」
「俺は二つ上がってレベル7になっている筈ですよ」
ルーシーさんが聞いてきたので、俺はそう答えて、自分の冒険者証を出した。
「ほんとだ。なんで分かったのかしら?」
「収納の装備欄にあるレベル7装備が装着可能になっていたんで分かりました。ほら」
そう言って防具一式と盾と片手剣も、まとめてレベル7装備に変更した。
「わっ、化けた」
「収納からの装備除装と着装を、継目なしにしただけですよ」
「器用なことをするわね」
「なんでダンジョンの中で変えなかったの?」と、これはリディアだ。
「気付いたのが3層からの帰り道だったからね。もう次の機会でいいと思ったんだよ。ファンファーレは鳴ってくれないからなぁ」
「ふぁんふぁーれ?」
「あたらしいお洋服…」
月那が妙な事を言っている。鎧だから、装備だからね。
「やっと防具の性能が月那に一歩近づいただけだよ。月那も両手剣と石弓は新しくできるんじゃないか?」
そう言うと、月那の背中の両手剣と腰の石弓が新しくなった。月那も問題なくレベル7に上がっていたようだ。
「でもお洋服は同じ…」
「防具の性能はまだそっちの方が上だからね。それともこっちのと交換する?」
「いい、これはタツヤさんが私にって(貸して)くれたものだから」
「女心が分かってないわね」
「なんで自分が着られないレベルの装備まで持ってるのかな」
「と言うかお互いに装備が交換できるって、寸法自動調整の機能付与付き高級品ですか?!」
「2レベル、も、上がった」
なんか総突っ込みを受けたぞ。
寸法のことはすっかり頭から抜けてたな。ゲームだと男女も体の大きさもお構いなしだから、そういうものだと思い込んでいた。というか寸法自動調整の機能付与なんてものがあるんだな。
とてもじゃないが、レベル80装備まで良いもの持ってます。なんて言える雰囲気じゃない。
よし、話を逸らそう。
「シルィー、2レベルも上がったのか?」
「違う、上がった、のは、タツヤ、とルナ。ボク、は一つも、上がら、なかった」
「レ、レベルが低いと、同じ魔獣を倒しても、レベルの上がりが早いよね」
「うん、だけど、そのレベルで、あの強さ、はヘン」
藪を突いただけでした。
通貨の事だが、大きい方から
白金貨
大金貨
金貨
大銀貨
銀貨
大銅貨
銅貨
銭貨
となっていて、下位の貨幣十枚で上位の貨幣一枚に繰り上がる。
白金貨の上もあるが、その辺りになると手形でやり取りすることの方がほとんどで、大手商会や国の商ですら出番はあまりないのだそうだ。
白金貨もすでに見せ金の意味合いが強いらしい。
まだ覚束ないながらも少しずつ備わりつつある俺の金銭感覚だと、大銀貨一枚が一万円くらいだと思う。
つまり“白き朝露”の本日の稼ぎは、一人あたま七十万五千円ということなるね。
大金だ。
唐突になんだって?
話を逸らしたかったんだよ。
さて、懐が暖まったところで風呂だな(たぶん)。
†
道順からして先に浴場へ行き当たるので風呂かな? と思ったのだが、いったん宿へ戻った。
荷物を置き鎧を脱いで身軽になって、いちど顔を見せておけば、風呂から戻り次第食事が出してもらえるのだそうだ。
さすがにもう何ヶ月も逗留しているだけあって、“白き朝露”の三人は、すっかり杜の下亭に馴染んでいる。
そして風呂から戻り、夕食兼反省会だ。
女湯から出てきた様子を見ると、中でも散々話をしたようだったが、それはそれ、これはこれである。
「きょうも一日おつかれさまでした」
「「「「お疲れさまでした」」」」
なぜか今日はリディアが音頭を取っていた
「今日はいい一日でしたよね」
「ああ、まったくだ」
一日の稼ぎが、俺と月那にとっては冒険者になって初の稼ぎが、五人で金貨47枚に上ったこともそうだが、何と言ってもシルィーの魔術で索敵が出来るようになったのが大きい。
探知の手段があれば、魔獣との遭遇が調整できるので、安全も収益も格段に向上する。
蜥蜴の魔獣と第三種接近遭遇してしまった月那には気の毒だったので、お祈りをしておこう。南無ぅ。
明日の予定などを話しつつ夕食を楽しんでいると、ルーシーさんが帰ってきた。
昨日と連続だし、いつもこのくらいの時間に帰宅なのかな。
「ただいま。あら、やってるわね」
「お帰りなさい。お疲れさまでした、ルーシーさん」
「いくつか報告があるのだけど、ここで話して良い? それとも日を改めて組合で話す?」
「短いものならここで。長くなるようなら明日は訓練場を使わせてもらいにギルドへ行くので、その時にでも、でどうですか?」
今日も俺の隣に座り、俺の方へ話してきたのでそう答えると、
「わかったわ。
じゃあまずはシルィーさんの風の探知ね。
この件を冒険者ギルドの王都支部へ計ってみたら、広めるならセル族の族長へ話を通しておきたいという事になったわ。もちろんシルィーさんの了承が得られたらという事になるけど。どう?」
「おばあ、さまに? ……構わない」
とか言ってきた。なんかさらっと族長の孫疑惑が浮上したぞ。
「わかったわ。それではその件はそうさせてもらうとして、次はタツヤさんとルナさんの技能と称号の話なんだけど」
「構いませんよ。彼女たちにもその話はしてますから」
「ん。まずルナさんの流体操作の技能ね。
過去に一例あって、水の魔術と風の魔術を合わせたような技能だったようね。詳細は取り寄せ中よ」
続報を待てってところか。
「タツヤさんの遮断はまったく前例がなかったわ。独自技能ね。
ただ印象だけど、盾職に関係しているんじゃないかって気はするのよ。
その取り立てて逞しいという感じでもない体格で、盾職として一人前に働けているんでしょう? Dランク試験の時に壊れた盾も、ふつうはあんな風に壊れる寸前の状態で、ノルドの重い攻撃を受けたり、盾で攻撃なんてできるものじゃないのよ。じっさい試験場に出るときの盾には、壊れたところも壊れそうな様子もなかったわけだしね」
逞しくなくてすみませんね。
盾がなにか別の理由で壊れたのか、すでに壊れていた盾がなにか別の理由で元の形を保っていたか……。
こちらは成果なしか。
「最後に“流され人”っていう称号だけど、これは前例があったわ。
転移で飛ばされた人に付くそうよ。
しかも海を渡る必要があるみたい」
「海を渡る?」
「そう。別の大陸から来たとか、すぐ隣の島へ飛ばされた場合でも。ともかく周囲から隔絶された場所へ転移させられた人に付く称号らしいのよ。
心当たりはある?」
「あります。ありますけど、これはちょっと一言では説明ができませんね」
「そう。それじゃあこの話はまた明日ね」
そうして俺たちは、夕食に戻った。
アメイジングレース、alfar




