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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第二章 冒険者パーティー始めました
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4       ヤグト 第三層  


 ダンジョン・ヤグト第三層に入り、さっそくシルィーに風の(ウィスパー)探知ディテクションを使ってもらう。

 三層入口からあまり離れることなく、狩りに好適な場所を選ぶ。

 さすがに第三層ともなると、魔獣の強さが一層や二層よりだいぶ強くなってきたが、戦闘はぜんぜん余裕をもってこなせる。

 もちろんそれで良いのだ。

 あまり手応えがあるようだと、万が一戦闘中に別の魔獣が乱入してきたときに対処しきれなくなる。


 少し退屈に感じられるペースを保ったまま狩りを続け、獲物の数が五十匹を超えたところで、本日の狩りを幕引きとした。

 なにせ、いま三層に入ってすぐの所にいる訳だが、これから二層、一層を縦断し、林の中からバルニエ大草原経由でタルサ市まで戻るという、帰りの行程をこなすだけで二時間ほどかかるのだ。

 あまり頑張ってしまうと帰りが夜になり、市壁門が閉まってしまう。

 それ以前の問題として、お腹が減ってきた。

 美味しい夕ご飯を食べるためには、早めに引き上げないといけない。

 用意した材料がなくなれば、宿の食事は打ち止めなのだ。

 酒とつまみだけなら遅くまでやってるんだけどな…。


 この感じだと四層までは日帰りが可能だが、五層では難しそうだな。

 さらに深い層となると泊まり込みが必須になる。

 正攻法で攻略するなら、まずは六人目を用意して営巣えいそうすることが必要になるし、二桁層へ潜ろうとすれば、複数パーティーで提携アライアンスを組むなどの大掛かりな編成が必要になってくる。

 Dランクになりたての俺たちでは、自力解決が難しい案件だ。

 これも、この世界のダンジョンの嫌らしいところだな。



 ── 短縮径路ショートカットルートがないんだ ──



    †



「お疲れさまでした」


 ダンジョン出口の職員が声をかけてくれる。

 ダンジョン前の施設は市が運営しているので、騎士団の事務方なのだろう。


 ダンジョンの入口は一つなので、入ったところから出てきた訳だが、入り口前広場は一方通行で、入場の時に来た方ではなく、ダンジョンの出入口にある四つ辻を直進した先に広場の出口がある。

 ダンジョン前広場は、入口と出口が別々になっているのだ。


 朝とは違い、今は周囲に冒険者の姿はまばらだ。

 みんなそれぞれのペースで仕事をしているので、昼前にさっさと出てしまう者もいれば、夜暗くなってから出てきて、近くの簡易宿泊施設で夜を越す者もいる。とうぜん深くまで潜る連中はダンジョンの中でとまりだ。

 門前の店々はともかくダンジョンを囲む施設は、ダンジョンの監視が主要な任務なのでそういうことになる。

 ダンジョン砦は終日営業なのだ。


 店の半ば以上も、そういった頻繁な利用者(ヘビーユーザー)を目当てにしている。

 お疲れさまなことだね。


 広場の出口で冒険者証(プレート)の確認をしてから、門をくぐって施設の外へ出ると、日は中天をかなり過ぎている。


 時計を確認すると15時15分。

 昼下がりはうに過ぎている。

 陽射しが心地良い。生きていることが実感できる幸せな一瞬だ。

 そうか。これって無事に地上へ戻った鉱山労働者の気分なんだな。っと自分が見聞きした事がある事柄になぞらえて、なかば無意識のうちに整理していく。


 門前の露店群を歩いて行くと、なにかが焼ける美味そうな匂いがいろいろと漂ってくる。女の子三人はクレープのような甘い焼き菓子に飛びついていた。俺は肉串、シルィーは野菜串を買った。

 ダンジョンから出た開放の瞬間に、手軽に食べられる熱い食事というのは、どうしてこう美味いのかね?


 今日が初めてのダンジョンだけどね。


 隣のシルィーに、屋外で“風の(ウィスパー)探知ディテクション”を使うとどうなるの? と尋ねると、一瞬立ち止まってすぐに歩き出し、「広さ、や細かさは、同じ。弱い、魔獣、が林の中、で身を、潜めてる」と返答してきた。

 周りを見渡すと。

「それ、狙ってる、んじゃない、かな」と串を指さしてきた。

 そうか、ダンジョンの外の魔獣は、餌が必要なんだな。


 最初は数秒かかっていた風の探知ウィスパーディテクションの発動も、いまは一瞬足を止めるだけで出来ている。

 シルィーも一日でずいぶん使いこなすようになったものだ。


 女の子たちは、ダンジョン内での静寂しじまが嘘のように話しまくっている。

 声は大きくはないが、きゃっきゃくすくすという音が、途切れることなく広がって行く。

 狩り場では、ちゃんとその場に適した行動をとっていたんだ、いまは熊除けの鈴のとでも思って聞いていよう。




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