表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第一章 ここはどこ!?
19/245

19     講習会    後編  


 湯が沸いたので、スープをいて、軽く温めた乾パンを浸す。

 そして謎肉ネギマの先頭にかぶりつく。

 うん、うまい。

 焼きたてで、肉の脂がとろとろとねぎみて、幸せな味が口いっぱいに広がる。

 塩だけの味とは思えない。と思ったら、ガラムマサラみたいな香辛料があったので、少し混ぜてみましたと月那るなさんが言う。

 なんだろう、ガラムマサラって、コショウとは違うのか?


 そういえば、ネギマってネギの間に肉で葱間ネギマかと思っていたら、本来はネギマグロの鍋で葱鮪ネギマ鍋なんだってね。食べたことないけど。

 そんなことを思い出しながら大串一本を食べ終えたころ、隣の女の子三人組からハンナがこちらへやってきた。


「美味しそうですねその串、良ければうちのと少し交換しませんか?」と言って、葉物野菜を敷いた上に焼いた肉を載せた木椀を出してきた。

 月那さんを見ると、うんうんと頷いていたので、串と交換する。

「肉と葉っぱを一緒に食べるとおいしいよ」と言われたので、そうしてみると、あらほんとに美味うまい。

 葉っぱは香草ハーブらしく、うちの串とは違う軽い美味おいしさが、口から鼻にのぼってくる。

 パンにはこちらの方が合いそうだ。

 月那さんも「はふっ」とか呟きながら食べている。気に入ったようだ。

 向こうの男がうらやましそうに見ているけど、あげないよ。くれたに悪いからね。

 それにしても、パーティー加入に向けて早くも胃袋をつかみに来たか。けっこう積極的に訴えかけて(アピールして)くるね。


 おなかも膨れたので、鉄棒と太いまきかまどから外して火を消し、竈になっていた大石も、外へ広げるように倒す。熾火おきびはそのまま燃やし切る。

 食器には水を張って、汚れをふやかしておく。


 ご馳走さまのお礼を兼ねて、月那さんと隣の天幕を訪ねると、向こうも「あまり食べない味付けだったけど、美味しかったので何を使ったのか教えてほしい」と言ってきて、月那さんといろいろ教えあっていた。

 天幕の方を見ると、こちらは大ぶりの丸屋根ドーム型だ。

 合成樹脂プラスチックがないだろうこの世界で、材料に何を使っているのかと考えていたら、ハンナが「飛翔ひしょう型魔獣の皮膜ひまくと骨」だと教えてくれた。

 皮膜があって飛翔型っていうとモモンガみたいな奴かね。襲ってこなけりゃ可愛いかもしれない。

 重量は軽いがその分お高いので、ちょっと手が出ない高級品だよ。とも言っていた。へー、詳しいな。


 料理談義が落ち着いたのか、月那さんがこっちへ来たので、二人で中に入ってみる。

 回復術士の娘が「中で始めちゃだめですよー」とからかってきた。

 せんわっ!

 大らかなのか品がないのか? 月那さんが真っ赤だ。

 あちらも「見せてね」と言って、俺たちが張った天幕の方へ向かった。


 丸屋根型天幕ドームテントの中は、確かに広くて快適そうだ。

 こちらの天幕のように中心に柱があると、イタすのに邪魔……いやいや、空間の利用効率がぐっと悪くなる。


 外へ出て男連中の天幕も見に行く。

 大きな防水布を斜めに固定しただけのものは、運搬時の重量と体積は小さく抑えられるものの、使用時に周囲は解放していて丸見えだ。

 雨露から体を守るだけなら有ると無しとで大違いなんだろうが、これだと敵性の魔獣や虫からは、それにの目からも丸裸だな。


 最後の一つは蒲鉾かまぼこ天幕(テント)だった。

 丸屋根ドーム型天幕を張るのに使う湾曲した骨材を両端に使い、間の天井を細い棒で繋いで突っ張っていた。

 高さを抑えて中を広げられるのが利点か。

 途中に湾曲支柱を追加してやれば、さらに長い天幕も作れそうだ。


 全員であーだこーだと言っていると、やがて講師の“怒濤の山津波”の面々が戻ってきた。

 そして始まるお片付け。


 まずは各班一名が食器や調理器具などを洗いに持っていく。うちは月那るなさんが行った。

 次の一人が、焚き火が消えて残った灰を、水を入れた錫鍍金鋼板ブリキ一斗いっと缶のような入れ物にスコップを使って集め、それを建物の裏手へ運ぶ。

 焚き火跡に、かめから水をかけて完全消化。瓶と大石を元の場所へもどす。


 そして最後にこうまとめた。


「パーティーを組むことを勧める。

 やってみて分かっただろうが、天幕の設営、食事の用意、周辺警戒など、すべてを一人でこなすのはとても難しい。

 分業できるところは分業し、数で押せるところは押し切る。

 実際に野営をするとなれば、見張りも必用になる。

 一人では安全に休むことができず、二人でも、夜の半分は起きていなくてはいけない。三人居れば三交代で見張りに当たれば充分な休憩が取れるが、万が一見張りが眠ってしまった場合に、挽回フォローする手立てがない。

 だが逆に人数が増え過ぎてしまうと、役割が被って効率が落ちたり、意思疎通が難しくなるといった弊害へいがいが出てくる。

 従って、見張りの三交代に、余裕を加味すると、倍の六人が望ましい。

 見張りを二人一組(ツーマンセル)の三交代で行うわけだ。

 この程度の人数なら、役割の重複も起こり難く、意思疎通もそれほど難しくない」


「冒険者ランクが上がれば、難度の高い依頼を受けて遠出をしたり、ダンジョンの深層へ潜るなど、継続して力を発揮することが必要な場面が増える。

 そうした場合に、もっとも均衡が取れているのが、いちパーティー六名の構成という事は、これまでの多くの高ランク冒険者たちによって実証されている。

 まずは生き残る、次に怪我をしないことが大切で、高収益はその後になるが、そういう選択をするところ(ランク)にまで行くつもりなら、“継続して活動し続ける能力が必要になる”のを覚えておいてくれ」


 と話をくくった。


「これで昼の部を終わる。

 次で最後だ。午後の部、訓練の基礎を講義するので、実技試験のときと同じように武装して待っていてくれ。武器は模擬剣でなく、普段自分が使っているものを使う。

 以上、解散」


 今までやっていたのは、昼休みではなく、講義昼の部だったな。

 でも、休み方の講義と言えるのか。

 ハハハ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ