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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第一章 ここはどこ!?
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16        街歩き 後編  


 賑やかな商業区へもどる頃には、壁の外へ出ていた連中(ぼうけんしゃたち)が戻る頃合いとなった。

 夕食をどうするかを月那さんに聞くと、公衆浴場せんとうの近くにあった定食屋さんが気になるとのこと。あとはルーシーさんお薦めの宿その二の食堂もと言う。


 よく見てるな。俺は定食屋には気づかなかったよ。


 歩こ~、歩こ~、と居住区まで来て、さてどちらにするかと相談する。


「杜の東亭には今夜まで泊まることになっています。明日はもう一軒の宿を試してみる予定ですから、宿の食堂はそのときでもいい気がします。

 きょうの夕食は定食屋さんにして、帰りに共同浴場へ寄ってから、杜の東亭へ戻るというのはどうでしょう? 共同浴場も今日なら入浴料がかかりません」


 月那さんがそうおっしゃる。

 合理的だし、とくに対案もないので、定食屋へ入った。


 定食屋といっても、主菜は欲しい品の札を取って、一列に並んでカウンターで渡し、その場で調理してもらって受け取る。その他は好みに応じて小鉢を取り、列の出口で支払いをするという方式だった。

 きのう魚だったので今日はステーキだ。

 なんの肉かは考えない!

 調理場で表面に焼き色をつけたあと、野菜といっしょに焼け石に乗せふたをして、余熱でじっくり火が入るようになっている。

 いいにおいだ。


 月那さんは焼き魚定食だった。

 魚好きだね。

 開いた見た目は、ホッケのような謎魚。


 味は良好で点数高かった。

 主菜と小鉢、サラダ、スープ、パンで大銅貨8枚。費用対効果比コストパフォーマンスも良好な気がする。

 気取らない店の感じも性に合っているんだよ。

 月那さんも満足げだ。


 食後のお茶を飲んでまったりしていると、月那さんの様子が変った。

 視線が浴場の方に向けられている。

 空腹が落ち着いたら、こんどはお風呂が気になるらしい。


 そろそろお風呂に行く? と水を向けたら、うんうんと頷いてきたので、食器を返して店を出た。

 あ、壁に角ウサギのソテーって貼ってあったわ。

 ウサギさん大活躍だね。





もりの下湯”


 共同浴場の看板にはそう書かれていた。

 聞き覚えのある屋号である。

 いやいやいや、翻訳された意味がそうなるって事で、実際の現地語でどんなニュアンスなのかはよく分からないのだけどね。


 引き違い戸、ではなく奥へ押して開ける木製の分厚く大きな扉から、建物に入ると受付がある。

 広い靴脱ぎ場で、履き物を下足箱に入れて、素足で受付に向かう。

 受付の脇には休憩所らしきものが広がっており、受付の奥は男女別になり、脱衣場に繋がっているようだ。


 受付で“杜の東亭”の部屋の鍵を見せると、中へ素通りさせてくれた

“杜の東亭”の宿泊客であれば、無料で利用できるという話に間違いはないらしい。


 肝心の風呂だが、建物の造りは宿《杜の東亭》の浴場とよく似ている。

 違うのは浴槽だ。

 半埋め込みで、木製の浴槽が設置してありました!


 さすがにひのきではないので香りが違うんだが、ぬくもりのある質感は間違えようもなく木のものだ。


 さっそくシャワーで汗を落として、そそくさと湯船に入る。

 あー、おちつくわー。

 木の香りと肌触りがたまりません。

 ん──────、・・・・ ・・ ・。


 はっ。


 いかんいかん、気を抜きすぎると寝てしまう。


 しかし月那さんもだけど、この体は疲れ知らずだな。

 きのう一日中と、きょうの午後、休みを入れてるとはいえずっと歩いていても、足が重くなる気配がない。

 少なくとも、元の世界にいたときの俺は、こうまで歩き続けられなかったはずだ。

 サイボーグなんじゃないかしら? と思ってしまう。

 怪我をすれば血が出るので、それはないか。

 だがまあ、健脚なのはいいことだ。

 はっ、人造人間(バイオロイド)

 血は赤かったでしょ。いい加減にしなさい。


 変な事を考えていたら、結局、昨夜よりも長湯をしてしまいました。



 風呂から上がると、月那るなさんが受付の近くでうろうろしていた

 なにをしているのかな? と近くへ寄って尋ねると、これこれと壁の張り紙を指をさす。

 なになに。

「牛乳」「牛乳(果実風味)」ご希望の方は受け付けへどうぞ


 なんと

 牛乳発見!

 ああだがなんと、珈琲コーヒー牛乳はやっぱりないじゃないか!!

 I badly want some coffee!


 しかたがないのでフルーツ牛乳をお願いすると、月那さんが嬉々として受け付けへ跳ねていった。

 おーい、足が床に着いてないよー。


 受け付けのお姉さんが、受付台の下から陶製の広口小瓶を取り出して、ふたを取ってくれる。

 大銅貨8枚を払って受け取る。

 手に持つとひんやりしていた。

 冷蔵庫があるのか。

 そうだよねー、牛乳の常温保存なんてあり得ないよねー。

 いや、状態変化無効が附与された保存庫という可能性も……もっとないかー…。

 それであまり見ないし、値段も高いんだな。

 ステーキ定食と牛乳二本が同じ値段だもんね。


 月那さんと並んで、腰に手を当て、ぐいっと一気

飲みはせず、小分けに口の中で転がすようにしていただいた。

 牛乳の一気飲みは、夏の暑いときに、暑い中でやるのが美味いのだ。

 冷房など邪道、扇風機か自然の風が心地よい。

 ビールをぐいっとやるのに近いよね。のど越しを楽しむ所とか。喉を過ぎるときの感触自体はまるで違うけど。

 春先という季節と、少しひんやりしている程度の温度なら、口の中で転がして味と香りと舌触りを楽しんだ方が美味おいしいのだった。


 けっきょく月那さんは、白牛乳を飲んだあと果実味牛乳をおかわりしていた。

 牛乳も好きなんだね。


 夕食にも風呂にも牛乳にも満足して宿に帰った俺たちは、相変わらず地に足が着いているとは言い難い状況の中、夢も見ずに眠った。


 同じ部屋で。




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