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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第一章 ここはどこ!?
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13     昇級試験   中編  


 昇級試験の模擬戦闘が四名終わったあと、俺の名前が呼ばれた。

 相手は最初に出ていた大剣使いだ。


 開始線に立ち、お互いに構える。

 身長百七十六センチの俺よりも遙かに高い大男。そのうえ左右も奥行きも相応に大きさ(サイズ)があって、均整バランスが取れている

 近くで見上げると、その圧迫感が半端じゃない。


「始めっ!」


 開始の合図でいきなり小剣ダガーが飛んできた。おいおい。

 盾の端で弾き、そのまま次の大剣振り下ろしを止めにいく。


 ゴンッ!──


 木と木がぶつかったとは思えない音がして動きが止まる。

 右手の剣を振るが、剣と腕の長さ(リーチ)が違い過ぎて、片手剣では相手の長い籠手の装甲部分にまでしか届かない。

 やっかいだな。


「なあ、兄ちゃん」

「ん?」


 なんだ?

 切り結んだまま、大剣使いが話しかけてきた。


「昨日、獲物えものを出している所を見たぜ。おまえ収納技能ストレージスキル持ちだよな。それもバカ容量の」

「それがなにか?」

「お前ら、俺らのパーティーに入れてやるよ。“怒濤の山津波”、Cランクだぜ。なあに仕事は簡単だ。俺たちの後ろを付いてきて、倒した魔獣を収納して運んでくれりゃいい。戦いは俺たちがやってやる。お前達は後ろで見てりゃいい。な、安全で簡単だろ? ありがたく思えよ」


 勧誘スカウトだった。

 それもぜんぜん嬉しくないたぐいだ。

 戦闘に参加しないとレベルも上がらないだろうしな。

 なにより妙なひもなど付けたくもない。


「……結構だ。間にあっている」

「つれねえな。まあいいや。収納ストレージ持ちは一人いればこと足りる。これから嬢ちゃんの面倒は俺たちがちゃーんと見てやるから、お前は安心して往生しなよっ!」


 押し合いの状態から突進と猛烈な連撃が来た。

 片手剣では押し負けて飛ばされそうなので、盾で受けるしかない。

 それでも暫くして攻撃が一段落し、少し離れて向かい合った。


「へえ、案外粘るねぇ」

「盾があるからな。それよりいいのか」

「なにが」

「致命傷はまずいんじゃないのか」

「ああん、問題ねーよ。死ななきゃいいんだからよ。なっ」


 連撃が再開された。

 そんな光景が続けられると、盾の耐久力が怪しくなってきた。

 剣を受けたときに、腕に伝わる盾の軋み・たわみが増えてきたのだ。

 木の盾ではもう限界か。


「うぉらあっ!」


 大上段に振りかぶり、体重が乗った大剣が落ちてきた。


 俺は一歩前へ出ながら片手剣を振り上げ、剣を握る両の小手を下から外へ強打する。そのまま相手の懐に入る動作を止めずに盾を引き寄せながら姿勢を低くし、盾を握る腕に肩と右手を加えて、伸び上がる動作で、前のめりに泳いだ相手の腹に突っ込んだ。

 盾を使った打撃技、シールドバッシュである

 本来ならもっと大きく重い金属盾で使う突進技だが、今回は相手の巨体と重さが降ってくるのを下から迎え撃ち、相手の運動エネルギーがなるべく逃げないように動いた。

 どこでそんなことを覚えたかって? そりゃもちろん「七国ゲーム」でだよ。


 ゲーム内ゲームに、FPSと言うのがある。

 一人称視点射撃ファーストパーソン・シューターならぬ一人称視点剣士ファーストパーソン・ソードマンといって、キーボードやコントローラーでも出来るけど、丁度キーボードでカチャカチャするのに飽きてきた頃だったので、挙動感知器モーションセンサー繋いで(いれて)みた。


 胸部装甲ブレストプレートを模した感知主機センサーハブを着け、加速感知器ジャイロ加震器バイブレーターを内蔵したスティックを剣や盾として振り、対AI戦や対人戦を始めると,まったく別の世界が広がったよ。

 いい気分転換になったね。


 その楽しさを満喫するために、映像投射器ビデオプロジェクターで壁面に画像をうつし出し、剣を振り易くするために天井照明シーリングライトを超薄型に代え、家具も最小限まで減らして可動範囲を広げ、思わぬ部屋の模様替えをしてしまったのは内緒だ。

 傍目はためのことは考えない。

 だって楽しいから。

 ゲームが持つ“毒”についても、じきに気付いたが、“仕事や日常生活にゲームを踏み込ませない”ことを心に誓い、遊びのほとんどをゲームにつぎ込むことにして、それを厳守げんしゅしながらゲームを続けた。


 話がれた。

 あれはもうスポーツと言っていいと思っていたけど、この盾鎚撃シールドバッシュをいざ現実でやってみると、体幹筋の負担が大きいな。


 大男の両手剣が地面に落ちる音がして、盾にかかる重さが増す。

 うまく息が出来ないのか動きが緩慢かんまんな大男がのしかかってきたので、足で相手の片足を払ってひっくり返して地面に置き、剣を首筋に当てて、ギルド長の方を見る。


「そこまで。タツヤの勝ちだ。治療班っ」


 ギルド長の判定を受けて土間コートから出て、模擬剣と盾を収納庫の吊り具(ハンガー)へ戻そうとしたら、盾がくずれた。

 割れた。ではなく、握りの部分だけを手に残し、分解して崩れ落ちたのだ。

 本当にぎりぎりだったんだな。助かったよ。

 周囲に誰もいないので、近くの台上にまとめて置く。

 あとで報告しないとな。


 席へ戻ると、大男はすでに訓練場から運び出されていて、次は月那るなさんの番だ。

 彼女に預けてあった片手剣と盾を受け取り、彼女の両手剣を預かると、模擬剣を持った月那さんが訓練場へ入った。



    †



 月那るなさんの昇級試験が始まった。

 相手は長槍使いだ。


 月那さんの使う両手剣は、さっきの大男の得物と同じ種類で、俺の片手剣よりも射程距離が遠くにまで及ぶのだが、長鎗の射程はさらに長い。

 つまり先程の俺と同様に、相手の攻撃をさばいてふところへ入り込んで攻撃を当てる必要がある。

 ゲームの戦闘すら初心者の月那るなさんには荷が重いかなと思っていたのだが、意外と善戦している。


 両手剣の達人のように、剣を途切れなく振るうような技術はないのだが、相手の槍はちゃんとさばけている。

 効率よく剣が振れているわけじゃない、だが妙に剣速が早いのだ。

 まるで剣の質量が半分になっているような剣の軽さ。それでいて槍と切り結ぶ時は本来の質量以上の運動エネルギーを載せて槍を弾いているような。

 言葉にすると変なのだが、そんな奇妙な光景を、俺は見ていた。


 槍使いはことごとく軌道を逸らされるのにじれたのか、両手を広げた奇妙な姿勢を取った。石突きを握り右腕一本で槍を回転させる。月那さんの視界の外から槍の穂先が襲いかかる。


 当たる! と思わず声を出しそうになったが、月那さんはそちらを見もせずに両手剣を振るい槍を迎撃した。槍使いは弾かれた槍に右腕を大きく引かれてバランスを崩し踏鞴たたらを踏む。

 そのまま前に出た月那さんが、腰を落として剣を横薙ぎにすると、まただ。

 今度ははっきりと剣が当たる前に相手の足の踏ん張りが崩れた。

 引き戻した剣を、転倒した槍使いの首に当ててから、月那さんがこちらを見る。


「そこまで。勝者、ルナ」


 おぉ──。と、なんかどよめきが起きた。

 月那さんまで勝ってしまったな。




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