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わたし達、冒険者始めます  作者: 遠ノ守
第四章 過去から呼ぶ声
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33 転機──ターニングポイント──


 俺──敦守あつもり達弥たつや──と、みゆきの友人──佐橋さはし月那るな──は、MMO‐RPG

Seven(セブン) Nation(ネイション) Fantasy(ファンタジー) online(オンライン) 」でレベル上げの最中、気がつくとゲームの中としか思えない場所にいた。

 俺たちがやっていたのは(バーチャル)(リアリティー)ゲームじゃないんだがな。


 自前の体にゲームキャラクター(アバター)の装備、レベルは初期状態の「1」。

 体調は良好だが、原因を探るにしてもレベル1(これ)では身動きが取れない。

 ここが現実だというなら、あっという間に死んでバッドエンドだ。

 俺と月那るなはなんとか最寄りの街“タルサ”へとたどり着き、生活と情報収集の基盤ベースとして「冒険者ギルド」へ登録し、冒険者パーティー“またり”を結成した。


 その俺たちが順調にレベルを上げるなか、俺たち“またり”と“白き朝露あさつゆ”の五名が、転移(トラップ)にハマったダンジョン・ヤグトの未踏領域。

 首尾よく脱出した俺たちの報告を受け、未踏領域調査のために編成された、事前調査隊第一班。

 冒険者ギルド、タルサ支部の受付嬢にしてBランク冒険者のルーシーさんを隊長に、護衛と戦闘担当の“怒濤どとう山津波やまつなみ”四名、案内役として“白き朝露”からシルィーと、“またり”から俺の合計七名は、おおむね順調にボス部屋へとたどり着き、入口を開け、無事に第五層ボスの害猪イビルボアを倒した。


 これで第二班と合流すれば、今回の任務ミッションは終わりと思ったところへ、ボスのお代わりで厄猪ミスフォートボアが現れた。

 こんなところでゲームと違う。なんて言うのは反則アンフェアだろう。


 元のゲームと異なり、説明チュートリアル攻略サイト(あんちょこ)もない状態で、ゲームでは持っていなかったスキル“遮断インターセプト”を手探りで使い、厄猪ミスフォートボアを倒して「やれやれ」と思ったところで、再々度(みたび)なにかが現れる兆候が見えた。


 このダンジョン、欠陥バグってるよ!



    †



「ルーシーさん」

「はい……」

「これを」


 俺は収納ストレージから出した片刃の剣を、ルーシーさんに差し出した。

 装備レベル不適合で、装備品が重い……。

 そこで“見えない鎧”に動力補助パワーアシストさせて力を上乗せ(パワーライズ)してみる。

 お、いい具合だ。使えるね、この鎧。

 強度や移動能力まで加味すると、まるっきり外骨格機動服パワードスーツだな。


「壊れた刀の、代わりに使ってください」


 レベル46装備の日本刀「正宗」。

 俺がゲームの主要メインキャラに使っていた「ケイン」は、“レベル86”で盾持ち片手剣使いをしていた。

 月那るなとのレベル上げに使っていた「エイル」は、そのケインの倉庫兼術士遊び用のキャラクターだ。

 レベル60で「ケイン」の扱いを盾職タンカーと決めて以来、両手武器は使わなくなっていたのだが、この刀だけは浪漫ろまん倉庫エイルに残してあった。

 ルーシーさんがこれを使えるレベルだと助かるのだけど。


「おい、タツヤ!」

「帰り道で要るにしても、いま出すことはないだろう!」

「そうも言っていられないようですから」

「えっ?」


 うつむていた顔を上げ、こちらを見たルーシーさんは泣いていた。

 愛刀が大きく損壊した(ダメージをうけた)のだから、気持ちは分かる。

 そっとしておいてあげたいのは山やまなんだが、そうも言っていられない。


「次の相手が来るかもしれません。今のうちに準備をしてください」


 俺の精霊眼には、入口扉のちょうど反対側にある壁から流れ出した魔力が、中央の円陣サークルへ流れ込んでいくのが映っていた。


 ボスの無限()きなんて、冗談じゃないぞ。



    †



 状況が理解できたようで、ハッとした表情をしたルーシーさんが黙って武器の換装を始める。

 俺の手にある刀を見てもう一度ハッとするが、黙って折れた刀を俺に渡し、背中のさやも背負い紐を外してから俺に渡す。

 受け取った刀に背負い紐を巻きつけて着装し、鯉口こいくちを切って抜刀、納刀、振り具合を確かめている。

 長く刀を使ってきただけのことはあり、その動作によどみはない。

 レベル適合も問題なさそうだ。

 つまりルーシーさんはレベル46以上ということか。


「ありがとう……」


 調整がいい具合に決まったのか、ルーシーさんは抜刀して部屋の中央にある魔術陣を見つめたまま、小さな声でそう言った。

 喜ぶのも悲しむのも、すべては生き残ってから。

 その背中は、そう言っているように見えた。


 俺もルーシーさんの刀を収納ストレージし、塹壕トレンチナイフを片手剣へと戻す。

 まわりを見回すと、リカルドとノルドの兄弟が、間食用の糧食レーションかじってカロリー補給をしている。

 スレイン、ルクス兄弟は戦闘準備を完了していた。

 流石さすが、みんなプロフェッショナルだ。


 シルィーはと言うと、少しぼおっとした感じで壁の方を見ている。

 入口の対面にある壁、魔術陣へ魔力を供給しているらしい壁だ。

 シルィーも“精霊眼”持ちなので、気になっているのだろう。

 “ボア”が現れるときの魔力は床から陣へと集まっていたのに、今は壁から魔力が流れ込んでいるのだから。



 肉眼で見ても霧のようなものが集まっているのが分かるようになったとき、ルーシーさんが突然消えて、陣がある場所へ現れ、三度空振りしたあと戻ってきた。


「駄目ね。害猪イビルボアが出たとき、姿が固まる前に攻撃したらどうなるのかって気になったんだけど、形を取るまで攻撃は効かないみたい」

「やっぱりそこ、気になりましたか」


 同じ事は俺も思った。

 ただそのときは、前回と同じ手順で対処することを考えていたため自重したのと、ルーシーさんのような脚の速さがなかったこともあって、実行しなかった。


厄猪ミスフォートボアのときは、スレインたちが出てきて驚いていたから、忘れちゃったのよね」

「なんかすいません、あねさん」

「いいわよ。べつにあなた達が悪いわけじゃない」


 ルーシーさんもすこしは調子を取り戻したようで、いい傾向だ。


 円陣サークルの霧が集まり、形を成していく。

 今度のはだいぶ小さいかな?

 人と変わらないサイズに見える。

 というか、どうやら本当に人型ひとがたのようだ。

 魔獣じゃないのか?

 それとも、ゴブリンのような人型の魔獣か?


 肩に見えるあたりから実体化が始まり、鼻から胸までと思われる姿が現れたところで、ソレは言葉を発した。



「武器を引いてくれぬかな……」




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