関西弁女の子と年下クール少女の『告白』
久しぶりに本来の用途で短編書きました。
今のブームと個人的な趣味全開です。ご注意を。
「告白ってどうやったらええんやろなぁ」
隣を歩く年上の友達が、不意にそう訊ねてきた。
それはいつものように、下校中に行う、とりとめのない会話の一つなのだろう。
いつも通り。
いつも通りのはずなのに、私の心臓はドキリと跳ね上がった。
「……なに? 誰かに告白したいんですか?」
「そういう訳や無いんやけどな~」
「先輩」
「ん?」
「好きです」
「ウチも好きやで~。って、そうやなくてやな~」
えへへ、と嬉しそうなまま、ペシペシと私の腕を軽く叩く。
「ウチの中で告白ってな、二つあるんよ」
「二つ? 少なくないですか?」
「えっ、ウソやん! そんなあるっ!?」
「とりあえず、思いついた二つ言ってみて下さいよ」
「んとな、ドロッとした告白と、サラッとした告白」
「ドロっとした!?」
聞いたことがない表現だ。
「何かこう、高級レストランとかに呼び出して、指輪とかケーキの中に忍ばせて、食べていったら出てくるみたいなん」
「それはもう告白でもなんでも無くてただのドッキリですよ。
あと強いてあげればプロポーズの類かと」
それと一つ、話の齟齬があることに気付いた。
「というか、告白って愛の告白限定なんですね」
「ん? せやで」
「私はてっきり、秘密の告白とか、犯罪の告白とか、そういう意味での告白の種類かと思いまして」
「あ~、なるほどな。
それはウチの言い方が悪かったわ。ごめんな」
「いえいえ。もっとちゃんと謝って下さい」
「なんでっ!?」
ごほん、と一つ咳払いし、友達は続ける。
「まあええわ。
それで話戻すけど……。
……どう思う?」
「話を戻すための記憶点を忘れましたね」
まあ良いですけど、と思い出す。
「ドロッとした告白と、サラッとした告白でしたっけ」
「そうそうそれ~」
「で、ドロッとした告白って何ですか?」
「んと、さっき言ったのがプロポーズレベルになるんやったら……せやな~、校舎裏に呼び出して、って感じかな」
「なるほど。要はしっかりとした告白ってことですか。
それで、その二つがどうしたんですか?」
「いやな、どっちの方が良いんかなぁ、って話」
例えばやけど、と指を一つ立てる。
「ドロっとした告白やと、絶対に告白って分かってもらえる代わりに、断られた時絶対友達には戻られへんやろ?」
どうでも良いが、ドロッとした告白ってなんだか卑猥に聞こえる。
「その点サラッとした告白やと、断られても友達に戻れそうな気軽さがあるけど、告白って分かってもらわれへん可能性があるやん」
「ですね」
二つ目の指を立てて言った言葉に、全力で同意を返してしまう。
「そやろ? だからどっちが良いんかな~、って」
「でも先輩、誰かに告白する気は無いんですね?」
「まあせやねんけど~。気になってもうてな」
「気になる……」
「ちなみにやけど、どっちが良いとかある?」
「……それ、答えないといけないですか?」
「いや、別に良いんやで?
良いんやけど、どっちかな~、的な」
「じゃあ、先輩がどっちなのか教えてくださいよ」
「ウチ?」
ん~……、と腕を組んで悩む。
「ウチか~……ウチはな~……やっぱ、サラッとかな~」
「どの口が言ってるんですか」
「え?」
「なんでも」
誤魔化し誤魔化し。
「先輩、サラッとした告白なんて気付くんですか?」
「当たり前やん~」
「誰が……誰の口が……!」
ギリギリと奥歯を噛み締め、握りこぶしを作ることで、言いたいことを(少ししか漏らさないようにして)堪える。
「で、どっちなん?」
「…………………………………………私も、先輩と一緒ですかね」
「そっか~」
ニヘヘ、と笑う顔を見て、ああもう、と口だけが動いてしまう。
だってもう、それだけで、さっきまでの苛立ちとかムカつきとか、全部吹き飛んだから。
「なあなあ」
「はい?」
「ウチもあんさんのこと、めっちゃ好きやで」
「……はあ、どうも」
全く、こっちの気もしらないで……そんなことを気軽に言ってくれる。
「む~……ちゃうやろ~」
「え、あっ」
ムスッとしながら肘を突かれ、この話題を始めた時、私が真っ先に告白したのを思い出した。
関西的なノリで、同じような流れを汲んで、オチを作りたいのだろう。
先輩に教えられたことが実践できなかったな、と反省。
「すいません。私も先輩のこと好きですよ」
「ホンマにっ!?」
「え、ええ……」
……ん? 何か間違えた……?
えっと……。
「……な、なんでやねん……?」
「えっ、なにが?」
「……いえ、なんでも」
何か違和感あるが、先輩がニッコニコしているのを見ていたら、もうどうでもよくなった。
全く……鈍いにも程がある。
せっかく先輩曰くの「サラッとした告白」を実践していたって言うのに気付かないなんて……。
……は~……全く先輩は、いつになったら私の気持ちに気付いてくれるのだろうか。
マンガとかにあるエセ関西弁を喋っている女の子って可愛いよね…という衝動に任せて書いた代物。
よくあるお話ですが個人的に満足。
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