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気が付いたら、窓からは長くて赤い光が差し込んでいた。
マイキーは相変わらずの格好で、壁に張り付いていた。おどけたねずみの格好だ。
そこで、初めて僕は、今までのことが全部、夢だったんじゃないかと思ってみた。そう、夢だったんじゃないかと思ってみたんだ。
「よう、起きたね」
ゆっくりとマイキーの声が響いた。どうにも、その声さえ夢だと思うことがきっとあの時の僕にはできたはずだが、僕はそうしなかった。
それは僕の中にいくつかの希望があったからだ。
そして、マイキーの話は本当に長かった。物語るというのは本当はこんな感じじゃないかと思ったほどだ。内容も素晴らしくわくわくするような、後、泣けたり恐怖におののいたりできるものだったとここに明言しておく。
ただ、本当にあまりにも長いし、僕が聴いたのも結構要約だったし、何より、あのマイキーの語りで泣ければこの感動は生まれないので、皆さんにもぜひマイキーの生の語りで始めてを体感してほしいから、内容についてはここで語らない。
すごく単純に言うと、マイキーは元々人間で、戦前の新興宗教の開祖様で、神に選ばれた男だったが、恋人との出会いや、組織の分裂、そして未来が見えたり見えなかったりの末、狂信的な信者に殺されて、本当の墓は別にあるのだけれど、その墓には死体は入ってなくてこのアパートのあった場所の屋敷の壁に塗りこめられたそうだけど、戦争中の空襲で、昔の建物は跡形もなくなって、誰もそのことを知る人がいなくなったとき魂の開放と共にこのアパートの壁の染みになったのだ!なんと美しい話だろう!!
とか、そんな感じだ。きっと、マイキーはアカシックレコードの端っことこっそりつながっているんだろうなぁという僕の考えはおそらく間違っていなかっただろう。あと、電子炊飯器のことも、悲観することが無かったのだ。