表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

2

そう考えた僕は部屋の壁の染みに向かって語りかけた。僕は神にでもなったかのように語った。染みよ!聴きなさいと・・・

 ちなみにこの染みと言うのは、ミッキーマウスを尖らせた様な染みで何回消しても必ずぼんやりと浮かび上がってくる怪しい染みだ。こいつのおかげで、僕は何人かの友人を失う羽目になったくらいだから、きっと何かあるのだろう。僕自身はたまに人の視線を感じるくらいでとくに迷惑はこうむっていないので気にしていないが。

 そうして日がすっかり落ちたころ、まだ僕は延々と電子炊飯器について壁に語りかけていると、またもにわかに信じられないことが起こった。染みが突然しゃべりだしたのだ。

それはそれは渋い声だった。

「そんなこといまさら言われてもなぁ」

お前、しつこいねと続けながら、さも当然のように言った。

 

 僕はまるで世界がひっくり返ったような思いだった。


だってそうだろう?僕が世界に先駆けて発見したと思った、電気炊飯器が生きているというこの世の心理はもう当然のことだったんだから・・・それこそ、壁の中の染みでも知っているくらいの事だというんだから・・・

あまりの恥ずかしさに、死んでしまってもいいくらいの衝撃だった。

すっかりしょげ返っていた僕に向かって染みは告げた。あの渋い声で・・・

「まあ、そう落ち込むな、本当のことを知るのに遅いっていうことは無いじゃないか」

まったくその通りだった。僕はこの怪しい隣人の言葉ですっかり目からうろこが落ちたような気にさせられた。

 新しいことを知るのに遅すぎるということも無い。孔子先生も、齢五十にして学ぶもまた大過なき、といっているではないか!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ