ロレント・コレア
「ロレント、おはよう!」
いきいきとした声でシェルミアが亜人の女の子に声をかける。
「あら、おはよう、シェルミアと柊磨。」
「おはようございます。」
と、柊磨は礼儀良くお辞儀をする。
「どうしたの?そんなに畏まって…」
「いや、なんとなく。」
「変なの…まぁ柊磨がたまに変な行動をとるのは今に始まった事じゃないけどね。まぁ礼儀正しいのはいいことよ、おはようございます。」
と、亜人の女の子は、少し微笑みながらおふざけ半分で柊磨にお辞儀を返す。
「ロレント、あのね、ちょっと柊磨君の事で少し話したいことがあるの」
シェルミアが亜人の女の子に少し小声で言う
「どうしたの?喧嘩でもしの?」
「えっとね、ロレント…実はね、柊磨君、記憶喪失みたいなの…」
シェルミアが遠慮がちに亜人の子に言う
「えぇっ!?ほんとにっ!」
亜人の驚き少し大きな声をだし、両手で柊磨の肩を掴んだ。
「ちょ、近いって、顔近い」
ほんの数センチので直接肌が触れてしまう距離
「ごめんなさい、シェルミアの前で…」
「いや、こっちこそ…なんか、すまん」
少し気まずい空気になる。
「それで、記憶喪失って本当なの?」
「あぁ、本当だ。シェルミアの事も覚えてないんだ。」
「どこまでの記憶が無いの?」
「んー…まぁ、それがわからないんだよ。」
昨日まではシェルミアの存在どころか、この少し変わった世界ではなかったのだが、そこまで言うのは野暮だろう、と柊磨は誤魔化しげに答えた。
「うーん…ということは、4年半以上の記憶はないの?」
と、亜人の女の子は柊磨に問う
「どうして、4年半ってわかるんだ?」
「私たち、ここの世界に転移?であってるのかな?まぁ、私たち亜人やエルフが暮らしてた世界と貴方達、普通の人間だけの世界がひとつになったのよ、それが4年半前の出来事ってこと。もっと詳しく言えば私たちの世界の大陸が太平洋と大西洋に転移したの」
亜人の女の子は柊磨に4年半前のことについて話した。
「へぇ、そんな事があったんだ。」
柊磨は驚き声を出した。
「そうなると、柊磨の記憶って中学の時になるけど、勉強とか大丈夫なの?特に、魔法の授業は危ないんじゃない?シェルミアと魔大行くんだったらかなりきついと思うけど…」
「やっぱり魔法って難しいのか?」
「最初はかなり難しいわ」
「慣れれば簡単に魔法使えたりする?」
「慣れたらだけどね、最初は魔導書が無いとろくに使えないわよ」
「魔導書って?」
「最初はまだ身体が魔力…つまりゲームで言う所のMPね。この魔力ってのは最初は身体に馴染んでないの、だから魔導書に宿っている魔力を身体に流し込んで魔力を使うのよ。使っていく事に、身体がだんだん魔力の流れを覚えるの、そして、魔導書なしでも魔力が身体に流れるって感じなんだけど、理解できた?」
亜人の女の子は長々と魔導書について説明する。
「大体理解した。ところでその魔力ってのはどうやって身体の中に流れるんだ?」
「そうね、簡単に言うと酸素みたいなものよ。呼吸と似たような感じね。」
「なるほど」
「まぁ、この話は長くなるから後で説明するわ」
「その事なんだが、今日は俺の記憶喪失について聞きたいことがあるから姉と大学行くことになってるんだ。」
「あぁ、それで、柊磨は私服着てるのね。」
「ちなみに、私も魔大に付いていくの」
シェルミアが相槌を入れる
「そう、じゃあ私は学校に行くからそれじゃ、また明日…っそうだ!自己紹介しなきゃね、ロレント・コレアよ、これからよろしく。」
「あぁ、よろくしく。」
「じゃあ、柊磨、シェルミア、また明日ね。」
「また明日」
ロレントは手を振り信号を渡っていく。
「じゃあ、車に戻るかシェルミア」
「うん」