感謝
今回作品は自分的にはあまりですが、読んで頂けたら嬉しいです。
少女は少年を拾い、城までつれていった。
城内に入るとその忌まわしい存在に対しすぐに注目が集まった。
「フリーデ様!何故その様なゴミを城になどお連れしたのですか!」
全身に銀色のローブを身に纏い、赤いタスキを下げた。茶髪の男が話しかけて来た。
髪により隠れているその細長い目を大きく開き、怒りを表していた。
「同じ種族に対しゴミとは何ですか、その命を存外に扱うなど、この国の宰相としてどうなのですか?」
宰相は今まで向けていた敵意がなくなり、元の細長い目をしていた。
「しかしですね。同じ種族だとしても何故その様なスラムのものを」
「命が消えそうであった、それだけです」
「それだけで、何故ですか!スラムのものの命など家畜の命と同等ですよ!」
「命は命です。それに前々から言いたかったのですが、その方針は私としましてはあまり好きではありません。確かに今はその考え方が一般です。しかし、命を存外に扱うのはそのものに対し失礼に値すると思われます。なので私はこのものを助けました。」
「しかしですねーーーーー」
「ーーーーー話は後です、そのものを大浴場に連れていき、洗ってあげなさい。そてと新しい洋服も用意し、私の部屋に連れて着なさい。」
そう言うと、少年を持っていた兵士とメイドの何人かがお辞儀をし、その場から消えて行った。
「フリーデ様、この事は王に伝えさせてもらいますよ。」
「それで結構です。それではまた、後ほど」
そう言うとフリーデは宰相横を通り過ぎて行った。
「何を考えておられるのだあのお方は」
宰相はそう言い、王に報告へ行った。
フリーデが自分の部屋で待っていると、ドアが叩かれた。
「どうぞ」
そう言うとドアが開き、兵士が少年を抱えていた。
「そこに横にさせなさい」
少年を自分のベットへ運び込ませ、横にさせた。
「ありがとうございます。下がっていて下さい。」
兵士は部屋を出、部屋はフリーデと少年の二人だけになった。
フリーデが少年に近づき、見てみると少年は綺麗に洗われ、その黒かった顔は白く輝いて見えた。
再び心が満たされるのを感じた。
「この少年はもう私のもの」
そう言い、フリーデの顔には不吉な笑みが溢れていた。
しばらくすると少年が動き目を覚ました。
「・・・・・・ここは?」
少年は起き上がり周りを見回した。
「・・・・・神様」
少年はフリーデを見、一言、溢れて出る様に言った。
その少年の目は輝き、涙を流していた。
「残念だけど私は神はなくただの人よ」
フリーデは少し笑ってみせたが、少年には冗談は通じないらしく、ただ、涙していた。
「いえ、あなたは私の命の恩人です。本当に感謝をしております。本当に本当に・・・・・」
最後は消え入る様な声で言っていた。
話題を変える様にフリーデは少し遮って話しかけた。
「ところであなたの名前は?」
「私は産まれてすぐに捨てられたので名前はありません」
「そうじゃあ、あなたって言うのも寂しいから『クランシ』ってどうかしら」
「名前を頂けるなどありがとうございます」
「いえいえ、それより何故あの様なところに倒れてたのかしら?」
クランシは今までの生い立ちを話した。
時には涙し、辛くもなったが何故かフリーデには全てを語らなければならないという心情を持っていた。
「そう、大変だったんですね。もう大丈夫ですよ。もうあなたは不安に怯え過ごす事はありません」
フリーデの言葉にクランシは涙を流すしかなかった。その涙は今まで出たことが無い暖かい涙だった。
「ありがとうございます、ありがとうございます」
「もう泣かないで下さい・・・・今からは私の前では笑顔をみせることわかりましたか?」
クランシは涙を流しながら、誠意いっぱいの笑顔を作り、フリーデに答えた。
読んでいただきありがとうございます