悪魔到来
今回長いです。
頑張って読んでください
クランシが兵舎に着くと城の方から火の手が出ていた。その火は黒く、普通の炎ではない事は遠くからでも分かった。
「あれは何だ」
兵士達は混乱し、周りに確認を取るものや、動けずにそれを見るもの、腰を抜かしその場から逃げ出そうとするもの、勇ましく声をかけ、兵士としての仕事を全うしろと言うもの多くの兵士が混乱の中にいた。
そんな中に一際大きな体つきをした兵士が他の兵士達よりも高いところに登り、兵士に向かって語っていた。
「兵士の諸君!今こそ、訓練の成果を出し、王に貢献する時では無いのか!
腰を抜かしているものは無理にでも立て!
状況が分からないものは、他の者達いもそうであるし、町のものはもっと分かっていない!
その中で俺たちがしっかりしなくてどうするの!立て!王都兵たちよ!!」
この兵士『ガルフ・スルート』はこの東の兵舎を管轄している兵士長である。
西にも同じように兵士長がおり、王都は基本的に2人の兵士長とその下に各グループのリーダーによって構成されている。
兵士長『ガルフ・スルート』の一言により、兵士の士気が上がったのが分かった。
(流石、兵士長さんだ。あれぐらいの兵士にならないと)
「兵士の半分は人々の避難を、私について来い!」
兵士達は半分は町へもう半分は城の方へ走って行った。
(フリーデ様が心配だ。急いで行こう)
クランシもガルフの班について行き、城の方へ走って行った。
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ガルフ達が城までの道に出ると周りは黒炎によってあたり一面燃え盛っていた。その炎の熱気により兵士達の肺は燃えるように熱くなるが、城に行くまで耐えていたが、何人かの兵士は途中で倒れて行った。残った兵士達は振り返る事は無く、ただ城へと歩を進めて行った。
ガルフ達が城に着くと城の門は燃え盛り原型を留めていなかった。まるで地獄の門のようになったその門を潜り、城内へと走って行った。
城内に入ると『ブログ』の魔法効果のおかげか、城内までは燃えていなかった。
城内の一番奥に位置する王の間に入ると、フリーデとヴァイスが倒れていた。
「フリーデ様!大丈夫ですか!」
フリーデはクランシの声に反応する様子は無く、それはヴァイスもそうであった。
とりあえず、二人を担ぎ脱出することにしたその時であった。
「御機嫌よう、下種族の諸君」
声の方へ目を向けると、翼の生えた男が空に立っていた。いや実際には飛んでいたと言うべきであるか。
その男が天井から降りてくると今までぼやけて見えていたのがはっきりと見えた。
男の服装は赤の生地に黒のラインが入ったスーツでまるで外の光景を物語っているようであり、その服装には見合わず、人間の顔はにカエルのような大きな目に口は耳まで裂け牙が見えて降り、鼻は点が二つだけあるように見えるモッペリとした鼻はであった。
文字どうり化け物という言葉が似合っていた。
「まあ、私を見て驚くのは当然でしょう」
その不気味な口から禍々しい声で語りかけて来た。
「私の名前は『ドラセル』といいます。
訳があり、今日、この王都に来させていただきました。」
「そのようとは何だ!」
ガルフがドラセルに声をかけた。
その声は怒りに満ちていることは明白であり、敵対心を隠す気などはない事が伺える。
「おやおや、かなりお怒りのようで、怖い怖い」
余裕の態度を見せながら、ドラセルを煽ってみせた。
「こいつ!舐めているのか!!お前はなぜこのような事をした!!」
「このような事とは?」
「町を見ろ!お前は多くの命を奪った!!」
「はあ、そうでしたか。」
「この野郎!!」
ガルフが自分の持っている分厚い剣を小枝を振るようなスピードで、抜くと、その風圧により、何人かの兵士は倒れた。
その剣は分厚く馬の首を跳ねれる程ある。
また、そこに刻まれた龍の彫りがその強さを誇張していた。
「私とやり合うのですか?」
「ああ、俺はお前をここで切る!!」
そう言うとガルフは剣をドラセルの頭に向かい振り下ろした。
ドゴッという鈍い音が鳴り、ドラセルの頭をカチ割った・・・・と誰もが思った。
剣はドラセルの頭ではなく、指と指の間に収まっていた。
誰もがその状況を理解する事が出来なかった。筋肉量の差は目に見えてガルフの方が圧倒的に上であるにも関わらず、ドラセルはその渾身の一振りを摘んでみせたのだから。
「くっ!まだだ!うおおおおお」
ガルフは更に力を込め斬りこもうとしているが、その切っ先は一切動く様子を見せない。
「何故だ!何故だああああああ」
ガルフの声は怒りよりも恐怖に飲まれているように思えた。
「何故?これは必然であり当然なのです。あなたが私よりも誇っているものなど何もないのですよ」
ガルフは自分の剣を離し、ドラセルから距離を取った。
「くそ、シャルフが入れば」
「シャルフとはどなたでしょうか?」
「お前にいう事などない!」
『シャルフ・セントラル』西の兵士長であり、ガルフの第一の親友である。
ガルフとは真反対の体つきをしているが、扱っている弓はガルフでも引く事が出来ないほどの豪弓である。何故、シャルフがその弓を引けるかと言うとそれは『魔法』の効果である。この世界には『魔法』が存在しておりそれは日常生活から戦闘にいたるまで多くの魔法が使用されている。西の兵士たちは魔法の優れている部隊であり、その中でも特にシャルフが扱う魔法は格別である。一方で東の兵士達は魔法が扱えない訳では無いが、西には劣り、基本的には魔法より肉体を鍛えている。また、魔法が劣っている分『魔法アイテム』を使用し身体能力を上げているが、そのような『魔法アイテム』で基本的に支給されているのが、『回復魔法』の『ポーション』であり、ガルフくらいになると『メガポーション』などの『上位魔法アイテム』が与えられるが、身体能力を上げるアイテムはその希少性から国を上げての戦闘以外では支給がされない。
ガルフはドラセルを睨みつけていた。
(今、あいつの手元に俺の武器がある、また、力では勝てない、アイテムもポーションしかない。どうする)
ガルフが考えている間、ドラセルから唐突に話をかけてきた。
「そういえば、先ほどあなたがたも見たいに立ち向かってきたもの達が居ましたよ」
急な語りかけにガルフは少し思考をしているのが止まった。
「いや、実に滑稽でした『俺たちがここであいつを食い止めなければならない!だから、みんな俺と共に戦ってくれ!』と言って全員で掛かってきましてね」
兵士達が望んで居ない答えがあるのは分かって居た。しかし、その発言から耳を話すことは出来なかった。
「私が負けるはずなど無いのに、ね」
そう言い、ドラセルは徐に空を飛び、何かを持って来た。
「彼らはこんな顔をして居たんですよ」
ドラセルは冷たい笑顔を見せ、手に持っているものを見せた・・・・・・頭が手からぶら下がって居た。
その顔は恐怖に溺れ、涙を流したであろう、目が赤く腫れて居た。
「あ、あ、シャ・・・シャルフ」
その顔に一番初めに反応したのが、ガルフであり、その顔からは怒りは消え、恐怖伺えた。シャルフほどの戦士が涙を流し恐怖して死んだ。
その顔を見、ガルフは諦めたのだ。勝つという闘争本能に。
「し、し、死ぬうううう」
そう言い、ガルフはドラセルに背を向け走って行った。
その様子を見た他の兵士達も逃げていく。
「はあ、あなたがたもこの方のように懸命に勇ましく散れないのですかね」
そう言い、少し落胆しながら、右手を上に上げ、下に振り下ろした。
『裁きの炎』
ドラセルがそい唱えると、逃げて居たもの達の体から炎が上がった。
「うああああああ」
「た、助けてくれうえええ」
断末魔それ、それはまるで地獄の拷問を受けているようであった。
一人、また一人と倒れていくにつれ、断末魔は小さくなっていく。
最後に残ったガルフの断末魔が消えるとドラセルは背を向け羽を広げた。
「待て!!」
ドラセルは驚きを見せ振り向いた。
そこには一人の少年が立って居た。
(あり得ない)
それが一番初めに頭をよぎった。
(何故、立ている。)
不思議に思い、少年に尋ねる
「あなたは何故だ燃えないのですか」
「それはわからない!だが一つ言えるのは俺はお前から逃げない!!」
ドラセルは納得の表情を見せた。
『裁きの炎』
これは術者が悪と思ったものだけに炎により燃え盛る魔法である。
先ほどの状況でドラセルが悪だと思ったのが『自分の命を捨て、戦わない戦士』である。
これとは反対の意見を持っている少年が立っているのは当然である。
「なるほど、分かりました。では、特別にその剣を仕舞えば、今回は見逃して上げましょう」
だが、少年は剣を降ろすことは無かった。
「私の命はフリーデ様のもの!この命フリーデ様に捧げる為にある!」
「そうですか、でもここで死を選ぶのは賢いとは言えませんよ。その姫が目を覚まし、あなたが居ないと辛いのでは?」
「いや!それこそフリーデ様の近衛兵として最低な行いだ!自分の命はこのフリーデ様のもの!フリーデ様が愛した町のために死ねるのであれば本望だ!!」
「分かりました。では、私も行かせてもらいます。」
お互いが構え、戦闘に入ろうとした時、ドラセルの顔から急に汗が滲みでて居た。
「いや、やはり今回は辞めにしておきます。私も疲れましたので」
「逃げるのか!!」
「逃げではございません。戦略的撤退という事です。」
「待て!!」
「私はこれで、またお会いしましょう」
そう言いドラセルは天井を突き破り空に消えていった。
「くそおおおお」
城内は少年の声だけが響いていた。
ありがとうございました。
次回は新章に入ります。