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《暴徒》  作者: 低学歴snob
Case 1.
8/15

Case 1.「人を疑う、」

物語の時系列とは関連のない番外編のお話です。

汗をかいたグラス。溶けた氷が崩れる甲高い音が響く。


喫茶店のボックス席で机を挟み座る、男2人のペアと男女のペア。言葉を交わさないままの睨み合いが続けられている。


探偵社に来る依頼の約7割が特定の人物に対する身辺調査だ。その中でもとりわけ多いのが浮気や不倫などといった男女間の問題。


しかし、なぜこうなった。____



時は遡ること一ヶ月半ほど前。


フラりとどこかへ出掛けてしまった音喜多に代わり事務所の番をしていた日のことである。20代半ばから後半ほどの男性が事務所の扉を叩いた。


「では、お名前とご職業など伺ってよろしいでしょうか。」


事務所の一角にあるパーティションで仕切られた応接室。お茶を差し出しざまに話へと入った。


遠藤(えんどう) 新次(しんじ)SE(システムエンジニア)をしています。」


中肉中背で黒髪に眼鏡。服装は白いポロシャツにベージュのチノパン。素朴で真面目そうな印象だ。


「では、依頼内容を伺います。」


バインダーに挟んだ書類に名前などを記入後本題へと移った。


「彼女の身辺調査をお願いしたいのですが。名前は宮内(みやうち) (みお)です。」


そう言ってカバンから一枚の写真を取り出し、差し出した。


写真に写っているのは公園のような場所でピースをする、白いワンピースに紺色の薄いアウターを羽織った大人しそうで美しい女性だ。____



依頼内容をまとめると、


2年ほど付き合い半年前から同棲をしている彼女、宮内 澪さん。彼は彼女との結婚を考えていてプロポーズの準備に奔走中らしい。しかし、最近彼女が友達の家に泊まると言って帰らないことが度々あるとのこと。


「大人しく、優しい彼女に限ってないとは思うのですが。見ての通り、私には不釣り合いなほど綺麗な女性ですし、不安なんです。同棲をする前にも度々連絡が取れないこととかもあり、浮気ではなくとも結婚をするにあたり一度調べてもらおうと。」


とのことだった。



そして、依頼を受けた次の日から調査を始めた。


彼女はオーガニックの食材や化粧品を取り扱うショップに勤務している。問題は調査初めて5日。依頼者に特に怪しい点は見られないと報告を終えた次の日のことだった。


仕事を終え、職場から出てきた時だった。彼女の携帯が鳴る。しばらくの通話の後、彼女は家路を逸れた。


彼女が向かった先は、円山公園の時計台のある広場だ。


時計塔に背を預ける男がいた。草臥(くたび)れたカーキ色のコートを着た優男だ。彼女がその男を見つけると小走りに駆け寄った。その後、公園内を談笑しながら散策してその日は別れた。


調査を続けると、5~7日に1回のペースで喫茶店や公園で逢瀬を重ねていた。


いつも男が女を待っていた。____



依頼者への報告は週に一度程度行っている。


「で、どうですか。やはり、二股なのでしょうか。」


不安な面持ちで結輪を求める遠藤さん。


「いや!まだ決まったわけではありません。談笑や散歩はしていますが、決定的な瞬間がありません!結果を出すには尚早(しょうそう)です!諦めないで!!」


机に両手をつき、身を乗り出してしまった。だが、力が入るのも無理はない。


そうして報告を終えた。____



ガタンッ_


報告の帰り、自動販売機で缶コーヒーを買った。


プシュ、カコ_


真っ黒な液体を喉に通した、気分を落ち着けてくれる特有の香り。


「音喜多じゃねーーかァ!!」


浮気相手の優男は音喜多だったのだ。


それから数日後。決定的なことが起きてしまった。


ある日の帰り道、電話が鳴った。後を追うと彼女はホテルの中へと姿を消した。(おときた)が待つであろう部屋へと。____


この話はもう1話で完結します。その後二章に入ります。

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