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《暴徒》  作者: 低学歴snob
二章 偶然か必然か
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10話 「音喜多の想像」

「お集まりいただきありがとうございます。」


十数分前に後にしたばかりの事務所へ、三度訪れた。


「なッ。そうか、これはアンタの仕業か。」


「おい!どういうことだよ!コイツらまだ居やがったのか!」


守屋とチンピラの密会の現場に足を踏み入れる。


「盗み聞きとは趣味の悪い。いつから聞いていた?そして、これはなんの真似だ?」


守屋が手には、手帳から丁寧にちぎられた縦長の紙。



“私にはもうに出来ない。この件からは下りさせてもらう。”



と、書かれている。他でもない、音喜多が書いたものだ。


「三顧の非礼を、まずは詫びましょうか。それに、私は何も聞いてはいませんよ。例え聞いていたとて、私一人の証言ではなににもなりませんしね。」


始めこそ驚きを見せていた守屋であったが、密会が見つかったにも関わらず今は落ち着き払っている。どうあっても音喜多1人の証言だけでは足りないという事を理解している。喉元に刃物を突きつけられていても、それが絶対に届かないことを知っているのだ。絶対的な証拠は自身が保管している。しかし、それは本来、守屋だけの権限では取り出すことは出来ない。まして、無関係の人間などは。


「音喜多さーん。呼んできましたけど…って、チンピラ!!」


「あ゛ん?」


小悪党然とした睨み利かせた先は、助手だ。


「な、なんですか!」


「チンピラにチンピラと言って、怒るのは当然ではないかね?」


虚勢を張ってみせるも、怒って当然といえば当然なのだ。


「なんじゃい、おぬしら。わしゃ、腹減って仕方がないとゆーのに。わざわざ飯時に呼び出すってこたぁ、なんぞわかったんか?」


「お父さん、もう召し上がられましたよ。それで、そちらの方は?」


守屋の義父である熊夫、妻の朋子だ。


義父(おとう)さん、朋子…。一体、なんのマネですか。」


静かに怒りを燃やし、家族に知られる不安。守屋は、血が引いてしまって冷たい左右の手を何度も握り返す。


「謎解きを始めよう。必要なものは揃った。いや、そのはず。というのが、現段階の正しい状況か。確認してからの方が確実だが、そこの君に逃げられては困るからね。」


明らかに着衣が汚れている。と言っても、シミなどではない。白い何かの破片のようなものが多量に付着しているのだ。あの廃屋の塗料片だ。普通にしていれば、そこまで衣服に付くことはないだろう。現に音喜多らには付着していない。塗料を踏み砕き、舞い上げるようなことをしなければ。


急いては事を仕損じる。世の常である。唯一の証拠に手を出せない現状。ならばと、新たな証拠の創出を(くわだ)てた音喜多。本来であるならば、その目論みに(ほころ)びがないよう確認を行ってから謎解きに移りたかった。


「仮宿の片付けは、もう済みましたか?」


「チッ。」


自身の行動を見透かされているようで苛立ちを募らせる。


「では、改めて。お集まりいただきありがとうございます。」


無駄に演劇調な音喜多。腕を払い、腰を曲げ、片足を引き、頭を下げる。


「さて、推理を始めましょう。」_




「事件の推理には、3つの要点がございます。」


音喜多が得意気な顔をし、三本の指を立てる。


Whydunit(ホワイダニット)、動機。」


薬指を折る。


Howdunit(ハウダニット)、手口。」


続いて中指。


「そして、Whodunit(フードニット)、犯人。」


最後に人差し指。


「事件だァ?なにも起こってやしねェよ!」


業を煮やしたチンピラが怒声を上げる。


「いえ、起こっておりますとも。実際に観測された事件は、言うならば時代錯誤も甚だしい墳墓発掘罪、"墓荒らし"。」


「そりゃ、そこのボケが来てやがるジジィの妄言だろうが!」


「観測されてはおりませんが、今回の事件が私の推理通りであるならば、死体損壊罪に加えて、変死者密葬罪なども適用される可能性がありますね。」


重々しい罪状を並べられチンピラが奥歯を噛み、押し黙る。


Whydunit(ホワイダニット)!動機。ここばかりは、完全に想像の域を出ませんでした。」


「さッ最初から全て妄想であろうが!」


「金に困ったか、若しくは誰かに脅されているか。なんて、私は想像しているのですがね。」


これは本当に音喜多の想像でしかない。素人紛(しろうとまが)いの犯人が行うには(いささ)か荷の重い犯行であるから、上に誰かがいると考えたのだ。


Howdunit(ハウダニット)!手口。今事件において1番のポイントだ。良くもこんなことが思いつくものだよ。木を隠すなら森の中ということか。」


明言を避けて確信を突いていく音喜多。当事者の表情だけが険しさを増す。


Whodunit(フードニット)!犯人。これは、言うまでも無さそうだね。」


態度、表情。何を取っても一目瞭然である。


「あッ、貴方はいったい何を…。主人がなにをしたって言いたいんですか!」


のらりくらりと明言を避けて推理を進める音喜多に、守屋の妻である朋子が声を荒らげた。


「そうですよ、音喜多さん。結局、なぜ"墓荒らし"は行われたって言うんですか。」


助手も話が見えないと、疑問を口にする。


「そこのチンピラが遺体を焼却し、守屋さんが遺骨を他者の骨と共に墓に埋葬したのだよ。」


声を低くして、ピシャリと言い放った。


前回までの話を投稿当時に読んでくださっていた方には、大変長い期間が空いてしまったことを謝罪します。


仕事の方の忙しさがやっと落ち着き、これからは速いペースでの投稿を目指します。


お付き合いただけたら、幸いと存じます。

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