結果のお話
「この度はお悔やみ申し上げます」
三匹の母へ様々な列席者がそう言っていく。
「狼の襲撃で一度に三人ものお子さんを亡くすなんて……」
「あの人の子供達は狼と相討ちになって亡くなったそうだ」
「自らの命をなげうって他の人達の為に狼をやっつけた、素晴らしい英雄達だ」
事件のあらましを聞いた人々は口々にそう言った。
お母さん豚はトリトンの家に入ると、扉を閉めて肩を震わせた。
「うっ、うっ、うっ、くっ、くくくくくく、ハハハハハハハ!!」
その口から漏れるのは嗚咽ではなく哄笑。
「ありがとうよ、子供達。お陰で私は三匹の英雄を産んだお母さんだ。あんたらにかけた保険金だってがっぽり入ってくるしこの家だって私のもんだ」
母豚の笑いは止まらない。
「モノトン、あんたの銃の製法を売ればそれだけで一財産できるし、トリトンあんたの薬の製法だってそうだ」
母豚はくるくると部屋の中で踊り続ける。
「ジートン、あんたが大事にしていたこの人形達もマニアに売れば尋常じゃないほどの値がつく。本当に良くやったよあんたたち」
母豚が目をやるのは庭。
そこにはトリトンだけでなくモノトンやジートンの骨も撒かれていた。
「あぁ、本当に笑いが止まらない」
煉瓦の家に響くのは彼女一人の笑い声のみ。
自らの子を殺しても、尚笑い続ける彼女の胸の中には、きっと狼が住んで居るのだろう。
――子豚を狙う狼は《完》――