裏のお話
トリトンは音がしなくなった鍋の蓋を持ち上げる。
「やっぱりかい、兄さん」
そこには狼の毛皮を被ったモノトンの姿があった。
「ふっふっふっ、くっくっくっ、あーはっはっは!」
トリトンは堪えきれないと言ったように笑いだす。
「兄弟を邪魔に思っていたのがあんただけだと思っていたのか?俺もあんたらのことは大嫌いだったよ!!」
熱で真っ赤になり、苦痛で歪んでしまった顔は何も言葉を返さない。
「なぁ兄さん、あんたが銃を造れることなんか既に知ってんだよ。それを使って狼を殺し、狼になり代わったこともな」
トリトンはそう言いつつ椅子に腰を下ろし頬杖をつく。
「でもなぁ、ジートン兄さんの家に火を付けるってのは少し詰めが甘かったな、あれじゃあ逃げることだって可能だろうに。まぁそれを見越して俺が睡眠薬盛っていたから問題は無かったんだが」
トリトンはモノトンの煮込みスープを皿に盛り、それを口に運ぶ。
「あぁ最高だ、最高の味だよ。どうだい兄さん、弟の手のひらの上で踊らされた感想は。そうかい、死ぬほど悔しいってか、くっはははは!」
しばらくの間、煉瓦の家にトリトンの笑い声がこだましていた。