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隣人=没落者  作者: 華四季
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ニートは大家さんと親子も同然

8ヵ月放置した末にやっと2話目。カメも驚きの更新速度

 美しい桜が咲き誇る公園のベンチには麗らかな春の訪れを知らせる日差しを捻じ曲げるほどの闇のオーラを放つ人影があった。

「あぁーだる…ったくせっかくレアキャラが貰えるチャンスのクエストだったのに…だったのに…なんで、なんで換気掃除と防虫剤配布のために部屋を追い出されないといけないの!?」

「年末の大掃除じゃあるまいし、掃除も換気も防虫剤配布もやらなくていいでしょ…!」

そう愚痴をこぼすのは20代半ばの黒髪の女性だ。…女性、といっても外見に女性らしさは欠片もない。赤色のジャージを着用しており、ジャージには隅に『阿良々木中学校 田中』と刺繍が施されている。

後ろ髪は腰ほどまであり、手入れのされていない低木のようにぼさぼさだ。前髪もギリギリ口が隠れるか隠れないかという程に長い。こちらも後ろ髪同様、手入れのされていない低木のようだ。とても女性の髪とは思えない。唇も乾燥してガサガサだ。

外見で唯一の女性らしさを求めて胸に視線を落とせば……この人は本当に女性だろうか?いや、女性だろう。声は男性のように図太くない。声だけは女性だとすぐにわかるものだった。若く少し高めの声だが、色気がにじみ出ていた。声だけ聞けば男性は皆、虜になり、罵られたいと思うであろう声だ。

「はぁ…お腹空いた…コンビニでも行くか…」

黒髪の女性はそういうと気怠そうにゆっくりと立ち上がり公園を出た。



「いらっしゃいませぇ~。只今、春限定の新春サービスで当店の商品は二割引きとなっております」

店に入るとアルバイトが元気よくお出迎えの一言を言う。

(うわぁー元気だな。元気すぎて逆に目障りだ…元気のない私への当てつけか…)

黒髪の女性はアルバイトを一瞬見ると、店内に視線を移した。

「夜ご飯も買って帰るか…」

そういってお弁当コーナーに向かうが、お弁当コーナーに到着する前に黒髪の女性の前に『カップル』という名の壁が立ちはだかる。

「あぁー!新作のアイスだ!しかも期間限定だよ!ねぇ、ゆうちゃんこれ買おうよ!」

「なぎ、お前今金欠だってさっきまで言ってただろ」

「あ、そうだった…うぅ~…じゃあゆうちゃんこれ買って!」

「バーカ、俺も金欠」

「あぁ…諦めるしかないのかな…」

「…はぁ。なぎ、俺も半分金出すからなぎも半分出して、それで一個買おう」

「え、でもそれじゃあ私しか食べられないよ?」

「お前、ほんっとうにバカだな。二人で金出すんだからアイスも二人で食べるんだよ」

「あぁー!そっか!それだとゆうちゃんも私も食べられるね!流石だよゆうちゃん」

カップルは黒髪の女性に気づかずに通路をふさぎ、自分たちの問題を解決してしまった。

(なんで、カップルの仲良し劇を特等席で見ないといけないんだ…!クソッすげぇ蹴ってやりたい。リア充爆発しろ。二人の仲も手に持ってるアイスのようにキンキン冷えちまえ)

そんなことを思い、増していく黒髪の女性の闇のオーラにまだカップルは気づいていない。

「はぁ…あの、そこ通りたいんですけど、邪魔なのでどいてください」

「え、あ!ご、ごめんなさい…」

「すいません」

意を決して黒髪の女性が言うとカップルは一言誤り道を開けた。黒髪の女性はようやくお弁当コーナーにたどり着くことが出来た。

「なにあの人。いつからそこにいたんだろう…やだ、ちょっと怖い…それになんか臭かった…」

(4~5分くらい前からいましたけど…!それに臭くてすいませんね!)

カップルがボソリと言った言葉をしっかりと聞いてしまい心の中で文句を言いながらおにぎりと弁当を選ぶとレジへ向かい、会計をする。

(あ、お金足りるかな…)

そんなことを思いながらギリギリ代金を払うことが出来て、外へ出る。

「あ、いた!サリアちゃん!お部屋のお掃除と換気と防虫剤配布、終わったわよ」

そう言って年配の女性が手を振りながら近づいてくる。

「あーそうですか。意外と早かったですね大家さん」

どうやらこの年配の女性は大家さんで黒髪の女性は『サリア』という名前らしい。

サリアも大家さんに近づく。

「えぇ、もっと片づけに時間がかかると思ったんだけど、サリアちゃんの部屋にあるもの、よく見たらゴミばかりで逆に早く片付いたのよ。捨てるだけだから」

「まぁ、二ヵ月くらいゴミ出してませんからね」

「あら、そうなの?!どうりでゴミが多かったのね…ところで、サリアちゃんは何日くらいお風呂に入ってないの?」

大家さんはそう言いながら鼻をつまんだ。

「あ、やっぱり臭います?」

「だいぶ、というかかなり臭いわよ…」

「PC画面とずっと向き合ってたんで3週間くらい入ってないですね」

「どおりで臭うわけね…女の子なんだからお風呂に入って清潔にしとかないとお嫁にいけないわよ」

「いや、べつに私は行けなくても…」

「とにかく!帰りましょ。帰ってお風呂に入りなさい」

大家さんはサリアの言葉を無視して歩きだした。サリアも大家さんの後を追う。はたから見れば二人は親子同然だ。

「あ、大家さん」

「なあに?」

「あの部屋は私の家ですから今度から追い出すようなことはしないでくださいね」

「…サリアちゃん…家賃も1年滞納して水道代や光熱費、食費、着るもの等、衣食住を私が代わりに出してるから事実上はサリアちゃんは居候扱いよ。入居者扱いにはならないわ」

「で、ですよねぇ…」

サリアは肩を落として大家さんと一緒にトボトボと家路につく。


「あ、聞いてください大家さん」

「今度は何?」

「さっき、コンビニでおにぎりとお弁当を買ったら、お財布の中身が一円になったんです」

「…それがどうしたの?」

「今週どころか、明日の食費が無いのでお金くださ「働きなさい。ニートでゲームばかり買うからそうなるのよ」」

「はい…了解です」

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