85.宝玉の暴走 ★
挿絵3枚の内、1枚だけやっつけでアップしとります。2週間以上は投稿間隔をあけないようにしたいと思い、頑張ったけど間に合わなかったっすわ。
その内書き直して再アップするつもりです(´・ω・`)
海辺側からの吹く風が冷たくなってきている。日が沈み始め、茜色の空に染まってきている時刻だ。
だが、不自然な気温の下がり方に警戒を強める。海辺側に立つモルセルはアイルを人質に俺たちを見下ろしている。
まるで人を見下すような視線に、この辺一帯の気温が下がっているのではないかと錯覚するくらいだ。いや、もしかしたら『元素の宝玉』の副次的な力が作用しているのかもしれない。
距離があっても感じられるくらいに力を感じるのだ。
「ウジ虫どもが……。私に刃を向けるとはな」
モルセルの声に怒気が含まれている。右手に握られている宝玉が黒い輝きを放ち始めていく。
「お、お父様……! いけませんわ! 宝玉が!!」
「黙れっ! 半魚人!! 私を父と呼ぶな! 虫唾が奔る!」
「……っ!!」
「宝玉を手に入れた今、お前に価値などない。……いや、其処のウジ虫どもを足止めにできる価値ぐらいはあるか? くくく」
実の父親に否定されアイルの目じりに涙が溢れるのが見えた。
その光景に沸々と怒りが込みあがってくる。アイルは実の父親の顔を知らずに育った。それでも自身に命を授けてくれた父を愛していると言っていたのに、あの男の心には届いていないようだった。
「最低ね。あの男……。今ここで殺してやろうかしら」
「奇遇だな妹。俺も同じことを考えてた」
「落ち着け二人とも」
今にも斬りかかりそうなジークとソフィをアリゲルが静止させる。2体の魔兵士がアイルと従者に剣を突き付けているのだ。一歩でも動けばアイルの命は危ないだろう。
「ふはははは! 手も足も出ないようだな。如何に強者と言っても人質を取られれば只の人。滑稽よな。どうした、騎士隊長殿、私を捉えるのではないのかね? くくく」
「くっ……。モルセルめ……」
ヴィクセルが苦虫を噛みつぶしたような表情をしている。
「くはは! いい表情をするではないかヴィクセル。そうだ、そういう表情を見たかったぞ! よくも私の計画を邪魔をしてくれたな。いい気味だ。……、だが、何故お前は余裕の表情をしている。――シノノメ・トオル」
一頻悦に入っていたモルセルが俺へと視線を向けてきた。
「余裕? そりゃそうだ。なんの問題もないだろ。なぁ、リリィ?」
俺がリリィの名前を呼んだ刹那、アイルたちを束縛していた2体の魔兵士の頭が吹き飛ぶ。
モルセルの死角にあたる遥か上空にフロウバードの姿。リリィが構える『ヴァルキリーの弓』から放たれた光の矢によって魔兵士が崩れ落ちていく。
『当然よっ!! シノ、一気に行くわよ!!』
ゴンザレスの通話機能からリリィの声が聞こえてくる。更にリリィは上空からモルセルへと連続で矢を放っていく。矢はモルセルの足もとに命中し連続小爆発を起こす。
「クソがっ!! ぬおああああああああああ!!」
モルセルは結界を張りながらアイルから距離をとった。その隙をグレゴリーは見逃さず、フロウバードを低空飛行させてアイルと従者を救出し直ぐに上空へと飛翔していった。
『ふはは! マーメイドの嬢ちゃんは救出しておいたぜシノノメ!!』
「ははっ! いい仕事するじゃないか! あのおっさん!」
ジークが歓喜の声を上げると直ぐに走り出した。続いてアリゲルとソフィも駆けだしていく。千載一遇のチャンスを見逃さず直ぐに行動に移すのは流石だ。
俺も直ぐに動かなくては。駆けだそうとした時、ゴンザレスから通信が入ってきた。
『マスター!! 宝玉から異常な力を感知!! これは……、ラファーガルの時と同じものです!!』
「なんだって!?」
モルセルを中心に巨大な竜巻が天まで渦を巻いていた。当の本人は苦しみもがいている。
まさか……、暴走している?
先に駆けだしていたジーク達は弾き飛ばされ膝を付いていた。どうやら突っ込んた時に巻き込まれた様だった。
『ぐっ!! 竜巻に吸い込ませそうだ!!』
『グレゴリーさん! マスターの元へ戻ってください!!』
『お、おう!』
ゴンザレス達のやり取りが通話から聞こえてくる。すぐさま俺の元へゴンザレスが降り立ってきた。
「マスター!」
「ゴンザレス!!」
飛びついてきたゴンザレスを抱きとめる。
「シノー? 私も役に立つでしょ?」
「ああ、サンキューなリリィ」
近寄ってきたリリィの頭を撫でると「えへへ!」と笑顔になる。
「し、シノノメ……あの……」
アイルが近づいてくる。
「アイル! 無事か!?」
「え、ええ。大丈夫ですわ。それより、シノノメは『神の使い』なのですね」
神の使い? なんだそりゃ?
「我が一族が守護していた宝玉は……、父の手によって暴走をしてしまいました。このままでは、この国……、いえ世界が終わりへと近づいてしまいます」
「世界の終わり……」
やはり元素の宝玉の巫女であるアイルは何か知っているようだ。
「マスター! モルセルが――!」
モルセルの方へと向く。巨大な竜巻の中でもがき苦しむモルセルの体が徐々に異形の形へと変わっていく。
変質が終わると竜巻は消え、天まで立ち昇る巨大な大蛇の竜が現れた。
「ば、ばかな!! あれは『大海竜・リヴァイアサン』じゃないか!! なんで幻竜種が……。おい、アイル嬢ちゃんよ! あんたらの守護している宝玉ってのは人を古代竜に変えちまうものなのか!?」
「いえ、違いますわ。ですが、父の手によってあのような形になってしまったのでしょう。お願いです。シノノメ、どうか……父を。これ以上――」
アイルは悲痛な表情を浮かべ懇願してきた。実の父に拒絶されてもなお、純粋に父を想うアイルの心に胸を締め付けられる。
竜へと変わってしまったモルセルへと向く。どの道やるべきことは一つしかない。
俺はアイルの願いに応えるべく行動で示す――。
「クイックオープン――。『暴竜・ファルベオルク』・『水竜・ガリオス』」
左右の手の空間がガラスの様に弾け、2本の竜剣が顕現した。それらを握ると全身に力が溢れてくる。
「アイル、自分を責めるなよ。寿命を犠牲にして巫女としての使命を果たしてきたんだろう? お前は悪くない。今日までよく頑張ったな」
誰がアイルを責められるだろうか。彼女はリリィと同じだ。『元素の宝玉』によって人生が翻弄されていただけだ。
なら、俺が『元素の宝玉』を回収すればいいだけのこと。そうすればアイルは宝玉から解放される。
「……っ!!」
「行くぞ!! ゴンザレスッ!!」
「はいっ!! 全力でサポートいたします!!」
俺は『大海竜・リヴァイアサン』へと走り出した――。




