06.一家団欒
部屋を出て食事が並べられているテーブルへと向かうと、既にダルク一家が席についていた。
テーブルの上には主に野菜料理中心のメニューが並べられている。
そしてダルクは先程渡したポーションを使ったのだろう。傷口を巻いていた布は外されていて、体には傷が無くなっていた。
「おお、来たか。さ、席についてくれ」
ダルクの隣の席が空いていて、そこに勧められる。向かい側には奥さんとメイが座っている。
「シノさん、旦那の為に貴重なポーションを使っていただき有難うございます。それとごめんなさいね、もっと良い料理を作れればいいんだけど、こんな物しか用意できなくて」
「いえいえ、とんでもない。とても美味しそうじゃないですか。それに料理をご馳走していただけるのに感謝ですよ」
お礼の言葉を言うと、ミリーは微笑む。
「あらあら、そう言ってもらえると助かるわ。ささ、どうぞ冷めないうちに召し上がってください」
「シノ、どんどん食べていいからな。うちの嫁さんの料理はうまいぞ」
「ええ、遠慮なくいただきます」
本当に遠慮なくガツガツ食べた。
◇
「うっぷ……」
ミリーの手料理は本当に美味しかった。あまりの食いっぷりにダルクが笑っている。
「わはは、いい食いっぷりだったな! 美味かっただろ?」
「ええ、とても美味しかったです」
「まぁ、ありがとう。作りがいがあるわ」
3人して笑いあっていたが、メイ一人だけそっぽを向いていた。
どうやら、3人家族の中に他人が入っているのが気に入らないらしい。
まいったな……このくらいの年頃の女の子は扱いが難しいからな。
さて、どうしたものか……。あ! アレをあげてみるか!
閃いた策を実行すべくメイに話しかける。
「そうだ! メイちゃん、食後のデザートは食べたくないかい?」
デザートという言葉に反応したのか、チラリとこちらに視線を伸ばす。
「……デザート?」
お、食いついたぞ。 もうひと押しだな。
「そうそう、甘くて美味しいスイーツあるんだけど、食べないかい?」
「なんだ、シノ。そんなもの持っていたのか?」
ダルクもミリーもきょとんとしている。
「まぁ、村長の家で話した能力でちょっと。料理をご馳走してくれたお礼にと思って。それじゃ出しますよ」
指をパチンと鳴らして起動言語を唱える。
「クイックオープン、チョコレートパフェ」
テーブルの上の空間がガラスのように弾け、透明なグラスに入ったチョコレートパフェが具現化された。
様々な焼き菓子の上に甘くとろけるチョコレートとアイスクリームをふんだんに使った絶品デザート。
突然テーブルの上に現れた食べ物に、3人は絶句する。
「お、おい……シノ、これがシノの能力なのか……?」
「まぁ、凄い……! 私、錬金術って初めてみました!」
二人は驚き、メイは口をぽかーんと開けていた。
錬金術? この世界には錬金術なるものもあるのか。 まぁ、奥さんには勝手に誤解してくれた方が説明しなくて都合がいいか。
「ええ、そんなものです。さ、メイちゃん。どうぞ」
銀色のスプーンと共にチョコレートパフェをメイの前に持っていく。
驚いた顔のまま、メイはチラリと視線を此方に合わせる。
「美味しいよ? 食べてごらん」
メイは銀色のスプーンを持ち、恐る恐るチョコレートパフェへと伸ばし、上に乗っているアイスクリームを救う。
そして意を決めたかのように口へと運ぶ。目を数度パチクリさせた後、驚きの声を上げる。
「――美味しいっ!! なにこれ! なにこれ! 甘くて冷たくて凄く美味しいよ! お母さん!!」
余程気に入ったのだろう。驚きながらもチョコレートパフェをどんどんすくい、口へと運んでいく。
「あら、そんなに美味しいの? お母さんにも一口くれる?」
「うん!!! お母さんも食べて!! 甘くて凄く美味しいから!!」
メイはハシャギながらミリーへとチョコレートパフェを渡す。
ミリーは一口食べると、顔をふにゃりとさせた。
「まぁ……美味しい……」
「でしょ!! でしょ!! 美味しいでしょ!!」
ミリーはメイへとチョコレートパフェを戻す。するとメイは顔をほころばせながら、パクパクと頬張っていた。
「へー、見たことの無いお菓子だな。そんなに美味しいのか」
「ええ、甘くてほっぺたが落ちてしまうかと思うほどに」
ミリーはうっとりしている。
「ご馳走様!! シノお兄ちゃん! こんなに美味しいもの初めて食べたよ! ありがとう!!」
早いな、もう食べ終わったのか。しかし、相当気に入ったみたいだ。目をキラキラと輝かせている。
なんか……可愛いな。
「しかし、そんな食べ物を作り出すなんて凄いなシノ」
「いえ、これは俺の国で作られているお菓子なんです。もっと沢山の種類のお菓子があるんですけど、これはそのうちの一つですね」
すると、メイが食いついてきた。
「こんなに美味しい食べ物がシノお兄ちゃんの国にいっぱいあるの!? いいないいな~、メイもお兄ちゃんの国に行ってみたい!!」
「こらこら、メイ。シノを困らせるな」
ダルクは苦笑してメイを嗜めると、メイは頬を膨らませていく。
「む~~~~~~。あ! そうだ! じゃあ、メイがシノお兄ちゃんのお嫁さんになれば解決だ!」
はい? 何を言っているんだこの子は。まったく……本当に可愛いな!
『マスターはロリコンなのですか』
突然、ゴンザレスの声が頭の中に響いてきた。
(うわ!? 勝手に思考を読まないでくれよ、思考を!! ってか、ロロロロリコンじゃないよ!?)
『………………』
そこで黙らないでくださいよ、ゴンザレスさん。居た堪れない気持ちになるんですが……。
頭の中でゴンザレスに抗議の声を上げていると、メイが俺の膝の上に乗ってきた。
「えへへ♪」
満面の笑みを浮かべている。
「あらあら、メイったらシノさんに懐いちゃってまぁ」
「ははは、全くだ。お父さんはちょっと悲しいかな」
3人とも笑顔で笑っている。
ダルク一家の笑顔を見ていると、家族っていいなって改めて思った。




