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51.乙女戦士

 東雲が海辺でマーメイド族と話している少し前――。


「んぅ……ありぇ……?」


 ベットの上で寝ていたゴンザレスは主の温もりを求めるように手を伸ばす。だが、いくら手を動かしても空振りに終わった。


 寝ぼけ眼で目を擦りながらベットから起き上がり、辺りを見渡す。ベットの上には主の反対側に寝ていたリリィだけが寝ていた。


 その寝顔は幸せそうにスヤスヤと寝ている。


(あれ……マスターはトイレかな?)


 この時のゴンザレスは眠気が勝り、頭が働かない状態であった。


 いくら優れたサポートAIだろうと、日々時間が経過するに連れて感情豊か溢れる人間へと近づいている。それはヒューマンエラーも然りである。


 そういった人間臭さを、ゴンザレスは無意識のうちに学び成長していた。


「喉が渇きましたね。確かテーブルの上にお水が……あれ?」


 ゴンザレスはテーブルの上に置いてあった紙に気づく。寝る前には確か置いていなかったはずだと、昨夜の出来ことを思い出す。


 紙を拾い上げそこに書かれていた内容に、ゴンザレスの眠気は吹き飛んだ。


 『ちょっと外で竜剣の契約を済ませてくる。直ぐに戻ってくるから』と書かれていた。


 ああ、なんということだ! マスターは夜中に一人で外出してしまったのか! とゴンザレスは頭を痛めた。


 無論、主が部屋を出て行ったことに気づかなかった自分も含めて。


 直に索敵機能を展開し、主の居場所を突き止めようと範囲を最大限まで広げる。


(……いた! 位置はここから2キロ程。この場所は……入江の辺りですか。……え? しかも誰かと一緒にいる?)


 ゴンザレスの索敵機能の範囲は半径5キロメートル。生物の反応を把握するだけでなく、人か魔物かの区別ができる。

 

 そのお陰もあって、東雲透は今日まで無事に旅を続けられたのである。


 使い魔の件があった為に、まさか戦闘でも起きているのではとゴンザレスは思ったのだが、どうやらそういった動きは見られない。


 念のため『アイテム収納』に収まっているアイテムも確認すると、あるはずの物がなかった。


 『水竜・ガリオス』・『鋼竜・ゴルニドル』・『聖域のローブ』、そして『月の羽衣』の4つだ。


 おかしい……ローブや竜剣2本は分かるとして、何故女性しか装備できないアイテムが取り出されているのかと、ゴンザレスは疑問に思った。


「はうわっ! まさか!」


 焦ったゴンザレスはベットへと駆け寄り、未だ幸せそうに寝ているリリィを叩き起す。


「り、リリィ! 起きてください! リリィー!」


「んにゅ……ゴンちゃん? どうしたのよぉも~……はふ」


「た、大変です! こんな夜更けにマスターが外で女性と会っているかもしれないです!」


 ガバッ! っと、リリィは勢いよくベットから上半身を起こした。


「ちょっ、ちょっとどういうことよそれ!?」


「わ、わかりません! とにかく事件は現場で起きています!」


 リリィは事の真相を突き止めるべく、ベットから飛び降り直ぐに着替える。


 (はぁ!? なんなのよ一体! シノが浮気!? いや、まさか……。だって、好きだって言ってくれたのに……えぐぅ)


 突然の事に頭が混乱し、涙が溢れそうになる。


 リリィ達の恋は特殊な事情だが、それはそれ。恋する乙女の心情は、彼氏が真夜中に他の女と一緒にいるということにリリィは混乱していた。


 突然の出来事に胸の内は悲しみでいっぱいだった。


 しかも考えれば考える程、その悲しみは怒りへと昇華し、リリィの心の内はメラメラと激しい炎へと変わっていった。


 (これはもう、現場を抑えて問い詰めるしかないわね……)


 着替え終わったリリィの背中には『ヴァルキューレの弓』が装着されている。そう、完全武装と言えるような姿へと。


 恋する乙女の激情はある意味、シノを問い詰めるハンターへと変貌させた。


 (待ってなさい、シノ……。 浮気は絶対に許さないんだからっ!!)


 悲しいかな、置き手紙には「竜剣の契約を外で済ませてくる」と書いてあるのだが、ゴンザレスはテンパっていたため、リリィに「マスターが外で女性と会っているかも」としか伝えていない。


 当のゴンザレスも、リリィに触発されワンピース姿に『クマさんハンマー』を装備していた。


 一見、この姿だけなら可愛いのだが、性能が「吹き飛ばす」能力に特化しているため洒落にならない。


 ゴンザレスは主が嘘を付かないと分かってはいたが、それはそれ。ゴンザレスも恋する乙女なので、モヤモヤ感は拭えなかった。


「ゴンちゃん、もしシノが浮気なんかしていた場合は……」


「……ええ、勿論――」


「おしおきよ!!」

「おしおきです!!」


 ここに乙女戦士が誕生した。 


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