05.経験値じゃないよ!ソウルだよ!
ゴンザレスとの会話でソウルを獲得する代わりに、経験値が入らないということが判明した。
Lvという概念がある世界で、Lv1のままこの異世界を生きていくのはかなりキツい。
五体満足で生きていくにはやはり、固有スキルである『ソウルガチャ』でレアアイテムを手に入れ強くなるしかないのだろう。
危険を回避するために低いLvでソウルを集める。本末転倒な気がしてきた。
取り敢えず、11連ガチャで手に入れた残りのアイテムを確認する。
「おお! ステータスを上げる装備品がある。どれどれ……『アジルタの指輪』か。ゴンザレス、この指輪のステータスは何Lv相当の数値なんだ?」
『平均的な数値で言うと、Lv20相当です。Lvの最大上限は99までですが、ステータスに関しては上限はありません。又、人によってステータスが上がり易いモノと上がり難いモノがあります。』
なるほど、これらを装備すれば直ぐには死ななくなるというわけか。それに『筋力』があれば殺られる前に殺ればいいわけだし。
「この『闘魂の刺青』と『迅雷』の組み合わせはかなりいいかな。……ただ、無傷で魔物と近接戦闘ができるかが問題だな。
やっぱり、『防御力』と『素早さ』を上げるアイテムを手に入れてからでないと使えないか」
そう、平和な世界から転移してきた俺は、戦闘なんて経験はまったくもって無し。喧嘩さえしたことがないのだ。いくら体力が上がっても、痛い思いはしたくない。なので防御力が上がらない限り近接戦闘は暫く無しだな。
そして最後のアイテムに目をやる。
「スマホウォッチ……まんまだなー。ゴンザレス、このスマホウォッチ、何か特別なことができるの?」
『その説明文そのままです』
デスヨネー。はい、聞いた俺が馬鹿でした。 まぁ、いちいちスマホ取り出さなくても操作できるようになるんだからいいか。
「ゴンザレス、『アイテム収納』に収納されたアイテムは、手動でないと取り出せないのか? それとも音声とかで取り出せることができる?」
『音声で取り出せることが可能です。音声で取り出す場合には『クイックオープン』と発言した後に取り出したい名前を言えばアイテムが具現化されます。
また、仕舞う時は『オープン』で空間を開くことができ、『クローズ』と発言した後に収納空間が消えます。』
へー、では、早速取り出してみよう。
「クイックオープン! スマホウォッチ」
目の前の空間に小さなガラスのような塊が出現したと思いきや、弾けてスマホウォッチが出てきた。
弾けたガラスは空中でゆっくりと弾けながら消えていった。
そして出てきたスマホウィッチを左腕に巻く。
「おー、便利だなこの機能! クイックオープン! 透視の瞳、アジルタの指輪」
空間がガラスのように弾け、透明な宝石とサファイヤのような宝石を付けた指輪が具現化される。
早速、指輪を右手の中指に嵌める。
「ゴンザレス、ステータスオープン」
『投影開始します』
目の前にステータスを表示した文字が浮かび上がる。
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名前:東雲 透
Lv:1
体力 :224
筋力 :130
防御力:10
素早さ:25
魔力 :0
スキル:『ソウルガチャ』
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ん? スキルが増えてないな?
『透視の瞳』を具現化しただけじゃダメなのか。
「ゴンザレス、このアイテムスキルはどうやって覚えるんだ? アイテム名を唱えるのか?」
『肯定。「スキル・ラーン・透視の瞳」と唱えれば習得されます。また、一度使うとそのアイテムは破棄されるので使用する際はご注意を』
あー、ご利用は計画的にってやつだね。某消費者金融のCMを思い出しちゃったよ。借りたことないけど。
「となると、このスキルアイテムは他人にも譲渡できるのか?」
『肯定。マスター以外でも使用することが可能です』
そうか。ということはもし同じアイテムが出たら、売ることもできるな……。まぁ、あまり強力な物は売りたくないけど、金稼ぎはできる。
暫く考え込んでから『透視の瞳』のスキルを覚えることにした。
「スキル・ラーン・透視の瞳」
宝石で具現化されていた『透視の瞳』が淡く光りを放ち、小さく弾ける音と共にガラスの破片が中に浮いて消えていった。
「ゴンザレス、使い方の説――――」
『対象を視界に収め、視界のピントを調整することでステータスが表示されます』
「ゴンザレスさん、早い早い。早く説明をしようと気を使ってもらうのは嬉しいけど、話している時に返されると気分良くないよ」
『申し訳ありません』
ん? あれ? もしかして人格形成が反映されてきている?
そうか。俺の為にってことか? なんかそう思うと照れてくるな。
ゴンザレスのAI機能が進化していることに驚きつつ、透視の瞳のスキルを試してみる。
窓の外を覗くと、向かいの家の前に一匹の飼い犬がいる。
体格は大きくグレーの色をした毛並みで、番犬の如く目がギラギラしている。
シベリアンハスキーのような犬である。
「あの犬っころで試してみるか。ピントを合わせるって……言葉では簡単に言うけど案外難しいな」
犬を視界に収め、犬の内側を見るように凝視する。
すると、何やら視界に文字が浮かび上がってきた。
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名前:ポチ
Lv:5
体力 :60
筋力 :40
防御力:20
素早さ:60
魔力 :2
スキル:『お手』
『伏せ』
『待て』
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「名前がポチって、日本犬かよっ!!」
うわ! Lv高っ!! 俺は犬以下!? なんか泣けてきたぞ……。
スキルは……いやこれどう見ても『スキル』じゃなくて『芸』だろ!
なんだこの世界……頭が痛くなってきた……。
額に手を当てやるせない気分になっていると、ドアがノックされダルクの声が聞こえてくる。
「シノ? どうした突然大声を上げて。何かあったのか?」
扉の前まで移動し、扉を開けてダルクを部屋に入れる。
「あ、いや、なんでも無いですよ。ただちょっと外に見えた犬があまりにも可愛かったもんで」
「ああ、シバタさん所のポチか。あいつは利口で人の言うことを聞く良い犬なんだ。メイもあの犬が大好きでな――」
名前がシバタって、もしかして日本人!? あの一家、実は日本から転移してきたのか?
なんてね、……はは、アホくさ。そんなわけねーか。
「それはそうと、そろそろ夕食の準備が終わるから食事にしよう」
「あ、はい。直ぐに向かうんで先に行っててください」
「そうか。冷めないうちに早く来てくれ」
ダルクは部屋から出ていこうとしたとき、ふとポーションのことを思い出しダルクを呼び止める。
「あ、ダルクさん、ちょっと待ってください。あの、これ今手に入れたポーションって物なんですけど使ってください。これで傷が治ると思います」
ポーション3本をダルクに渡す。
「おいおい、ポーションって。こんな高級品もらえないよ。しかも3本もか」
あれ? この世界にポーションはあるような口ぶりだったけど、高級品なのか? まぁ、よくわからないがとにかく貰ってもらおう。
「これで傷を治して、奥さんを安心させてあげてください」
そこまで言うと、ダルクは渋々といった感じでポーションを受け取った。
「本当にすまんな、シノ。何から何まで」
「いいですって。後から向かうんで先に行っててください」
「あ、ああ。わかった」
ダルクは部屋から出て行く。
「ふぅ。これでよし。にしても『シルバー』ランクでもかなりいいの出るんだな。これ、『レインボー』引くとどんなアイテムが出るんだろ……。ごくり」
残りの所持ソウル数は6206である。
あ、やばい。このパターン、またついつい回してしまいたくなる衝動が。
これから魔物退治をするっていうのに、これ以上『プロミネンスの杖』の使用できる回数を減らしたら不味いって。
いや、しかし、『レインボー』1回ならまだ大丈夫じゃないだろうか……。
馬鹿か俺は、人の命が関わってくるかもしれないんだぞ。
「う~~~………」
画面をじっと見つめて考える。
ええい! うじうじ悩んでいてもしょうがない!
再度『ソウルガチャ』を起動し、『レインボー』ランクを押した。
お馴染みの女の子が浮かび回るガチャを一つ打ち抜き、画面が真っ白になりアイテムが表示される―――。
「こ、これはっ――――!!!!」
目の前に表示されたガチャアイテムに俺は驚愕したのだった。




