04.初11連ガチャ
ダルクと一緒に村長の家から出て、4~5軒離れた所にある家の前に案内される。ブロックレンガで造られた家で屋根の上には煙突があり、白い煙がモクモクと上がっていた。
「ここが俺の家だ。嫁と娘の3人で暮らしている」
ダルクはさっさと家の中に入っていく。
家の中に入ると若い女性が駆け寄ってきた。奥さんだろうか。
「まあ、あなた! どうしたのその怪我! まさかベスパに行く途中で魔物に襲われたの!?」
「ああ、そうだ。結局ベスパには行けなかったよ。村の皆には悪いことをしたと思っている。それと、こちらの方に助けてもらったんだ」
ダルクに紹介され、ぺこりと頭を下げる。
「東雲 透と申します。シノと呼んでください」
「ダルクの妻のミリーと申します。主人を助けていただきありがとうございます」
ミリーと名乗った奥さんは、目に涙を浮かべて泣きそうになっていた。
ああ、あの時ダルクさんを助けて良かった。もしダルクさんが死んでしまったら、この家族は悲しみに満ちるからな。
「ミリー、ハンターギルドには討伐申請はできなかったが、シノが魔物を討伐してくれることに協力してくれた。今朝村の皆で話した通り今夜、警戒するために見張りをする。もちろん俺も出る」
ミリーの顔が青ざめる。
「あなた、そんな傷だらけの状態では無理だわ」
確かにそうだ。いくら村長の家で傷の手当をしてくれたとは言え、怪我はそう簡単に治るものではない。ましてあの森からこの村まで来るのに結構時間をかけて歩いてきたんだ。疲労も溜まっているはずだ。
正直、俺も歩き疲れている。
「ミリー、わかってくれ。村の為なんだ」
「あなた……」
なんか気まずい雰囲気だな。俺はどうすればいい……。
ぼけっと突っ立っていると、視界の端に小さな女の子が見えた。
「お父さんおかえりー!」
「おおー! ただいまメイ! ほら、お父さんの所へおいで」
メイと呼ばれた女の子は「たたたたたっ!」と音が聞こえてきそうな小走りでダルクの方へ向かっていくと、直ぐ様ダルクの後ろへ隠れて顔をこちらに窺ってきた。
あれ? もしかして俺警戒されてる? まあ、無理もないか。見知らぬ男が自分の家にいたら警戒するか。
とりあえず、女の子に努めて優しく声をかける。
「こんにちはメイちゃん。俺の名前はシノ。暫く魔物の討伐で厄介になりました。よろしくね」
怖がられないように最高の笑顔でメイと呼ばれた女の子に話しかけるが、恥ずかしいのか「ぷいっ!」と顔を逸らし隠れてしまった。
「あらら、隠れちゃったよ」
「ははは、きっと恥ずかしいんだろう。まぁ、暫くしたらこの子もなれるさ。さてと、シノ。夜までまだ時間がある。隣の部屋で休んでいてくれ。それとミリー、シノには助けてもらって礼も兼ねて食事を頼む」
ミリーは溜息を一つ吐きながら苦笑した。
「はぁー、わかったわ。あなたは頑固ですからね。シノさん、どうか主人をよろしくお願いします」
「ええ、任されました」
そう言うと案内された部屋に通される。部屋にはベットと机が一つあり、サッパリとした部屋だった。
扉を締め、ベットの上へと飛び込むとギシリと鈍い音が響く。
「ふー……、横になるのはいいなー……」
これから危険な目に遭うかも知れないのに、ベットの上で背筋を伸ばし歩き疲れた体を休ませる。
「さてと、魔物との戦いの準備をしないとな」
勢いよく上半身を起こすとポケットの中からスマホを取り出し、所持ソウル数を確認する。
現在の所持ソウル数は9206だった。
ん? 元からあったソウル10000からガチャとプロミネンスの杖の使用分合わせて800を差し引いて残りは9200。
で、ゴブリン5匹でソウル5ならわかるが、なんで6なんだ? 数が合わないぞ。
(ゴンザレス、ちょいと聞きたいんだが魔物から手に入れるソウルは数がまちまちなのか?)
『肯定。魂には質があり、同じ魔物であっても手に入れるソウルは変動します。それは強さによっても変動します』
なるほど、そういうことなのか。魂の質……ねぇー。
例えば強い魔物を倒した場合ソウルは1ではなくて、もっと手に入れられる可能性があるわけか。
(サンキュー、ゴンザレス。俺一人だとわからなかったけど、お前がいてくれて助かるわ。ありがとうな)
『…………』
ゴンザレスは直ぐには答えず、暫くしてから返事をしてきた。
『……いえ。私はサポートAIですのでマスターの助力をするのは当たり前のことです』
なんだ? 今の間は。
まぁ、大したことではないだろう。気に留めても仕方がないので、先程村長の家で考えていたことをもう一度思い出す。
さてと、この『プロミネンスの杖』でやっていけるかどうかだな。ガチャを回さなければ、結構な使用回数になるのでいけるかもしれない。
しかし、どうしても不安が拭えないのだ。
回すか? しかし、回すならある程度ソウルを残しておかないとダメだ。かと言って、ランクの低いガチャを回すのも躊躇われる。
ここはそこそこのランクである程度ソウルが残る『シルバー』を回すべきだろう。
よし、そうしよう。
スマホの画面をタップし起動させ、『ソウルガチャ』のアイコンをタップする。
画面が切り替わり『ブロンズ』『シルバー』『ゴールド』『レインボー』の選択項目が表示される。
現在のソウル所持数は9206個。
そしてそれぞれ一回を回す為の必要ソウル数は、
『ブロンズ』 100個
『シルバー』 300個
『ゴールド』 500個
『レインボー』1000個
である。そしてさらに『11連ガチャ』という選択項目があり、其々の必要数の10倍必要になるようだった。
『シルバー』の『11連ガチャ』を選ぶ。
『ソウル3000個必要です。11連ガチャを回しますか? YES / NO 』
『YES』ボタンを押すと、毎度お馴染み可愛いイラストの女の子が拳銃を持ちながら、無数に浮かび回る透明な丸いガチャポンを打ち抜いていく。
そして浮かびまわる丸いガチャポンの中に金色の色をしたガチャポンがあることに気づく。
「お、これもしかしてボーナスガチャ? もしかしたらワンランク上のアイテムかも。 頼む! 金色のガチャを打ち抜いてくれ」
これから魔物退治というのにガチャを回しているこの瞬間、不謹慎だがドキドキしながら楽しんでいる自分に少し呆れる。
こればっかりはな、しょうがないよな。
イラストの女の子はどんどんガチャポンを打ち抜いていき、そして最後に無数に飛び回るガチャポンの中から金色のガチャポンを打ち抜いた。
「――っ!! やった!」
銃口から立ち上る消炎を息で吹き飛ばし、ウインクするイラストの女の子の映る画面に思わずキスをする。
ああ、こんな痛い現場を親が見たら泣くだろうな、きっと。
眩い光りと共に画面が変わり、打ち抜いたガチャポンからアイテムが表示される。
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アイテム名:チョコレートパフェ
ランク :『 N 』
説明 :
女の子に人気な甘いお菓子。
様々な焼き菓子の上に甘くとろけるチョコレートと
アイスクリームをふんだんに使った絶品スイーツ。
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アイテム名:ポーションセット(10個入)
ランク :『 N 』
説明 :
体力を回復する薬。
回復する量は、使用者の最大体力の30%分
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アイテム名:マナポーションセット(10個入)
ランク :『 N 』
説明 :
魔力を回復する薬。
回復する量は、使用者の最大魔力量の30%分
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アイテム名:エナジーボール(使い捨て)
ランク :『 N 』
説明 :
眩い光を放つ白い玉。
上空に投げつけ、起動言語「弾けて混ざれ」と
唱えることによって、眩い光を放ち暗闇を照らす。効果は1時間。
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アイテム名:クリスタルランプ(タイプ・橙色)
ランク :『 N 』
説明 :
クリスタルのランプ。
クリスタルランプ・シリーズで色は白・青・赤・橙
の4色タイプがある。
恋人との甘いひと時の雰囲気作りに最適である。
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アイテム名:アイリスの涙(期限付き)
ランク :『 R 』
説明 :
植物の成長速度を飛躍的にあげる宝石。
水にこの宝石を沈めることによってアイリスの加護を受ける。
その加護を受けた水を植物にやると成長が早くなる。
使用後72時間で消滅する。
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アイテム名:透視の瞳
ランク :『 R 』
説明 :
対象者のステータスを覗き見ることができるスキル。
使用することによって使用者にスキルが追加される。
使用方法は対象者にピントを合わすと浮かび出てくる。
ただし、慣れが必要である。
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アイテム名:アジルタの指輪
ランク :『 R 』
説明 :
装備者の『筋力』と『体力』を底上げする指輪。
上がる能力は『筋力』+100 『体力』+200である。
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アイテム名:闘魂の刺青
ランク :『 R 』
説明 :
使用者に『格闘スキル』が追加される。
ただし使い捨て。
24時間経つとシールが剥がれ『格闘スキル』が削除される。
近接戦闘ステゴロ最強である。
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アイテム名:迅雷
ランク :『 R 』
説明 :
青い色のガントレット。
近距離戦闘用に特化している。
起動言語は『迅雷』
60秒間、ガントレットに雷属性を付加する。
刀剣類を装備することにより、武器にも雷属性が付加される。
また下記のステータスが60秒間上昇する。
素早さ:+100
ただし、1回使用するごとにソウルを100消費する。
また、対となる『疾風』と合成することによって『疾風迅雷』へと変わる。
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アイテム名:スマホ・ウォッチ
ランク :『 HR 』
説明 :
スマホ型多機能腕時計。
スマホの機能をそのまま使用できる。
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おー。 なんか様々な物が出てきたぞ。
なになに? チョコレートパフェ……? 何故、甘い物がガチャで出てくる……。というか、食料も出てくるのか、このガチャは。
次のアイテムは……。何? ポーション!? これは助かるぞ。傷ついた時に使用すればきっと治るに違いない。
あ! そうだ。これ、ダルクさんに使ってもらおう。そうすれば傷も癒えるはず。そうしよう。
とりあえず、ポーションを取り出しておくか。
『ポーションセット(10個入)を取り出しますか? それとも収納しますか? 取り出す / 収納する 』
『取り出す』を押すと、目の前の空間がガラスのように弾け、ベットの上にポーション10個が具現化した。
次は、マナポーションか。魔法使えないし、いらないなこれは。
『マスター。それは勿体無いかと思います』
(え? そう? ならとっておくか。というか、ゴンザレスさん勝手に思考読まないで……。って、仕方がないのかこれは)
そんなことをゴンザレスに言いつつ、次のアイテムを見る。
エナジーボール……。ふむふむ、これ、夜間戦闘にいいな。 そうだよ、暗闇の中どうやって魔物を視認するか悩んでいたんだ。
最悪、ゴンザレスの索敵機能でなんとかしようと思ってたけど、兼用して使えれば最高だ。
よし、いい感じだぞ。
次は、クリスタルランプ? どれどれ……『恋人との甘いひと時の雰囲気作りに――』
「………………」
なんだ、今の俺には縁の無い道具か。うん、悲しくなんかないぞ。悲しくなんか……。
さて、気を取り直そう。次っと、『透視の瞳』? ステータスを覗くって……ふむ。
(ゴンザレス、この世界にはステータスがやっぱりあるのか?)
『肯定。マスターのステータスも見れますが、視覚領域に投影しますか?』
(マジか。た、頼む。なんかドキドキしてきた)
『投影開始します』
目の前にステータスを表示した文字が浮かび上がる。
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名前:東雲 透
Lv:1
体力 :24
筋力 :30
防御力:10
素早さ:25
魔力 :0
スキル:『ソウルガチャ』
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うーん、普通だ。何がって? ステータスだよ。正に村人Aだと言われても仕方がないほどのステータスだな。
(ゴンザレス、やっぱり魔物を倒すとLvとか上がるのか?)
『肯定。魔物を倒すことによって経験値を獲得し、Lvが上がります』
やはりそうか。なら、Lvを上げれば簡単に死なずにすみそうだな。頑張るぞ!!
『ただし―――、マスターの場合は経験値はソウルに変換されるので、Lvは上がりません』
……ん? ………って、えええええ!?
(ちょっ、ゴっ、今なんつった!? Lvが上がらない!? それこの先、死亡フラグ立ちまくりな状況じゃないのか!?)
『仕方がないことかと。それに『ソウルガチャ』のアイテムの中にはステータスを大幅にあげるアイテムがありますので問題ないかと思います』
(問題大アリだよ! あわわわわどどどどうしよう)
前途多難な気がしてきた。