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30.やさしくありたい

 べスパの西門に向かうと既にマッド達は待っていた。途中、中級ポーションを飲みギリコとの戦闘で負ったダメージを回復させておいてある。


「おーい、シノッチ! リリッチこっちよ!」


「ごめん、お待たせ! シノがトラブルに巻き込まれちゃって」


「あら、どうかしたの? そういえば町の中心の方で凄い歓声が聞こえてきたけど」


「ま、まぁ、ちょっと。あはははは……」


 苦笑いをする。売られたケンカを買ったとは正直言いづらい。


「なんだか察しがつくが深くは追求しまい。話は変わるが二人共すまん。馬車を借りることができなかった。丁度全て出払った後だったのでな」 


「このまま歩きで行くか、改めて日をずらして馬車で行くか。流石に歩きは大変だから馬車を借りていった方がいいと思うけど」


 ミーナが申しなけなさそうに謝る。

 馬車で走り続けて8~12時間程、歩きだと2~3日かかるだろう。流石に歩きはないな。


 そういえば今朝乗り物のガチャアイテムを手に入れたな。

 使ってみるか。


「ミーナ、馬車は俺が用意しますよ。今朝『ソウルガチャ』回した際に乗り物系のアイテムが出ていたから」


「え? そんなのあった?」


「ええ、確か――」


『天馬の馬車ですよ、マスター』


(そうそうそれそれ)


「天馬の馬車って乗り物ですね。えーっと説明文はっと」


 -------------------------


 アイテム名:天馬の馬車(使い捨て) 

 ランク  :『 SR 』

 説明   : 


 天馬の力により空を走る馬車。


 4頭立ての4輪大型箱馬車で最大6人まで乗ることができる。


 目的地を告げれば自動で動く。馬車の中は快適で揺れは一切ない。


 往復用で1往復すると消える。


 主に買い物用の乗り物。  


 -------------------------


「往復用でしかも6人まで乗れるようです。十分乗れますね」


 スマホウォッチに表示させた画面をリリィ達に見せる。


「シノ見せてもらってなんだけど、この字読めないわ」


「ああ、そうだった。ごめん、忘れてた」


「ガハハハハ、シノは案外抜けているところがあるのー! 凄い男なんだか抜けている男なんだかよくわからん奴じゃの」


「マッド、それを言ったら貴方も抜けているとこをがあるわよん? 無神経なところとかね」


「馬鹿な! ワシが抜けているだと!? 心外だ!」


 マッドは地団駄を踏み、リリィたちは笑っている。

 さてと、それじゃ『天馬の馬車』を取り出すかな。右手を前面に突き出し―――。


「シノノメくーん!」


 街の方から俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。右手を降ろし呼ばれた方へと顔を向けると、一人の女性が小走りでこちらに走ってきているのが見える。


 あれはモナさんか?


「はぁはぁ、はぁ、……や、やっと追いついた……はぁはぁ」


 あれ? さっき会って別れたばかりなのにどうしたんだろ? 

 全力で相当走ってきたのか、乱れた呼吸を整えるのに胸を上下に揺らしている姿がなんかエロい。

 

「モナさんどうしたんですか? さっき会ったばかりじゃないですか。あ、もしかしてアスターさんに呼んでこいって言われたとか?」


「はぁはぁ……ふーっ! そう、それ! ルディをアスター様に突き出して説明したら、シノノメ君に謝罪したいから連れてこいって言われて。街の人に聞いたらシノノメ君が西門の方へ向かったって言うから」


「はぁ…。別に謝罪なんていらないですよ。それにこれから出かけるので」


「あら? そうなの?」


 モナが俺の近くにいたリリィ達に視線を向ける。


「あれ、マッドさん達じゃないですか。あ、もしかしてシノノメ君、マッドさんたちに便乗して討伐クエストを受けようとしているの?」


「ったく、今ワシらの事に気づいたのたのかお主。まぁええわい。お嬢、言っておくが違うぞ、ワシらはドラゴンが現れた森にもう一度行くのだ」


 「え?」


 モナはいまいち状況が飲み込めないというような顔をしている。


「えっとですね、このリリィの村があの森の中にありましてね、その、まぁ、亡くなった村人たちを弔いに行くんですよ」


 リリィの頭をポムポムと軽く叩く。

 

「ちょ、ちょっとシノ! 子供扱いするのやめてよね!」


 リリィは恥ずかしそうに頭に載せた俺の手を払いのける。


「あ……。そうなの。ごめんねリリィさん、無神経なことを言ってしまって」


「ううん、気にしないで」


「ということなので、俺はアスターさんの所には行けません」


「わかったわ。でも、馬車が見当たらないけど……まさか徒歩で行くつもり!?」


 まさか、んなわけがない。徒歩で向かったら完全に野宿しなくてはならないので却下だ。


「いえ、馬車はありますよ。――クイックオープン、『天馬の馬車』」


 右手を突き出し起動言語 (トリガー)を唱えると、空間が大きく弾け目の前には4頭立ての4輪大型箱馬車が具現化した。


「ほい、馬車です」


 モナの方へ振り向くとその顔は絶句していた。可愛らしい顔がちょっと台無しだ。


「え? え? えええええええええええええええ!?」


 マッド達の方も同じように絶句している。あれ? 今朝ホログラムで見ていなかったっけ? ああ、もしかして表示されていたときは小さいミニチュア模型みたいだったから、実際の大きさを見て驚いているのか?


「シノッチ、この馬車立派すぎ……。というか御者の男性超イケメンなんですけどー!」


 うわ、ボナのテンションが一気に上がった。てか、ガチャアイテムだからその御者は人間ではないだろう。にしてもイケメンなのは認める。


「ちなみにこの馬車は空を走るので目的地まであっという間につくかと」


「いやそんなまさか。え? 本当に!? ちょっと待って! ……シノノメ君のことだから空を飛ぶ馬車というのもありえるかもしれない」


 モナはブツブツと独り言を始めた。気持ちはわからなくもないが。


「ね、ねぇシノノメ君。私も連れて行ってもらってもいい? というのもギルド内で、ドラゴンが発生した場所の被害をギルド職員の目で確かめようって話が出ているの。他の冒険者達の事情聴取である程度聞いているけど、どれ程の被害なのか。

 王国にも報告しなければならないしね」


「俺は構いませんけどマッド達はどうする?」


「ワシらは構わんよ。それに、この馬車の持ち主はシノだ。好きにせい」


 決まりだな。馬車に乗れる人数も6人だしモナ1人増えたところで問題はない。


「ありがとう皆! あ、ちょっと待ってね! アスター様に1度連絡してくるから!」


 モナはそう言うと直ぐにまた走り出して行ってしまった。


 モナさんって結構せわしないな。

 


 ◇



 30分程待っていたらモナがやってきた。


「はぁはぁ……お、お待たせ……はぁはぁ」


 相当疲れているようだ。当たり前か2往復も全力で走っていたら疲れるよな。それにビッショリと汗をかいている。薄いシャツが汗を吸い肌が透けて見えているため、目のやり場に困る。 

 

「クイックオープン、『天然水』」


 きっと喉も乾いているだろう。冷たい水が入ったペットボトルのキャップを開けてからモナに渡す。


「え? いいの? わぁ! ありがとう! ……ごくごく……ふぅ! 冷たくておいしい」


 ペットボトルの水を一気に飲み干し、一息ついたようだ。汗かいた後の冷たい飲み物って美味しいよな。


「この入れ物凄いね。ガラスのように透き通っていてしかも柔らかい。これ、なんの素材で出来ているの?」


「プラスチックっていう素材です。この国ではまず手に入らないと思います」


「へぇ~、シノノメ君凄いの持っているね。はい、お水美味しかったよ」


 モナから空になったペットボトルを受け取り、『アイテム収納』へと戻す。


「こほんっ! 私がギルド代表で同行させて頂きます。皆さんよろしくお願いしますね」


「ええ、よろしく」


「モナッチ貴方も大変よね。お仕事頑張りすぎると、お肌に余り良くないわよ? 程々にね」


「放っておいてください! 私は好きでギルドのお仕事頑張っているんですから! って、あれ? ミーナさん、なんかお肌の艶が……。あれ? なんか若く見える?」


「ふふふふふふふふふ! 気づきました? 気づいちゃいました? えっへっへ! 実はあるアイテムで肌年齢を5歳若返らせたのでーす!」


「はぁ!? え? ちょ、なんですかそれー! い、一体そんなアイテムをどこで手に入れたんですか!?」


 物凄い勢いでモナがミーナに食いついている。

 なんかミーナがの雰囲気が変わったなと思ったら既に『アストヒクの涙』を使用していたのか。そうだよなー、お肌の艶が5歳若返るなんて聞いたら女性は誰でも食いつくよな。


「秘密なのです! 教えられません!」


「えええええええええええええええ!! ミーナさ~~~ん! お願いしますよ~~~~!」


 どうやらちゃんと秘密は守ってくれているようだ。というかミーナ、モナにすっげぇ自慢している。そんなに嬉しかったのか。喜んでもらえて何よりだ。


『マスターは太っ腹ですね』


(そうか?) 


 『ええ、無償で提供してしまうマスターは人が良すぎるかと思います。場合によっては善し悪しですが』


(心配してくれているんだな。まぁ、今度から気をつけるよ。でも、マッド達には世話になってるから別にいいだろ)


 『ソウルガチャ』から出てくるアイテムは珍しい物ばかりだ。当然、強力な物もあるからおいそれとは譲渡はできないが、これくらいなら大丈夫だろう。


「ほれ、そろそろ2人共やめんか。不謹慎だぞ。リリィのことを気遣ってやれ。いつまでたっても出発できんぞ」


「そうよん。遊びに行くんじゃないんだから」


 流石、年長者マッドとボナだ。リリィの気持ちを組んでいる。ミーナも普段は周りに気遣う性格だが、肌年齢が5歳若返ったことにより我を忘れてしまってたようだ。


「リリィちゃん、ごめんね」


「いいってば。そんなに気にしてないから落ち込まないでよミーナ!」


 相当凹んでいるようだなミーナ。って、あれ? ボナどこ行くんだ?


「じゃ、私はこの御者の隣に座るわね」


 え? そこに座るの? 馬車の外で大丈夫か? 速度どれくらい出るかわからんし、風圧すごいんじゃ……。まぁ、本人がそこに座りたいというなら別にいいか。


「シノー! 早くおいでよー!」


  既にリリィ達は馬車に乗り込んでいた。


「ちょっと待って! リリィ、あの森の名称はなんていうんだ?」

 

「私たちの村では『風の森』と呼んでいたわ。だけど、人族達の間では『迷いの森』と呼ばれているの。オルテガ村の結界が関係していて、結界に触れると別の場所に飛ばされちゃうのよね」


 なるほど、御者に目的地を告げて俺も乗り込むか。


「えっと、目的地は『風の森』で頼む」


 目的地を告げると御者はこくりと頷く。御者の隣に座っているボナを尻目に馬車へと乗り込んだ瞬間、中の内装の凄さに息を飲む。

 足元の床は赤い絨毯で出来ており踏むとフワフワしている。窓には純白のカーテンがあり、天井には煌びやかなシャンデリア。座るところもソファーのような作りで座り心地が良さそうだった。


 馬車の中にランプではなくシャンデリアがあるということはこれも以前手に入れた『クリスタルランプ』と同じなのかもしれない。


「シノ! この馬車凄いよ! こんな凄いの乗ったことないよ!」


 うん、俺も乗ったことない。


「王族が乗る馬車より凄いんじゃ……。うわ! いつの間にか空を飛んでいる! ベスパの街があんなに小さく見える!」


 ミーナが窓を覗き驚きの声をあげてから違和感に気づいた。出発したことに気づかないくらい静かだ。

 

 あれ? 慣性の法則はどうした? 


『この馬車は移動時の慣性を無しにする魔法が掛かっています』


 なるほど。なんつー便利な魔法だよ。対面式の座席って座る場所によっては気持ち悪くなるからな。


「不思議ね、移動している感覚がないわ。なんか、景色だけ流れているみたい」


 どうやらモナも気づいたようだ。というか普通は気づくか。


「魔法で揺れを無くしているんです。って、あれ? マッドどうしたんですか? なんか落ち着かない顔してますけど……」


「いや、こう、豪華すぎる物に囲まれると落ち着かなくてな。なんか、しょうに合わん」


「何言ってるのよマッド! こんな素敵な馬車一生に一度乗れるかどうかわからないのよ! 堪能しなくちゃ損じゃない! ね、ミーナ」


「ふふ、そうね」


 リリィはニコニコと笑っているが、その笑顔は何故か無理をしているみたいにしか思えなかった。



 ◇



 リリィ達と雑談しているうちにあっという間に目的地についた。時間を確認してみると『PM 2:35』と表示されている。


 馬車を降りると、目の前には腐敗した大地が広がっているだけだった。


「ひ、酷い……」


 モナは口元に手を当てながら驚いている。無理もない、森があった場所が腐り悪臭を放っているのだ。とても人が住めるような状態ではない。元々あった街道を通るにも少なからず影響があるはずだ。


「リリィ、無理はするなよ」


 リリィの顔はすぐれない。やはり先程までの元気は無理して作っていたのか。


「うん……。ありがと。さ、本来の目的を果たしましょ。村があった場所はあっちだから」


 無理に笑顔を作るリリィ。なんとかしてあげたいと思ってしまう。

 暫く歩いていくと建物の崩れた残骸が見えてきた。リリィの故郷オルテガ村の跡地だ。それと、森を腐敗させた元凶である翠竜ラファーガルの出現地点でもある。


 誰ひとり声を発せず村の跡地にたどり着く。皆辛そうな顔をしている。


「リリィ、辛いのは分かるが墓標を建てるぞ。お主の村の皆の魂を供養してやらねばならん」


 マッドはバックの中から小さな銅像と透明な液体が入ったガラスの小瓶を取り出してきた。


「あれは?」


「この銅像はね、死者を弔うための『ヴァイラの像』と言って聖水をかける事で迷える魂を天へと導くの。この世界での死者を弔う儀式よ」


 ミーナはモナに聞こえないように小声で教えてくれた。


「リリィ、どこにするんだ?」


「村の祭壇があった場所がいいわ。村の中央にあるからそこにお願い」


「ああ、了解した」


 村の中央まで移動し、マッドは地面に『ヴァイラの像』を置く。マッドが聖水を振りかけると銅像は微かな光を放ち続けた。


 きっと、死者の魂を導く光なのかもしれない。


「花束とか持って来れば良かったですね……。何も持ってこないで着いてきた私が恥ずかしいです」


 モナが申し訳なさそうにしている。


 花束か……。


 『アイテム収納』に花束があったのを思い出す。  


 -------------------------


 アイテム名:ルミナの花束 

 ランク  :『 N 』

 説明   : 


 別名『星屑の花』と呼ばれる植物。


 花言葉は『追憶』


 懐かしい思い出を呼び起こす。


 -------------------------


「クイックオープン、『ルミナの花束』」


 目の前の空間が弾け真っ白な色をした花束が具現化する。花束は淡い燐光を放っている。

 それを手に持ち、リリィの所へと向かい『ルミナの花束』を差し出す。


「シノ……?」


「リリィ、花束を添えてきなよ。あの銅像だけじゃ寂しいよ」


「う、うん。ありがとうシノ」


 リリィは薄らと光り続ける銅像の前に向かうと、しゃがみ込み花束を置く。花束から放つ淡い燐光がリリィを覆っていく。


「皆、ごめんね……。ぐす……」


 背を向けてしゃがみ込んでいるリリィから嗚咽が聞こえてきた。その悲しい背中に胸が締め付けられる感覚を覚える。

 せめてこの腐敗した大地だけでもなんとかしてあげたい。自身の生まれ育った場所がこのような状態では心に傷が残るだろう。もし俺の家族が死に、生まれた育った家がこのような状態だったら悲しみにくれる。


 しかもリリィは女の子だ。男の俺とは違う。あんなに肩を震わせて泣いている女の子をただ見ているだけなんてできない。何か俺にできることはないだろうか。


『マスター。浄化アイテム、『ラピスラズリ』を使えば、この腐敗した土地を浄化できるかもしれません』


(なに? それは本当か?)


『はい。ただし、局地的な限定範囲です。もっと効果範囲を広げられるアイテムがあれば問題は解消されるのですが』


(なるほど。効果範囲を広げるか……。ん? まてよ……イチかバチかだが、試す価値はあるな)


『マスター、面白い発想ですね』


 俺のイメージを読み取ったゴンザレスが反応する。


(そうか? だが試す価値はある)


 右手を突き出し起動言語トリガーを唱える。


「クイックオープン、『コニヤラのカード』」


 目の前の空間が弾け一枚のカードが具現化される。それは何も書かれていない真っ白なカードだ。


 『コニヤラのカード』は所持している『HR』ランクのアイテムを複製するアイテムだ。こいつを使いあるアイテムを複製する。


(ゴンザレス、こいつの起動言語トリガーを教えてくれ)


起動言語トリガーは『コピー、アイテム名』ですマスター。しかし、うまくいくのでしょうか? 失敗すれば貴重なアイテムを失います』


(可能性があるのに何もしないで、後になって後悔はしたくないんだ)


 ―――ああ、そうだ。


 目の前でリリィが泣いているんだ、今出来る事をやるべきだ――。


「コピー、『ウルカの六芒星』」


 手元のカードが光り輝き複製するアイテムへと変化していく。それは1メートル程の大きさの六芒星が描かれた魔法陣へと変わった。

 両手を左右に広げさらに続けて起動言語トリガーを唱え続ける。


「クイックオープン、ダブル・『ウルカの六芒星』!」


 左右の空間が弾け同じアイテムである『ウルカの六芒星』が2つ具現化される。前面に1つ、左右に1つづつ魔法陣が展開される。計3つ。


「おい、シノ……何をするつもりだ」


「シノ?」


 魔法陣の輝きに気づいた皆が一斉に俺の方へと顔を向ける。涙を流すリリィと目が合う。


 さて、ここからが正念場だ。うまく成功してくれよ。


「クイックオープン、『ラピスラズリ』」

 

 青い色をした宝石が具現化し、それを左の魔法陣へと落とすと吸い込まれていく。続けて起動言語トリガー唱えるべく息を吸い込む。


「クイックオープン、『雷雲の笛』」


 オカリナ型の笛が具現化し、『ラピスラズリ』を落とした魔法陣へと落とす。2つのアイテムを吸い込んだ魔法陣が輝きだし、弾けるとともに1つのアイテムが具現化された。


 金色に輝くフルートが宙に浮いている。


『視覚領域にアイテム名を表示いたします。マスター』


 -------------------------


 アイテム名:セイクリッド・フルート(使い捨て)

 ランク  :『 HR 』

 説明   : 


 浄化の雨を降らすフルート。アンデット系にダメージを与えることができる。


 また、汚染された土地も浄化することができる。


 使用範囲エリアは使用者の任意で範囲の大きさを変えることができる。


 ただし、範囲を変更する際はソウルを5000消費する。 


 固定の場合は半径10メートルで消費ソウルは0。


 -------------------------


 やはり思っていた通りだ。


 浄化の作用がある『ラピスラズリ』と雨を降らす『雷雲の笛』を合成することによってそれぞれの性質を併せ持った新たなアイテムへと変化するのではないかと。


 ある意味賭けだったがうまく成功したようだ。

 これならいける。なら、さらにもっとその先へと突き進む!


「クイックオープン、『風の息吹』!」


 ピンク色をした宝石が具現化される。『風の息吹』は花の植物を咲かせる事のできるアイテムだ。こいつを右の魔法陣へと落とす。


「クイックオープン、『アイリスの涙』!」


 こいつは以前ノアル村で世話になったアイテム。水に付ける事により成長速度を上げる水に変化させる宝石。同じように右の魔法陣に落とす。魔法陣が輝きだし新たなアイテムが具現化する。


『続けて視覚領域にアイテム名を表示いたします。マスター』


 -------------------------


 アイテム名:インフィニティ・エナジー(使い捨て)

 ランク  :『 HR 』

 説明   : 


 死滅した植物を生き返らせることができる宝石。


 使用方法は地面に宝石を埋め水を掛ける事によって、半径5メートルまでの植物を生き返らせる。


 ただし、使用するには浄化された水でないと効果が発揮されない。


 -------------------------


 よし、これで最後だ!


 合成した2つのアイテムを前面に展開している魔法陣へと落としていく。

 最後の魔法陣が輝きだし新たなアイテムが具現化する―――。


(ゴンザレス!)


『はい、マスター! 表示いたします』

 

 最後のアイテムの情報が表示されていく。

 

 -------------------------


 アイテム名:精霊王オリシスのフルート(使い捨て)

 ランク  :『 SR 』

 説明   : 


 森の精霊王オリシスの力が篭ったフルート。


 フルートの音色を奏でることにより(自動演奏)、荒れ果てた大地を動植物が住める自然豊な楽園へと変える。


 また、その森は妖精王の加護によって邪悪な存在を近づけさせない。


 使用範囲エリアは使用者の任意で範囲の大きさを変えることができる。


 ただし、範囲を変更する際はソウルを10000消費する。 


 固定の場合は半径30メートルで消費ソウルは5000。


 -------------------------

 

 そのアイテムは虹色に輝くフルートだった。目の前に浮かぶ『精霊王オリシスのフルート』を手に取る。皆、今だに呆けた顔をしている。誰かの唾を飲む音が聞こえてきた。


「リリィ、死んだ人達は生き返らせることはできないが、こいつで以前のような自然豊な森に戻すことができる」


「―――え? シノ、何を言って……」


 使用範囲を念じながらフルートに口を付けると自然と体が勝手に動き、フルートの音色を奏でていく。

 その演奏はどこか優しく、懐かしいような音色で心を満たしていく感じがした。

 フルートの音色によって何処からともなく、虹色に輝く燐光が腐敗した大地へと降り注ぐ。


「わぁ……綺麗な光り」


 ミーナは感嘆の声を漏らしている。


 光りが降り注いだ地面から新芽が芽生え、次第に大きくなり辺り一面に新緑の木々が生い茂っていき、足元には様々な花が咲き乱れていく―――。


 その光景は幻想的であった。目の前に起こる現象に鳥肌が立つ。

 フルートの演奏が終わり体の自由が戻ると上を見上げる。高くそびえ立つ木々の葉の隙間から光りが差し込んでいる。


 良かった、成功した。これで少しはリリィの悲しみを和らげる事ができただろうか。


 手に持っていた『精霊王オリシスのフルート』が弾けて消失していく感覚が手に伝わってくる。


「こ、これは一体……。シ、シノ! 一体何をしたのだ!?」


「まぁ、できる限りのアイテムを使ってみました」


「できる限りのアイテムって……。シノさん、これはもう奇跡としか言いようがないですよ!」


 奇跡か。確かにこれは奇跡としか言いようがない。


『ソウルガチャ』のアイテムの使いようによっては奇跡の力を行使できることに俺も思い知る。


「シノ……。なんでここまでしてくるの……?」


 リリィはゆっくりと俺に近づいてきて目の前で立ち止まる。


「何故って、そりゃ……。リリィが泣いているからだよ。リリィの悲しむ顔を見たくなかったから。少しでもその悲しみを和らげてあげたいと思った。

 それに村の人達を弔うなら腐敗した大地より、緑自然豊な大地がいいだろ?」


「う゛ぅ~……うぇ……」


 ポロポロと涙を流し――。


 トスンッ。


 いきなり抱きついてきて胸に顔を埋めるリリィ。


「え!? ちょ、リリィ!?」 


「ぐすっ。うるさいバカ……。顔見るなぁ」


「…………。」


 震えながら泣きじゃくるリリィの頭を優しく撫で続ける。


「ぐすんっ……ありがとう……」


 マッド達を見ると「やれやれ」と行ったジェスチャーをしている。


 そして皆優しい笑顔をしていた。


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