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第五章 反乱の鎮圧――そして帰還

 シュウ、ナホコ、ミズキ、ユウジの四人は、また宿屋に泊まる。

 翌朝、食事をとっていると、ミズキの頭の中に声が聞こえる。


「緊急通信モード。指令を伝えます。貴族の一部が反乱を起こしました。鎮圧に出動してください」


 ミズキは聞こえた内容をみなに話す。


 ミズキが地面に魔法円を描く。

「この中に入って」三人に声をかける。そしてミズキも一緒に魔法円の中に入る。

「転送開始」


 シュウたちは、貴族の一部がゲリラ戦を行っている地区に転送される。

ゲリラ軍のひとつと出くわす。


「透明化モード開始」「物理防御壁、構築」「魔法モード」

四人の姿は透明になった。


「『魔法モード』をかけたから、シュウは『光りの矢』で攻撃することができるわ」

とミズキが説明する。


「安全のために物理防御壁をつくっておくわね」


 四人は透明になったまま、忍び足で、ゲリラ軍に近づく。

 シュウは「光りの矢」で、ナホコはなぎなたで、ユウジは剣で相手と戦う。


「ぐわっ」ゲリラ軍の一部が倒されていく。

「透明化モード、タイムアウト」

 シュウたちの姿が見えるようになる。

 そのタイミングを見て、ゲリラ軍のリーダーが、「衝撃波」の魔法を放つ。

「あと五秒で衝撃波がきます。5・4・3・2・1」


「わあっ」「きゃあっ」物理防御壁をもってしても防ぎきれない強力な衝撃波が四人を襲う。


 シュウは近くにいたミズキのことをかばうように覆いかぶさった。


「ありがとう、助かったわ」とミズキがシュウに礼を言う。


 ナホコがけがをしている。

 シュウが「ぼくの治療はあとでいいから、先にナホコを治してやってくれ」とミズキに頼む。

「わかったわ」とミズキが治癒呪文を唱える。


 ユウジがぐったりとして動かない。近寄ってみると、すでに息が絶えていた。

「ユウジ、ユウジ、なんで死んでしまったんだ」シュウが叫ぶ。


 ミズキが「とにかくここは危険よ。別の空間に移動しましょう」と言う。

「回避モード開始。自動転送」

四人は別の空間に退避する。


 シュウが言う。「ミズキ、ユウジを生き返らせる方法はないのか」

「私の魔法では無理ね……」とミズキが力なく応える。

「そうか……」とシュウが言う。


「ミズキ、ぼくに『衝撃波』の呪文を教えてくれないか」とシュウが頼む。

「じゃあ、『魔法訓練』をしましょう」とミズキが言い、結界をつくり出す。


「この結界に入れば、魔法の強化訓練ができるわ。魔法で壁をつくり出すから、その壁に向かって『衝撃波』を使ってみて」


「まずは、丹田に気をこめて」とミズキが言う。シュウはお腹の中に気を集中させる。

「そして、エネルギーを一挙に解放して」シュウは壁に向かって「衝撃波」を放つイメージを頭に描く。


 次の瞬間。耳をつんざく轟音(ごうおん)とともに、壁がこなごなに飛び散る。

「やった、できたぞ」とシュウがうれしそうに言う。


 シュウはユウジをていねいに葬り、一行(いっこう)はまた宿屋に泊まる。


 夜中に、ナホコがむっくりと起き上がる。隣の部屋で眠っていたシュウに襲いかかる。

「どうしたんだ」シュウが叫ぶ。

「誰かに『混乱』の魔法をかけられたみたい」とミズキも起きてきて言う。

 ナホコはシュウへの攻撃をやめない。


「しかたない、急所をはずして『衝撃波』の呪文を使うぞ」とシュウが言い、「衝撃波」の呪文を唱える。ナホコは気絶してしまう。


 ミズキが「魔力感知」で、ナホコに魔法をかけた者を探し出す。

「わかったわ」とミズキが言う。「昨日戦った貴族の一人が、空間転移をたどってきたのよ。ここから五百メートル先にいて、こちらに近づいてくるわ」

 そして貴族の一人が宿をつき止める。


「おまえたちにとどめを刺そうと思ってな」と貴族の一人が言う。

「精神力転移」ミズキがシュウに精神力を転送する。

「よし、集中力がよみがえったぞ。『衝撃波』の呪文を使える」とシュウが言う。

 追ってきた貴族の一人に向かって、「衝撃波』を使う。

「ばかな、こんな強力な魔法が使えるなんて……」貴族の一人は息絶える。


 ミズキが「貴族たちの反乱を収めるには、分散型コンピュータにアクセスして、機能を停止しなければならないわ」と説明する。「私の父はコンピュータセンターの管理人の仕事をしていたの。私の家に行けば端末からアクセスできるわ」


 シュウは「よし、急ごう」と言って、ミズキに空間転移を使ってもらう。ナホコも気がついたので、同行する。

「着いたわよ。ちょうど父は不在なの。シュウ、指輪の魔力を使って、父と同じ顔になって。これが父の写真よ」

「わかった。『変化』」シュウの顔がミズキの父そっくりになる。


「これで画像認証がクリアできるわ」コンピュータが置いてある部屋には、画像認証システムが取り入れられていた。

「認証開始――クリアしました」シュウとミズキは部屋の中に入った。


「これがコンピュータの端末か」

「いま魔法でアクセスコードを取得するから、シュウさん、ここからアクセスしてみて」

「よし、わかった」

「アクセスできるのは十分間よ。その間に機能停止コマンドを打ち込んで」

 シュウはコンピュータ研究会に所属しており、コンピュータの知識が豊富だった。

「さっき戦った貴族の記憶を潜在意識から取り出して、コンピュータの中を検索する――よし、つき止めたぞ。機能停止」

 これで反乱軍を鎮圧できたはず、とシュウが言う。


 ナホコが「ねえ、私たちこの世界に来てからずいぶん日がたったわよね。家で母が心配していないかしら」と言う。

 ミズキは「私が空間転移を使って、最初にシュウに助けられたときに戻してあげるわ」

「それって時間をさかのぼるってこと?」とナホコが尋ねる。

「そうよ。これには強い精神力が必要なの」


 シュウが言う。「ミズキ、ぼくはきみのことが……」

 ミズキが「それ以上言わないで」とさえぎる。「あなたたちにはお世話になったわ。ありがとう」


 そしてシュウとナホコは、記憶を消され、元の世界へと送り返される。

 シュウの心の中に「ミズキ」という名前が浮かんでくる。「ミズキ、ミズキ……どこかで会ったような気がするけど、思いだせない」




 時刻は午前七時。シュウはジョギングから帰ってきた。「今日も暑い一日になりそうだな」と、まぶしい太陽を見上げて言った。



完結編です。ここまでお読みくださり、ありがとうございました。


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