表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

第二章 商人たちの護衛

「それでは同時代の『剣と魔法の世界』へ転送しましょう」とミズキが言う。

「『剣と魔法の世界』なんてほんとにあるの?」とナホコが訊く。

「この世界は地域によって進化に差があり、辺境地区ではいまだに『剣と魔法の世界』と呼ばれるところがあるのです」とミズキが解説する。


「ただし、『剣と魔法の世界』と言いますが、ゲームとは違いますよ。ほんとうに命を落とすこともあるのですから」ミズキはシュウを見つめ、ナホコを見つめて言った。


「ごめん、軽はずみなこと言っちゃって。でも、なぜか心の底から、自分が行かなければならないという気持ちが湧いてくるんだよね」とシュウが応えた。

「その覚悟ができているのなら、お連れしましょう」とミズキは言った。


「私の父がかつてその地域を旅したとき、手に入れたマジック・アイテムがあります。それを付けていきましょう」とミズキが言って、箱からペンダントを二つ取り出す。


「ナホコさんにはなぎなたの技があるから、シュウくんと私が魔力を使えるようにペンダントを付けますね。赤いペンダントは攻撃魔法、白いペンダントは回復魔法が使えるようになります」

 シュウはミズキに赤いペンダントを付けてもらう。ミズキは自分に白いペンダントを付ける。


「それから向こうでの滞在のため、銀貨が必要ですね。これも父の机から拝借しておきましょう」とミズキが言う。


「本当に『剣と魔法の世界』にいけるのかな」とシュウが尋ねる。

ミズキは「あなたには天性の才能があるようです。その能力を使って、空間転移ができると思います」と(こた)える。


「では私と手をつないでください」とミズキは二人に促す。


<空間転移モード発動。D-194地区へ移動>


「どうやら着いたようです」とミズキが言う。

<コンピュータ制御オートスリープ>

「この地区ではコンピュータ制御が一時的に遮断されます。文字通り、『剣と魔法』の力で戦わなくてはならないのです」と説明するミズキ。


「さあて、どこへ行ったらいいかな」とシュウがいう。

「宿屋なんてどう? いろんな地域の人がやってくるから、情報も得られると思うの」ナホコもすっかりこの世界になじんでいる。


 通りがかりの人にシュウが尋ねる。

「すみません、この近くに宿屋はありますか」

「ええ、ありますよ。この道をまっすぐ、1キロメートルくらい行ったところの、左手に

宿屋があります」

「どうもありがとう」


 三人は宿屋に到着した。

 宿屋の掲示板に、「護衛求む」の張り紙がしてある。

 商人たちの一行が、護衛を求めているようだ。


 シュウは商人たちを探し出し、自分たちが護衛になると申し出る。

「ええと、シュウさんとおっしゃったかな。あなた方が私たちの護衛になってくれるのかな。私たちは旅をして商売をしているのだが、このところ同業者が盗賊に襲われたといううわさを聞いて、護衛を探しているのだけれど」


 ナホコが「では腕前を披露します」と言ってなぎなたの演武をおこなう。

「やっ! えいっ!」

「おお、おみごと。そして残りのお二方は、魔法が使えるとみたが。そのペンダントは魔法の力が付与されているのではないかな」

「おっしゃるとおりです。ぼくたちは魔法で戦います」


 商人が言う。「私たちは戦闘用のボディー・スーツも扱っているのだが、それをお礼の品にするというのはどうかな」

 ナホコが応える。「私に試着させてみせてください」

「はい、これだ。宿屋の別室で着替えてくるといい」


 もらったボディー・スーツは、胸元が大きく開いている。胸の谷間が、くっきりと見える。ナホコは赤くなった。


「お兄ちゃん、着てみたらこんなふうになったんだけど」

シュウもちらりと目をやって、やはり赤くなる。


「そのボディー・スーツは特殊繊維でできていて、防御力を高めてあります。他ではなかなか手に入りませんよ」と商人が自慢げに言う。


 シュウが、「まあ、この人たちの言うことを信じよう。ナホコ、そのスーツ似合っているよ」と返す。


「じゃあこのスーツをいただくわ」とナホコは言った。


「そちらのお兄さんには魔法使い用のローブでよろしいですかな」と商人が言う。


「ええ、お願いします」とシュウは応えた。


「では昼食をとったら、さっそく出発としましょうか」と商人が言う。

 一行は宿屋で簡単な昼食を済ませる。


「目的地はどこですか」とシュウが尋ねる。

「ここから西に十キロ離れた別の村です」と商人が応える。「途中、ひと気のない場所を通りますから、用心してください」

「わかりました」


 一行が出発して、一時間ほどたった頃。

峠道の、ひとの気配がしないところを進んでいた。


 すると左右の林から見慣れぬ男たちが現われた。


「荷物をここにおいていけ。さもなくば命をもらうぞ」


「来たわね。覚悟しなさい」ナホコがなぎなたを構える。


 シュウの付けているペンダントが輝き出す。

「攻撃魔法ってどうやるんだろう?」

 ミズキが応える。「心の中で『光りの矢』を強く念じて、そのエネルギーを相手にぶつけるのよ」

「よし、やってみよう。『光りの矢』!」シュウが唱えると、空中から光りの矢が飛び出し、盗賊たちを襲う。


「うわっ!」あわてふためき、クモの子を散らすように逃げだす者たちもいる。


 ナホコが残っている者を相手に、なぎなたをふるう。相手の剣を払い、つづいて相手を突く。


 ナホコの背後から、矢を打ってくる者がいる。「くっ!」ナホコがうずくまる。

 ミズキは以前にも呪文を唱えたことがあるのだろう、回復呪文を唱え、ナホコのけがを治す。みるみるうちに傷口がふさがれていく。


 そしてシュウたちは戦いつづける。

 シュウが三度目の「光りの矢」を放とうと準備していると、

「降参します」と残っていた盗賊たちが両手を上げる。

「これを差し上げますので、どうぞお許しください」

「これはなんだ」とシュウが訊く。

「宝の地図です」と盗賊が応える。

「宝の地図だって?」

「はい、そこに神殿があり、宝が眠っているといううわさ話をきいたことがあります」

「もう二度と悪さをするなよ」

「はい、いたしません」


 残った盗賊たちも逃げて行った。

 商人は「ありがとうございました。おかげで命が助かりました」と礼を言う。


「なあーに、こんなのお茶の子さいさいですよ」とシュウ。

「ちょっと、調子に乗らないでよ」とナホコがシュウの腕をつねる。

「あいたた……ごめん、ごめん」シュウが謝る。


 そしてシュウと商人たちは目的地に到着する。

「お疲れさまでした。どうもありがとうございました」と商人が言う。

「いえ、お力になれて光栄です」とシュウが応える。


「それでは、ぼくたちはこの『宝の地図』をたよりに、神殿に行ってみます」とシュウが言うと、「道中、お気をつけて」と商人が言ってくれる。


 シュウがナホコとミズキに「さあ、神殿に行ってみよう」と促す。


「ここが神殿か……」建物は朽ち果てていたが、建築当時の華麗な雰囲気を残している。


「よし、入るぞ」シュウが神殿の入り口から中に入ると、突然姿を消した。


ナホコが「お兄ちゃん、どこへ行っちゃったの」と言って中に入ると、同じように姿が消えた。


「どうも転送システムが働いているようですね」とミズキはひとりごちて、一緒に神殿から姿を消す。


第三章につづく


お読みくださり、ありがとうございました。

感想などありましたらよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ