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「カイン、もうすぐしたら6歳だろ。母さんが言ってたんだけど、もうすぐしたら儀式があるって。それって、どんなのか知ってるか?」


「魔力が有るか無いかと、属性があるかどうか調べるらしいよ」


「へぇー、そうなんだ」


「カインはハーフエルフだから、魔力持ってる可能性って高いんだよな?」


「そうらしいけど、母さんが言うには2人に1人くらいらしいから、あんまり期待するなって」


「そっかー。でも普人族に比べたら大分マシだよなー」


 やっぱりこの世界でもエルフはチートだよな。

 この世界では狭き門の魔法を、絶対に使えるんだから。


「アルだって可能性あるじゃないか。クラウディアさんだって魔力持ちらしいしベンジャミン様は風の属性持ちらしいし」


 考え込む俺を、落ち込んでると思ったのか、カインは励ましてくる。

 この気の使い方……。

 そのイケメンぶりも合わさって将来が恐ろしいわ。

 やはり、昔の俺は間違ってなかった。

 カインは禿げてるくらいが丁度いい。

 周りの男が不幸になる。

 俺を中心に。


「そうだな。俺はまだまだ先だし、気長に待つよ」


「アルって時々、大人みたいな言い方するよね」


「毎日、本読んでるからな」


「今度また字の書き方教えてよ」


「良いけど特訓してからな」


「分かってるよ」


「騎士になりたいなら、字もしっかり書けるようにならないとな」


「魔力があればだけどね」


 この国の騎士になるには例外が有るが、オースレン王立学院を卒業することとされていて、卒業すると騎士見習いとしての資格を与えられる。

 その後訓練を重ね、試験を通過して初めて騎士となり準貴族として扱われる。

 オースレン王立学院の入学資格は

 1、10歳を超え20歳を超えないもの。

 2、上級貴族の長男もしくは次男。

 3、下級貴族の長男。

 4、貴族、準貴族の子供で魔力を持つもの。

 5、平民以上で属性持ちと判断されたもの。


 例外が認められるのは長男や次男が死んだ時だけだ。

 そのためカインが騎士になろうとすると、魔力を持っているか、戦争なので特別な功績を上げるしかしないのである。

 魔力を持たないものが、戦争で活躍するのは非常に厳しいだろう。

 なのでカインの将来と夢はもうすぐ決まるのだ。


 魔力を持つかどうかは遺伝で決まるとされ、貴族と平民以下の魔力遺伝率は大きく違う。

 貴族は大体10人に1人くらいだと言われているが、平民だと500人に1人もいないだろうと言われている。


 これだけの差が出るのはやはり制度にあるのだと思う。

 魔力のあるものは貴族としてその地位に止まり、魔力のないものは平民へと転がり落ちる。

 魔力のある平民は準貴族として上がってくる。

 上手く血の入れ替えをして魔力持ちの維持を図っている。


 この国の貴族は、魔力持ちの後継者を生むことに躍起になっており、魔力を持たない正妻の長男や次男より、側室や妾の魔力持ちを後継者に選ぶなんてよくある話らしい。


 魔力持ちの10人1人くらいの割合で属性持ちがいるらしい。

 属性持ちというのは、この世界には魔法4大属性、火属性、風属性、土属性、水属性があり、属性持ちはこのいずれかの属性を持って生まれてくるようだ。


 そして魔法はこの属性がないと出来ないらしい。

 属性のないものは魔力を体に張り巡らして、身体能力を上げることしか出来ない。

 俺がいつもやってるやつだ。

 俺だけのチートだと思ってたが、貴族の魔力持ちは殆どの人ができるらしい。

 その話を母から聞いたときはかなりショックで立ち直るのに3日かかった。

 いや嘘だ。

 今でもちょっとだけ引きずっている。


 1/10。

 その数字は、俺が魔法を使うことができる確率だ。

 正確な数字ではないだろうが、話を聞くとこんな感じらしい。

 高いように見えて低い、低すぎるだろと叫びたくなったものだ。

 異世界に来て魔法なしとか……。


 まぁ今は魔法がなくても、家族を守っていける力があればいいと思っている。

 重要なのは手段じゃない。

 結果なんだ。


 魔法の威力がどんなものか分からないが、身体強化を極めれば相当な武器になると思っている。

 今は子供の体に身体強化しても、大人には勝てないだろう。

 でも大人になった時、身体強化を使えば、魔力を持たない相手には危なげなく勝てるだろう。

 魔力を持つものが少なく、さらに属性持ちも少ないとなれば、少なければ少ないだけ相対的に、俺の力が増すということだ。


 今では、全身に魔力を張り巡らしても、40分近く持つのだ。

 着実に記録を伸ばしているので、やり甲斐もある。

 生まれた頃の魔力感知の苦行に比べたら苦労でもなんでもないな。


「カインはもう……。さっきからそわそわし過ぎ。儀式の日はまだ3日先だろ? 今からそんな状態だと当日までに倒れるぞ」


「分かってるんだけど……どうしても、ね」


「そんなに気にするならセリカさんに習って、魔力の使い方教えてもらったら良かったのに」


 チートなセリカがいたら、魔法の修行なんて余裕でしょ。

 俺も教えて欲しいわ。

 手取り足取り……グヘェ。


 カインは俺の顔を見て、渋い顔をする。


「アルは知らないんだろうけど、魔力操作は8歳くらいまでは魔力持ちでも、魔力が少なくて魔力を感じることが出来ないんだって。魔力が多い人は、それくらいの年齢になると、自然と感じることができるんだって、母さんが言ってたよ」


「へー、そうなんだ知らなかった」


「それに、有るか無いか分からない魔力を感じようとするなんて、馬鹿かよっぽどの暇人だけだよ」


 俺は無言でカインの頭を叩いた。


「イテッ。何するんだアル!」


「人には超えちゃならない領域ってもんがあるんだ」


「いや、訳分からないよ」


 俺は馬鹿だったのか……。

 カインに馬鹿呼ばわりされる日が来るなんて……。

 もう駄目だ死のう……。

 いや待てよ、馬鹿じゃなくていう暇人の線が残ってるじゃないか。

 そうだよ、あの時赤ちゃんだったから暇人だったんだよ。


「ゴメン、ゴメン。勘違いだった」


「一体なんの勘違い!?」


「まぁまぁ、カインさん。お茶でも飲んで、落ち着いて」


「落ち着いているよ!」


 カインに馬鹿呼ばわりされた方に気がいっていたが、子供だと魔力が少なすぎて感知出来ないのか……。

 これは、俺の魔力量が産まれた時から多いのか、魔力感知が優れいるのか……多分魔力感知の方だよな。

 4ヶ月近くも頑張ったんだから、魔力感知が上手くなってもおかしくないものな。


「ルナも応援してるってさ。ねぇ〜ルナちゃ〜ん」


「あぃー」


「ルナの声聞いたら元気出てきたよ」


 カインもルナの声聞いたら、元気出るだろ。




 俺は儀式には参加しない為、カインの報告を待って部屋で待機していた。

 3日前のカインみたいにソワソワしてしまう。


 カインには魔力持ちになって夢を叶えて欲しい。

 カインのような優しいやつが騎士になって人々を守る……。

 ーーそうなったらどれだけ素晴らしいことだろう。


 ずっと見てきたから分かるんだ、あいつは俺なんかよりよっぽど凄いって。

 俺の前世はあんなに努力してなかった。


 ヘナヘナしてるように見えるが、いつも他人の心の変化に気付いて気遣ってくれる。

 人に合わせるのも上手いが、大切にしていることは絶対に譲らない。

 優しさの中に強さを持っている。

 そんなカインだからこそ、人の上に立って貰いたいと思う。

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