もはや、人間ではない
以下がライトノベル風の日本語訳です。
ここにある闇は、ただの光の不在ではない。もっと重く、もっと深い何かだ……まるで死装束のように、体に絡みついてくる。
息を吸おうとした。だが、動かす肺などない。
胸の鼓動を感じようとした。だが、聞こえるのは虚無だけだった。
目を覚まして、この絶対的な沈黙に瞼を閉ざしたかった……けれど、そもそも存在しない瞼を、どうやって閉じろというのか。
どれほどここにいたのだろう。
数分か。数年か。それとも、幾世紀か。
時間そのものが、この深い石の場所で、腐り果てて死んでしまったかのようだった。
そして、突然——
コトン。
小さな石が転がる音。
続いて……軽く、慎重な足音が、朽ちた石畳の上をゆっくりと近づいてくる。
疑う余地はなかった。誰かが、まさに私の頭の真上に立っている。
「はぁ? これは何だ?」
まだ幼さの残る若い声。指先が石の埃をこする音が、それに重なる。
そして……その手が、私に触れた。
その瞬間——私の意識が、弾け飛んだ。
脳裏に押し寄せてくる。荒い息の悲鳴、太陽の下での過酷な訓練、凍える夜、内臓を引き裂くような恐怖、そして涙を流す一人の女の顔——男が遠くで叫ぶ前に見た、その顔。最後に、巨大な怪物の影が、街ひとつをまるごと飲み込んでいく光景……!
「ぐああああっ……!」
意識が悲鳴によって砕け散る。だが、声を出す口などない。
痛みのあまり身をよじりたかった。だが、動かす体などない。
——これは誰の記憶だ? 私のものじゃない!
(待て……イリス?)
知識が、許可も得ずに私の中へと流れ込んでくる。
駆け出しの冒険者。貧しさから抜け出す宝を求めて、この忘れられた王国の廃墟へ足を踏み入れた少年。
そして、その宝とは——この私だった。
「古い……仮面か?」
少年は袖の端で私の顔の埃を拭い、落胆したようにつぶやいた。
「まあ、市場で銅貨の何枚かにはなるだろう」
(やめろ……私を置いていけ! 連れて行くな!)
心の中で叫んだ。この突然の恐怖の理由もわからないまま、溺れるような感覚が私を蝕み始めていた。
だが、少年は待たなかった。ためらいもなく——彼は仮面を、自分の顔に着けた。
バチンッ!
イリスの息が、その瞬間止まった。
まるで雷に打たれたかのように体が硬直し、瞳孔が恐怖で開ききる。そしてその決定的な瞬間、冷たく機械的な声が響いた——それは彼の喉からではなく、私という存在の根源から発せられたものだった。
『第一の宿主と接続を確立しました』
(しゅ……宿主だと!? 何を言っている!?)
『固有能力起動:魂の記憶』
『装着者のすべての記憶を閲覧可能になりました』
『使用可能な能力:宿主へのスキル一つの付与』
(スキル? 付与? 待て……私は一体、何になったというんだ!?)
まばたきする間もなく、地面が恐ろしい振動とともに揺れた。
グルルルルルル……!
石の通路の最奥から、鼓膜を引き裂くような咆哮が轟く。
イリスは膝を震わせながら、機械のようにぎこちなく振り返った。その暗い通路の果てには——
血のように赤く、殺意に満ちた二つの目が光っていた。
怪物だ。
よだれを石畳に垂らす、本物の怪物。
その恐怖に満ちた瞬間、私は苦い真実を悟った。
もしこの少年をここで死なせてしまえば——私は再び、この漆黒の闇の下に、永遠に埋もれたままになる。
(嫌だ……もう二度と、あの闇には戻らない!)
一瞬、私の思考が止まった。
(待て……「二度と」? なぜそう思った?)
鋭い頭痛が意識を貫き、洞窟の光景が消え去り、代わりに一瞬の閃光が浮かんだ——
眩しい赤信号……鋭く鳴り響くクラクション……濡れたアスファルトを走る足音……そして、陰鬱な灰色の空。
「危ない、どけ!」
金属が激突する、恐ろしい音!
……
そして、思い出した。
私は、ずっと仮面だったわけではない。
私は——人間だった。
名前があり、体があり、魔法も怪物もいない、ありふれた世界で普通の生活を送っていた。
道路を渡ろうとした瞬間を覚えている。光、そして痛み……そのあとに訪れた、闇。
私は、かつての世界で死んだのだ。
そして、ここに転生した——誰にも決して外すことのできない、呪われた仮面として。




