表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学校自衛隊ー特別武装親衛隊 異世界に行ったり銀河に行ったり別の世界に行ったりする最強の部隊の物語  作者: yunu


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/7

厳しい現実厳しい訓練


解散の号令がかかったはずなのに、生徒たちの足取りは重かった。

校庭から校舎へ戻るその短い距離が、異様に長く感じられる。


yunは、自分の脚がわずかに震えていることに気づいた。

疲労のせいだけではない。

胸の内側に、言葉にできない違和感が溜まっていた。


(……これで終わり、なわけがない)


そんな予感が、離れない。


午後の時間割は「座学」とされた。

だが、その内容は、これまでの授業とは根本的に異なっていた。


教室の黒板には、白いチョークで簡潔な文字が書かれている。


・国家

・秩序

・敵性存在

・正当防衛


教師ではなく、橋田が前に立っていた。

教師は教室の隅に控え、発言することはない。


「いいか。

まず理解してもらう必要があるのは、国家は常に正しいという前提だ」


その言葉に、生徒たちは反応できなかった。

肯定も否定もできない。

ただ、聞くしかない。


「国家が決定した以上、それは“誤りではない”。

誤りだと感じるのは、個人の理解が追いついていないだけだ」


yunは、無意識に視線を落とした。

その理屈が、どこか危険な匂いを帯びていることだけは分かった。


「次に、“敵”について説明する」


黒板に、新たな文字が加えられる。


・反政府組織

・思想的敵対者

・非協力的存在


「敵とは、武器を持っている者だけを指すわけではない。

国家の秩序を乱す存在すべてが該当する」


誰かが、小さく息を呑む音がした。


「諸君らは、将来的にその“敵”を識別する側に立つ。

だからこそ、今のうちから思考を矯正する」


――矯正。


その言葉が、yunの耳に妙に引っかかった。


数時間に及ぶ講義は、淡々と進められた。

専門用語が多く、難解で、どこか現実感がない。


それでも、yunは必死に聞いていた。

理解できているかどうかは別として、

聞き逃してはいけないという直感だけがあった。


(知らないと……まずい)


なぜそう思うのか、自分でも分からない。

だが、知らないことが「危険」になる世界に入ったのだと、本能が告げていた。


再び校庭へ出される。


今度は、姿勢保持訓練だった。


「動くな。

指一本でも動いたら、やり直しだ」


直立不動のまま、時間だけが過ぎていく。

風が吹き、汗が頬を伝っても、拭うことは許されない。


yunの脚は、すぐに悲鳴を上げ始めた。

体力がないことは、自分が一番よく知っている。


(……きつい)


だが、周囲を見ると、もっと苦しそうな生徒もいる。

倒れそうになりながら、必死に耐えている者。

歯を食いしばり、目を閉じている者。


誰も声を上げない。

上げられない。


「――よし、そこまで」


その一言で、全員が一斉に力を抜いた。

何人かは、その場に座り込んだ。


橋田は、それを咎めなかった。

ただ、冷静に記録を取っている。


「今日の訓練で、諸君らの基礎的傾向は把握した」


生徒たちの視線が集まる。


「体力に優れる者、そうでない者。

規律に適応できる者、抵抗を示す者」


yunは、なんとなく分かっていた。

自分は――評価される側ではない。


実際、橋田の視線は、彼の上を素通りしていった。


解散。


その言葉を聞いた瞬間、生徒たちの表情が一斉に緩んだ。

「帰れる」という事実が、何よりの救いだった。


教室に戻り、荷物をまとめる。

いつもと同じはずの行動なのに、妙に現実感がない。


yunは席を立つ前、ふと窓の外を見た。


校庭の隅。

午前中に見かけた、あの厳重に管理されたケースが、まだそこにあった。


誰も触れない。

誰も近づかない。


だが、なぜか――

視線だけは、自然とそこへ向いてしまう。


(……関係ない)


自分に言い聞かせるように、yunは目を逸らした。


今の自分には、体力もない。

評価される理由もない。


なのに。


胸の奥で、小さな違和感が、消えずに残っていた。


校門を出ると、夕方の光が街を照らしていた。

見慣れた風景。

いつもの帰り道。


それでも、世界が一段階ずれてしまったような感覚がある。


(明日も……ある)


そう思った瞬間、

yunは、なぜか「逃げたい」とは思わなかった。


怖い。

苦しい。

理解できない。


それでも――

知りたいという感情だけが、静かに残っていた。


こうして、第一訓練日は終わった。


だがそれは、

身体ではなく、思考と価値観を削り始める工程の、ほんの導入部に過ぎなかった


翌朝、校門の前に立った瞬間、yunははっきりと理解した。

昨日と同じ風景であるはずなのに、感覚がまるで違う。


空気が重い。

視線が多い。

そして、逃げ場がない。


生徒たちは昨日よりも無口だった。

誰もが無意識に、周囲の顔色をうかがっている。

昨日、途中で歩いてしまった者。

姿勢保持で注意を受けた者。

記録が取られていたことを、皆が覚えていた。


yunは校庭の端に並びながら、喉の奥がひどく乾いているのを感じていた。


(今日も……体力か)


その予想は、外れなかった。


「本日は、基礎訓練の継続および個別適性の観測を行う」


橋田の声は淡々としている。

そこに感情はない。

だが、その無機質さこそが、生徒たちを不安にさせた。


「昨日と同じ内容だと思って構わない。

ただし、評価基準は引き上げる」


その一言で、数人の顔色が変わった。


最初は、反復動作訓練だった。


屈伸、腕立て、短距離移動。

一つ一つは単純だが、休憩はほとんど与えられない。


yunは、開始から早い段階で限界を感じていた。

腕が言うことを聞かない。

呼吸が浅くなり、頭がぼんやりする。


(……まずい)


倒れるわけにはいかない。

そう思えば思うほど、身体は逆らう。


周囲では、すでに動きが乱れ始めている生徒もいた。

教官が近づき、静かに声をかける。


「無理だと思ったら、申告しろ」


だが、それは救済ではない。

申告=脱落であることを、誰もが理解していた。


yunは、歯を食いしばった。

視界の端が白くなる。


「……っ」


ついに膝が地面についた。


一瞬、校庭が静まり返る。


教官が近づき、体調を確認する。

声は低く、事務的だった。


「一時離脱。記録、体力項目・低評価」


その言葉は、yunの胸に重く落ちた。


(やっぱり……)


自分は、ここでは価値がない。

少なくとも、今求められているものには応えられない。


木陰に座らされ、他の生徒たちを見つめる。

皆、必死だ。

そして、必死であること自体が、すでに選別の対象になっている。


次に行われたのは、状況理解訓練だった。


教室に戻され、簡易的な資料が配られる。

地図、記号、抽象化された概念図。


「これは、判断力を見るための訓練だ」


橋田が言う。


「体力がなくとも、別の適性がある可能性はある。

国家は、無駄な資源を嫌うが、使える資源は逃さない」


その言葉に、yunの心がわずかに反応した。


資料を見た瞬間、頭の中で何かが噛み合う感覚があった。

距離。

配置。

視線の通り道。


yunは、鉛筆を動かしながら、自分でも驚くほど冷静だった。


(……こうすれば、見える)


問題は難解だった。

だが、考えること自体は苦ではない。


時間終了。


回収された用紙を見た橋田の手が、一瞬だけ止まる。


ほんの一瞬。

だが、それを見逃した者はいなかった。


yunは、その視線が自分の番号に向けられたことに気づき、心臓が跳ねた。


(……何か、間違えたか?)


だが、橋田は何も言わなかった。

ただ、無言で次の指示を出す。


訓練終了後。


生徒たちは、昨日よりも疲弊していた。

中には、明らかに泣いた跡のある者もいる。


yunは、校門へ向かいながら考えていた。


体力はない。

評価も低い。


それでも――

教室での感覚が、頭から離れなかった。


(……あれは、何だったんだ)


走ることはできない。

耐えることも苦手だ。


だが、見える瞬間がある。


それが何を意味するのか、まだ分からない。

ただ一つ確かなのは、


この訓練は、

単に兵士を作るためのものではない、ということだった。


そして、選別はすでに始まっている。


静かに。

確実に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ