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カイ・ゴカン ~貧乳勝利派向け~

作者: 栗野庫舞

彼女「えっ、好きなパンツを知りたい? ええっと……どんなのかな……。あえて好きって言うなら、かわいい感じで、履き心地で安心出来るものかな。……今、はいているのは、白の普通のだけど……。見たいの? じゃあ、見せてあげるね……っ」

 彼女が所属するチアリーディング部の競技が終わった後、男子のあなたは彼女へと会いに行った。


 今日の彼女は、長めの黒髪を青いゴムで左右に縛っている。黒い長袖の上に青いワンピースを重ねたようなチア衣装を着ており、青のスカート部分の丈は短い。


 彼女の横には、同じ顔の女子がいた。


 あなたは目を疑った。


「この子、私の双子の妹なの」


 彼女に紹介される。あなたはまだつき合い始めたばかりで、妹がいるのも知らなかった。


「こんにちは。お姉ちゃんがお世話になっているそうですね」


 黒髪ポニーテール白リボン姿の妹は、確かに双子だけあって、本当にすごく似ていた。


 ただし、彼女とは圧倒的に異なる部分に気づかされる。


 同じ衣装の胸部が、比較にならないぐらい――めちゃくちゃ大きかったのだ。


 対する姉の彼女は、全て妹に持っていかれたんじゃないかってぐらいに、貧相であった。


 あり得ない。あなたにはこの感想しか思い浮かばない。


「……やっぱり、あなたも思うよね。言わなくても分かるよ。妹のほうが、……すっごく大きいもん」


 あなたの彼女は理解していた。今までもずっと、比較され続けて来たのだろう。


 失礼ながらも、あなたはどうしても二人を見比べてしまう。


 大きい。しかも揺れた。


 ……小さい。


 背丈は同じで、髪型以外ほとんど変わらない。けれども胸部には、絶対に超えられない差がある。


 非常に困った。


 あなたは彼氏として、彼女の味方をしなければならない。……大小は関係なく、自分は君が好きだというようなことを、強がって伝えた。


「……ありがとう」


 彼女は(ひか)え目にお礼を言ってくれた。


 あなたは妹に対しては、これだけかわいくてすごいなら、つき合えている人は幸せ者なんだろうなと、感想を述べた。


「私、お姉ちゃんと違って、彼氏いませんよ?」


 あまりにも意外で、えっ? と、声を出してしまった。


 あなたは、彼女の容姿には満足している。それに加えて、胸部が揺れるほど大きいという長所もある妹に彼氏がいないなんて、あなたには到底信じられなかった。


「お胸だけで告白してくる男子は、いつもお断りしてるんです。お兄さんは違いますよねぇ?」


 妹にあなたは手を取られ、――いきなり胸部に押しつけられた。


 不覚にも極上の感触を得てしまい、妹の胸部のことしか考えられなくなってしまう。


「お兄さん? いつまでやりますかぁ?」


 はっとしたあなたは慌てて自分の手を引いて、焦りながら自身の保身のことを考える。


 大きさには差があるけれど、すっごく小さいわけじゃない、と、あなたは彼女の擁護を口にした。


 ささやかな大きさでも構わない。あなたはそう納得するしかなかった。


 だが、現実は厳しい。


「……ごめんなさい。私のお胸……、パッドでごまかしているの」


 困り顔の彼女に言われ、あなたはさらなる追い打ちをかけられた。


 とうとう、あなたは残酷なことを考えてしまう。彼女は、いわゆる『下位互換』なんじゃないかと。


 胸部という、女性の大きな魅力の一つが無いのは、あまりにも致命的だ……。


「ちょっと来てっ」


 あなたは彼女に手を繋がれて、ひと気のない別の場所へと移動した。


 ここで彼女は、スカート部分を両手で一気にたくし上げる。


 演技中にスカート部分が舞い上がって、少し見えていた黒いブルマ。それが、あなたの前で大胆に見せつけられている。


 丸見えのブルマは、黒一色でタグもラインもない。下半身の部分を広く覆う、大きめのものだった。にもかかわらず、右足のほうでは少しだけ、白い下着がはみ出てしまっていた。


 さらに彼女は、スカート部分から放した右手で場所を示す。


「この辺まで手を伸ばしてほしいの」


 彼女にあなたが応じた直後、手が彼女の太ももで挟まれた。グイグイってぐらいに圧力を掛けられ、あなたは極度に興奮した。


 しかし、彼女の横に妹がいるのが見えた。


 妹もスカート部分のたくし上げをおこなった。黒ブルマからハミパンしている点も同じだった。


 違うのは胸部の巨大さ。


 巨乳がたくし上げをしているすごい姿に見とれ、太もも挟みをしてくれる彼女の存在を忘れてしまう。


「もうっ、ついて来ないでよっ!」


 彼女は妹に声を上げ、再びあなたの手を引っ張って移動する。


 あなたは更衣室の近くで待たされた。彼女は更衣室から、何かを持って来たようだ。


「これは奥の手なんだから……」


 つぶやいた彼女は、二枚の白いホタテ貝を胸部の前に運ぶ。


「『貝・互換』……ね、私……」


 彼女は、手で持った貝を左右の貧乳にかぶせるという、実に阿保(あほ)っぽいことをやった。


 こんなことをする子じゃなかった。


 彼女を下位互換と感じていたことが、気づかれていたのだろうか。


 ここまでさせてしまうほど彼女を追いこんでしまった自分自身を、あなたは悔やんだ。


 ただ、意外性のある行動に感情が高ぶった。


 それに彼女のいたいけな表情を見て、彼女への恋心をあなたは取り戻す。


 この子は、クラスの中では(ひか)え目な存在だった。けれども、かわいいな、とは思った。たまたま話す機会が何回かあって、人柄の良さを感じた。


 決め手は、どうしてチア部に入っているのかを聞いた時だ。


「私でも、誰かを応援出来たら、喜んでもらえるのかなって思って……」


 純情的に語る彼女に、あなたは惹かれた。


 自分が、応援してもらいたかった。


 だから、あなたは告白の決意をした。


 その告白の際、彼女はこう言っていた。


「……私を好きだと言ってくれて、ありがとうございます。でも、私を恋人にしたら、後で後悔するかもしれませんよ?」


 それでもあなたは、わがままを通して、彼女になってもらった。


 今なら分かる。


 彼女は、双子の妹と比較されたら、妹になびいてしまうことを心配していたのだろう。


 その妹は、またもついて来たらしく、視界に揺れる物体が映った。


 妹の大きさには、(あらが)えない。姉よりもすごいと思う気持ちは、絶対に否定は出来ない。


 例えそうだとしても――。


 あなたは妹に対し、いつも胸部だけを考えてしまう。


 逆に彼女については、胸部目当てで恋人にしたいと決意したわけでは、全くなかった。


 以前、あなたは彼女に、メイド喫茶っぽいことを言ってと頼んだら、


「……お帰りなさいませ、ご主人様。……こんな感じでいい?」


 あなたの期待するような動作もつけて、言ってくれた。


 恥ずかしい質問にも答えてくれるし、あなたのことを信頼してくれる。


 胸部が小さくても、自分を理解してくれる“彼女”を愛せばいい。こんなこと、最初から分かっていた。


 あなたは彼女に、愛してると言って、キスをした。


「私も愛してるよ。これからも、よろしくね」


 彼女は頬を染めながらも、かわいい笑顔で応じてくれた。


 姉の隣にいた妹は、満足そうだった。


「よく私の誘惑に耐えきりました。お兄さんなら、お姉ちゃんを任せられそうです」


 この妹がホタテ貝を胸部にのせたら、姉よりも魅力的に映るかもしれない。だが決して、下位互換にはなり得ない。


 浮気はしないようにしなければと、あなたは姉妹に話した。


「うちの妹が浮気相手になりそうなら、その時は私が守ってあげる」


 両手にポンポンではなく貝殻を持った彼女は、頼もしい。


 あなたは興味があったので、どうやって守るのかを聞いた。


 彼女は考え込んだ末に、その場でしゃがんだ。


「あなたもしゃがんでほしいの」


 彼女の言う通りにしたら、


「これを重ねて、大切に持っていて」


 今度は彼女から二枚のホタテ貝を渡された。


 何をされるのかと思ってしゃがんでいたら、彼女は中腰になり、スカート部分をたくし上げた。


 黒いブルマが見えると思っていたら、あっという間にスカート部分があなたの頭上にかぶせられ、あなたは黒いブルマと密着させられた。


 柔らかくはないが、押しつけられているという事実に幸福を(いだ)く。


 あなたは、彼女だけに夢中という感情で守られた。


                    (終わり)

双子で胸部に違いがあったら……というのを書いてみたかったのでした。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。


貝が主題の作品は、他に『かい・しぇるふぃっしゅ!』があります。

『スケルトリアル!』、『伯爵令嬢の使い魔べとべとさん!』でも、貝が出ます。

あと、作者の双子の作品は他にも3つあります。

良かったら、それらもお楽しみ下さい。

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