奴隷傭兵、因縁の戦い3
ブノワールの時ほどじゃないが、こういうクズを見てると狂戦士の本能が俺を解放しろと語り掛けてくる。気が付くと全身から蒸気が噴き出していた。
「貴様・・・・・・一体なんなんだ!?」
キールの問いには答えない。俺は意識を半分、狂戦士の本能に身を委ねた。握った黒い大剣の柄に力が入る。と、同時に前へと飛んだ。キールは盾で身構えたが、大剣の速度が余りに速く咄嗟に盾を斜めにする。嘘だろ!?こんなバカでかい剣をこの速度で・・・・・・。バーンの大剣がキールの盾と接触すると火花を散らしながら盾の上を滑った。
よ、よし!凌いだ!あんな速度で振った大剣なら止まらないはず。キールは盾を下げて剣を振り上げた。刹那、後ろへ飛んだ。なぜ、後ろへ飛んだ?自分でもわからない。
後ろへ飛んだ瞬間に、バーンの体勢が視界に入る。あれほどの速度で振り切った大剣はピタッと止まっていた。いや、それどころかすでに構えに入っていたのだ。キールの視界のなかの敵はそのまま前方に恐るべき跳躍力で跳び込んで来た。大剣は袈裟斬りに振り下ろされる。
剣で——ダメだ、まともに受けたら。盾で受け流—?一瞬の間の思考をする暇すら与えられず、キールの身体は盾ごと真っ二つに圧し斬られた。レオはその光景に思わず息を飲んだ。返り血を浴びて真っ赤になっているバーンが、笑って・・・・・・る?これが、狂戦士・・・・・・なのか。そのままバーンは躊躇なくキールの首を飛ばした。
「レオ、後ろから敵が来て囲まれる前にとっとと片づけちまうぞ!」
「え、ええ。助かりました」
先程の狂戦士の雰囲気がもう和らいでいる。キングオークの時も感じたが、改めて恐ろしい適正だとレオは再認識せざるを得なかった。
キールが倒れてからは、辛うじて重装騎士のニールが戦線を支えていたが、ジェネラルオークにあっさりと討ち取られると、それまで保っていた陣形を維持出来なくなりあっという間に壊滅した。
『高潔の薔薇』の団長ミレーヌが到着するころには、ちょうど潰走が始まっていたところだった。
「後ろから敵が迫ってます!後方部隊は反転して衝突に備えてください」
「私に任せて!」
アリシアはそう言うと、護衛として温存していた強化ハイオークの部隊を初めて戦線に投入した。強化されたハイオークの部隊は百程度であったが、突撃してきたミレーヌの部隊を蹴散らすには十分だった。
アリシアのスキルで強化されたハイオーク部隊は一匹一匹が超精鋭クラスの身体能力にまで向上している。一方的な虐殺状態になってしまい、一般の兵士では全く歯が立たない状態だった。
「ミレーヌさま!あそこの妖魔兵部隊だけ、デタラメな強さです」
「うるっさい!見ればわかるわ!」
なんなんだ?風魔法といい、キングオークといい、この部隊はいったいどうなってんだ!?キールの奴はいったい何してんだ!?こういうのはあいつが止めるはずだろうが!
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