薔薇の花とのバトル4
だが、少しイラっと来た。最近ちっと覚えたんだが『引』のスキルを少し緩めると、その分だけ狂戦士の力がより引き出される。もちろん、やり過ぎると意識が飛んでただの殺戮の化け物に成り下がっちまう。
ところが何度も『引』のスキルを使う内に、このスキルが以前より強化されていることに気付いた。この際、ちっとやってみるか。俺は意識を集中しながら少し本能を解放する。
「ドクン・・・・・・」血の流れが早くなる。汗による蒸気が身体中から噴き出す。頭の先から指の先、足の先まで血が巡っていくのがわかる。筋肉の繊維の一本一本がキリキリと音を立てる。感覚がさっきよりクリアになった感じがした。気づいたら咆哮してた。
レオがビクッとする。その瞬間、空気を切り裂いて飛んで来る矢の音が聞こえるのと同時に俺の身体は勝手に動いていた。振り向きざまに矢を掴んで、シャミルに笑いかける。
確か人は狙わないんじゃなかったか・・・・・・?奴は明らかに怯えている表情だったが、俺がシャミルの方を向いている隙にレオが飛び込んでいた。この時も身体が勝手に反応する。
楽しい、たのしい、タノシイ・・・・・・。そのまま矢をレオに投げると同時に地面に突き立てた大剣を片手で引き抜きざまに振り抜いた。大剣が軽い。レオは盾と剣で咄嗟にクロスガードをするも、粉砕された。気づいたらレオの身体は遥か遠くに後方にいる妖魔兵を巻き込みながら吹き飛んでいる。そのまま動かない。ヤバイ・・・・・・。殺しちまったか・・・・・・?
狂戦士の恍惚感から冷静に戻った俺は、そう思って心配していたが杞憂だったようだ。なんとか立ち上がってくれた。盾も剣も折れちまってるから勝負はあっただろう。橋頭保として機能していたレオが潰されると、戦場の流れは一気に変わっていった。ジェネラルオーク、ワーウルフの二カ所を拠点にして、俺が全面攻勢に出る。
これで形成は逆転しあっという間に決着となった。もう少し詳しく言えば、向こうから白旗を上げたってのが事実だ。
「やぁやぁ、参った!降参だよ、完全にこちらの負けだわー」
シャミルは白旗を上げて開口一番、開始前と同じような緊張感に欠ける言い方で両手を挙げながら話しかけてきた。
「それではこちらの条件を飲んでもらえますね?」
エルがすかさず確認を取る。
「こちらから仕掛けておいて断ることは出来ないからね。私たちは傘下に入るよ、それでいいよね?」
シャミルの問いにアリシアとレオも頷く。
「その前に俺に一言なんかねぇのか?」
「うっ、あー、そのー。ごめんなさいっ!最初は人間だと思ってなくてつい・・・・・・」
謝りながら失礼なことを言う奴だな。
「最初は?二射目もきっちり来たけどな?」
「あー、あれはー、そのー。いや、本当に申し訳ない。あまりに恐ろしくて射てしまったんだよ。本当にごめんなさい」
恐ろしいって部分はたぶん本当だろう。あの表情見てればわかった。
「あの、あなた何者なの?私から見ても、とてもじゃないけどあれは人の動きには見えなかったわ」
アリシアも俺に対して多少の恐怖心を持ってるようだ。
「バーンは狂戦士の適正を持ってるんです。戦場の死神、悪魔、災厄と呼ばれる類のものです。恐怖を持つのは当然だと思います」
「狂戦士だって!?」
シャミルが素っ頓狂な声を上げると同時に、他のふたりも心底驚いていた。
「だってあれは存在し得ないはずなんじゃ!?」
その疑問にエルは簡単に説明をした。
俺の『引』のスキルについての説明をすると彼らは一様に口をポカンを開けて聞いていた。それぐらいインパクトのある話だったらしい。
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