薔薇の花とのバトル1
アリシアとレオがそれぞれ挨拶をすると俺たちもそれぞれ適当に返した。
「アリシア、どうすんの?相手の妖魔兵めっちゃいるじゃん」
「大丈夫よ、以前この傭兵団が『紅蓮の狼』と戦った時のことをちゃんと調べたんだから」
アリシアは自信満々に言ってるけど、例の作戦だよねー。
「それって、あれのことー?」
「そうよ。もちろん、そのまま丸パクリしないけど敵ながら良い作戦だと思うの」
「でも、相手も対策練ってるんじゃないのー?」
シャミルがジト目でアリシアを見てもアリシアはどこ吹く風である。
「この地形を利用しながらやるんだから、絶対大丈夫よ!たぶん」
「なんだか頼りになるんだかならないんだかよくわからないなー」
アリシアの作戦はこうだ。林を背に両側を大きな岩で囲まれた隘路に歩兵を配置、さらに両側の岩の上に弓兵を配置。それを見ていたエルは「なるほどね」と言って少し笑った。
「え?あれって、エルがこの前使った陣形じゃないの?」
アニーが見ていて思わず声を上げる。アニーに言われて、俺も気付いた。言われてみれば、この前エルが築いた陣形に似てる気がする。かなり簡易版という感じもするが。
「そうです。ですけど、如何にも見よう見まねで作った陣という感じですね」
「おまえが言うには確か最強の陣形なんだろ?大丈夫なのか?」
俺にそう言われてエルは少しだけ得意気に説明する。
「はい、でも弱点もあります。あれは防御にしか使えません」
「かといって、攻めずにボケっと待つのも性に合わねぇぞ」
「なんとかしましょう」
エルはそう言うと、近くの岩場に弓兵を登らせた。まさかこっちも同じ陣形敷くのかと思ってたが、そういうわけでもなかった。さらに別の岩場にも弓兵を登らせて待機させる。
ここまで見ててエルのやりたいことがわかった。通常なら矢は届かないが、アニーの強風を吹かせる魔法に矢を乗せれば届く。案の定、配置後に強風が吹くとこっちの矢は届くがあっちの矢は向かい風になるため届かないという一方的な展開となった。『薔薇の花』の妖魔兵は、二地点から集中的に放たれた矢によりゴリゴリと数を減らしていく。これで業を煮やしたのがシャミルだった。
「アリシアちゃん、これ向こうに魔法使われてるよ!これなら力づくでやったろうよー」
「そ、そうね。ごめん、私の作戦失敗しちゃった」
「いいよ、想定外だもん。レオ!出番だよー」
「わかりました。それなら妖魔兵の装備を変えますね」
レオの指示で弓兵から近接装備に切り替えた妖魔兵たちは、岩場から降りてレオを先頭に集まった。集まり終わると、レオの突撃の合図で一気に全軍で突っ込んで来る。
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