奴隷傭兵、薔薇の花と出会う2
「大アリよ。考えてみて。私も調教師だけどせいぜい使役出来るのは三百が限度。だから私たち傭兵団単体での依頼がほとんどないのよ。その子と合わせたらきっと人数は揃えられるし、ランクアップも夢じゃないわ」
なるほど、アリシアの考えてることがわかってシャミルもレオもようやく落ち着いてきた。
「なるほど、相手の適正はどうあれ。それならアリシアのスキルも活かせるというもの」
レオが言った瞬間、シャミルとアリシアからシーーーーーーーッと口に指を当てて黙るように言われてしまった。
「ごめん、ついうっかり・・・・・・」
アリシアのスキルについては口外禁止という事実を思い出し、慌ててレオは口を塞いだ。幸いなことに周りはそれぞれの雑談に集中していて気にするような者はいなさそうだ。ホッとしたアリシアは話を続ける。
「問題はどうやってその『ブラックシープ』にいる調教師の子を攫っ——、引き抜くかだけど」
「アリシア、完全に人攫いする気満々になってませんか?」
レオが真っ当な質問をするとちょっと顔を伏せて返す。
「ちょ、ちょっとした言い間違いよ。ほら、お店で品物を買うか盗むかーってくらいの」
「いやいやいや!それ言い間違いってレベルじゃないから!お母さん泣くぞー?」
レオが呆れた顔でふたりのやり取りを聞いてると、アリシアが何か思いついたようにポンっと手を叩いた。
「そうよ!そういうときのデュエルよ!」
「デュエルって・・・・・・それって昔の話でしょー?最近そんなことやってる傭兵団なんて聞いたことないし」
アリシアは人差し指を口の前に出してチッチッと言いながら横に振る。
「法というより慣習だけれど、確かにデュエルは有効なの。いざこざがあった時はデュエルをして負けた傭兵団は傘下に降るのよ」
「あのー、アリシアちゃん?相手の傭兵団といざこざなんかないし、そもそも面識すらないからねー。あと、すっごいこっちが悪者みたいなんだけど」
「そんな細かいこと言ってたらこのチャンスを逃しちゃうじゃない!それで、受付さん。その『ブラックシープ』はどこに行ったら会えるの?」
アリシアから突然話を振られた受付嬢の目が泳いでいたが、突然焦点が合う。
「あ、えーと、います、ちょうど後ろに」
「え?」
アリシア含め全員が受付嬢の指差す方を見ると、バカでかい大剣を背負った男と一緒に小さな女の子がふたり仲良く立っている。その脇にはもうひとり男の子?もいる。
俺たちがギルドにやって来たのは、前回の件でようやく俺たちの処遇が決まったという報せを受けたからだった。入り口からいつもの受付嬢のところに行こうとしたら何やらギャーギャー騒いでいる連中が一斉に俺たちの方を見ている。
ああいう変な手合いには関わりたくない。だいたいロクな目に遭ったことが無いからだ。と、思っていたらなんと向こうから近づいて来た。
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