奴隷傭兵、将を捕らえる
・・・・・・人、かコイツは?とても人が発するような威圧感ではない。
「お逃げください!ローグレーさま」
「へっ、どうやら当たりのようだな」
ローグレーはそのまま馬で逃げようとするも、バーンに道を塞がれる。コイツ、なんて身体能力だ。
ドンッ!!!
その時、防御陣が吹き飛ばされるとさらにもう一匹が現れた。今度は・・・・・・ワーウルフだと!?
「ちょうどいいタイミングで来たな!ワン公、おまえは敵将の周りを叩け!」
ワーウルフは咆哮すると、ローグレーの周りを護衛していた兵士たちを次々と爪で切り裂き食いちぎっていく。
「おまえの相手は俺だ」
「抜かせっ小僧が!」
ローグレーが馬上から突き出した槍はバーンの大剣で軽く払われた刹那、斜め横から薙いだ一撃を防ぎきれずにローグレーは落馬した。衝撃でひしゃげた槍を捨て剣を抜いて構える。
デカい・・・・・・。デカく感じる。この男、対峙して改めて感じるが、とても人が発して良い気配じゃない。目の前の男は上段に剣を構え咆哮をすると、ビリビリと空気が揺れた。来るっ!袈裟斬りに振り下ろされた大剣に合わすように、全力でローグレーは剣を打ち上げる。
ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!
ビリビリと衝撃が伝わったかと思った瞬間にはローグレーの剣は弾き飛ばされ、地面に刺さる。気付いた時には顔面を殴られ、ローグレーは気を失っていた。
「勝負はついた!勝ちどきを上げろ!てめぇらの将は俺の手に落ちた、コイツの命が惜しけりゃ退けっ!」
エルに言われてなけりゃ首を刎ねて終わりだったが。最悪偽首を他の傭兵団に出される恐れもあると聞いちゃあ仕方ねぇな。バーンの掛け声に気付いた味方は勝ちどきを上げる。
その大歓声でローグレー軍は将を失ったことを悟り、考える暇を与えず敗走の流れを作った。これで中央軍や右翼は追撃態勢に入る。そんななかバーンの元に来たエルは別のことを提案した。
「バーン、急いで周りに戦場に落ちてる使える弓を集めさせてください。矢も忘れずにお願いします」
「おう、わかった。追撃はいいんだな?」
「追撃してもローグレー以上の戦果は望めません。それよりすぐに戦闘になるので、今から準備をします」
すぐに戦闘か・・・・・・。エルには何か俺たちには見えない展開が見えてるようだな。俺は頷くと、すぐに『田園の騎士』のロランとリアに指示を出した。それから連中が追撃している間、せっせと弓矢を拾う。
折れてる物や弦が切れてるものを除いてもざっと三百ほどの弓矢一式を手に入れることが出来た。さらに、折れた槍やら剣やらをごっそり拾い集める。それをエルに伝え、追撃した連中が戻って来る前に州都に向かって退却を始めた。
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