奴隷傭兵、風魔法を体感する
「アニー、もう使えるのか?」
俺の問いにアニーはいきなり詠唱を始める。俺にはアニーが何を言ってるのかさっぱり理解出来なかった。隣にいたエルは俺の疑問を察して答える。
「風よ風よ、疾風の風よ。大地と海を渡り嵐を起こす大いなる風よ。我が声、我が意に集いて舞い踊れ。こんなようなことを古代の言葉で言ってた気がします」
「そうなのか。魔術書読んだだけでいきなりそんなの喋れるのかよ!?なんかすげぇな、魔法って」
俺が言ってる間にもアニーの広げた掌の上に光が灯ると風の渦のようなものが集まり始めた。掌の上で渦を巻いている風をアニーは俺に向けて放つ。
「おいっ!?」
俺は思わず両腕で身構えたが、アニーから放たれた風はそよそよと心地よく吹く春の風のようだった。
「なっ!?」
俺の反応を見てエルとアニーとリアが笑ってやがる。チクショウ、なんか身構えた俺のほうが恥ずかしいわっ!
「バーンは怖がりだね!」
「バーンは怖がりなのー」
ほぼふたり同時に双子から突っ込んでくるので、俺は気色ばんで反論した。なんでショボい魔法に身構えた俺のほうが恥ずかしい感じになってんだよ!
「違うわっ!いきなり攻撃魔法向けられたら誰でも身構えるわっ!」
俺の話を聞いてんだか聞いてねぇんだか知らねぇが、ふたりで笑い転げやがって。
「いくら適性があっても、最初は誰でもこんなもんです。もっと練習を積んでいけば、そのうちバーンも吹き飛ばせますよ」
「いずれバーンを吹き飛ばすからね♪」
「俺を攻撃対象にすんなっての!だいたいよ、魔法ってのは練習するだけで強くなるもんなのか?上級の魔術書とかはいらねぇのかよ?」
エルは頷くと、俺にわかりやすいように絵を描きながら説明した。エルによれば風に関する魔術書ってのは基本が書かれた一冊しかないらしい。初級、中級、上級みたいな魔術書をまた買わないといけないのかとウンザリしていたが、適正と練習次第では上級クラスの風魔法も扱えるとのことだ。
それでも、本来なら魔術が扱える師匠が弟子に教えるのがやはり近道らしい。アニーの場合は師匠がいないから、魔法のイメージを具体的事象として構築するには少し時間がかかるんだそうだ。
「アニー、これから僕たちは留守がちになるけど、しっかり魔法の練習をするんだよ?練習の仕方はメニューにまとめておいたから」
「うん、わかった!リアも頑張るんだよ!」
俺がぼーっと考えてる間に、三人の間で勝手に話が進んでいる。
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